第8話

侵入者は腹の模様から危ない娘にスケルトンと呼ばれていたが、これまた白い毛色の中にはよくあることなのか薄色の青い目だった。スケルトンじゃ可哀想!

と。

スケルトンはナオトインティライミになった。話が長いだろう。ナオトインティライミじゃなくてもツケマツケルとかでも良かったのかもしれない。にんじゃりばんばんとか。

うちの猫の名前はあみだくじや停まっている車や行事の名前、ニュースで騒がれた事柄から名付けられたりする。

ナオトインティライミは身重だった。

母はばあさん猫のころから、猫の出産を自分の娘たちに見せてやりたかったのだ。さらに応えるように、ナオトインティライミは我が家に居ついて出産したが、やはりタイミングとは合わないもの。ナオトインティライミは、なんと一気に六匹も産んだ。白い長毛がいち。短い白がいち。肌色の長毛がいち。肌色の短毛がいち。長いのと短いのと白いのと肌色のが合わさった、なんということだろう、オレのひよこのころの毛並みとそっくりだったのだ。


危ない方の娘が言う。楓とオレ、両方一気にしゅじゅつしたのでそれは無い、と。


ただでさえ猫とやらは複数のオスの子供を産めるらしい。似ているのもあればそうじゃない、尻尾だけ黒いミッキーマウスみたいなやつもいた。


だが母と素直な娘が言うのだ。

楓が妊娠したら困るから楓ちゃんだけ先に手術して、去勢は後でしたじゃない。


と。盛りがついてケージに齧り付き腰を上げる方もいればあげる方もいるああおーんああおーんの姿に耐えられず、オスのオレだけ外に出された気もする。あれはしんじつだったのか。自分は子孫を残したのか。


ナオトインティライミはこの家のどの猫にも反応せず、静かに子育てをした。


やんちゃや楓ともくっついて昼寝までしていた。その頃には生まれた六匹中、なんと五匹の貰い手が見つかり、全員いなくなるのは可哀想だと、要するに変わった眉毛のある奴、あの尻尾ミッキーマウスが残った。


その尻尾ミッキーマウスも盛りが来る前に早いものに跳ねられた。きれいな死に顔だった。若い奴ほど突っ走っていくものなんだ。


やんちゃ一は道路を渡らないから生きている。

やんちゃニは一度痛い目見て腰が動かなくなってから、回復後、道を横切らなくなった。


右見て左見てゆっくり歩道を渡るのはオレだけだ。オレは左足が生まれつき骨格がうまく作られなくて早く走れないのだから。喧嘩の時は左だけ短い足で難儀した。


楓がはならずにいてくれたこと。他の猫とくっついて寝るようになったことをなんとも思わなかったが、特別は特別だ。あの初めて会った日、匂いを嗅いで、メスかも知れないと茫然と感じた時以来。

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