第9話
探した。
オレではなく人間の家族たちが。
最初にさきにいなくなっしろいぽやぽやを。
そして楓を。
でもそこまでだった。
のちに探し方を、後悔する。
危ない娘がスマホを使いこなし始めた時。
この家の人間は、どこまで引っ越しても田舎者で、動くべき時に動かない。他のことは、ちゃんとしてきたのに。曲がりなりにも、がつくが。
2015年。人間の赤子が来た。いい子だった。
オレの鍵尻尾はおもちゃとは思ってもらえなかった。掴まれても困るが。
膀胱炎になってどこでもおしっこをするようなったやんちゃニのキジトラは自ら家を旅立った。最初は二、三日。そして本格的に一ヶ月。ずんぐりむっくりの逞しいオスとなって。もうこの子は大丈夫だろう。やんちゃキジトラは放任された。
美しいばあさん猫は老衰で十四歳でこの世を去った。なんと隣の家を臨終場所に選んで。散歩気分だったのかもしれない。ひどく痩せていたが食欲はあったらしい。
ムスメにあたるキジトラは胆嚢から伸びる管の胆管炎になって病気で死んだ。歩きながらやはりじょー、とおしっこを漏らしてしまう。奇しくもそこはティッシュボックスの上で掃除の手間が省けた。獣医からもらったどろどろ缶詰ご飯を注射器で口元が汚れるまで差し込まらていた。点滴もしていたが、どろどろも必要らしかった。とある夏、硬くなった。
珍しい灰色にてっぺん茶色の娘も、老衰で逝ってしまった。最期は母の元で、おしっこをもらしながら、
ひゅう、と。
息を吐いて止まる。
楓は、あの日。
人間のオスに捕まりかけた。
人懐っこいわりにはたまにしかじぶんから擦りつかない、それがとんでもなく愛おしい。
楓。楓。
もうこの家にはナオトインティライミも他所に行って。
オレと、やんちゃサバトラの
ふたりだけの猫のいえに、なったよ。
僕は、気遣ってくれる年下のそいつの頭を、
もう舐めちゃダメなんだって。
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