第7話

いっぴきめ、白くてこれまた昔は美人だがしかめ面の淡い青い目のばあさん猫。

にひきめ。ばあさん猫の子。大きなキジトラ。メス。手術で太った。

さんひきめ。ばあさん猫の子。灰色に頭のてっぺんが茶色の珍しい父の嫌われ者。かわいそうな嫉妬深さ。

よんひきめ。やんちゃなサバトラ。たまに楓に喧嘩やちょっかいをかけるこども。おれが威嚇する。

ごひきめ。やんちゃ二番手。ちいさいほうのキジトラだが手が大きく成長の見込みあり。

ろつぴきめ。体がはげちゃびんだったが今はばあさん猫にそっくりな紺色を持つ目のうちで育て中のやつ。

おれのじゅんばんはばあさん猫一家の後だ。


総勢、総合、ああ、いけない。楓を忘れていた。

楓はオレの後にくる。かぞぐのひとりがきえて、滅多に女子など貰わないだろうと思った母が、どういうわけか素直で普通な娘な方の伝手で、連れ帰ってきたのだ。あれはまだオレに盛りが一度も来なかった時だから2010年の初夏とかかもしれない。

とにかく、

おれ。

楓、をさんひきめとやんちゃ一のあいだに入れ込んで数える。

いち。に。さん。おれ。楓。ろく。なな。しち。

しち!

あの狭い家にななひきもいたのだ。

でも増えては困るので、ばあさん猫の出産後はうちの奴らは耽る手前かはじまったころ、みんな避妊や去勢をしてきた。楓と同じでばあさん猫ももらいっ子だ。まだ小さいうち。危ない方の娘が友達からもらった。2002年。春かもしれない。ばあさん猫はアカトラの兄弟三匹と一匹だけの白い猫として。四人きょうだいで生まれた。目が凄まじく美しく成長する。貰われた後、ばあさん猫は家族ともども引っ越すことになる。といっても車で二十分の距離のところだが。そこで

ああおーん。が始まる前にどこかで散歩でもしている時に子ができたのだろう。


本当は生まれた子は三匹だった。アカトラの兄弟とばあさん猫の母に似た鋭い顔の疾風のようなオスだった。だけれど盛りが来る前にそいつは、はやいものに跳ねられて、絶命してしまったらしい。


もう匂いも毛も、か細いもので、オレは結膜炎由来の鼻炎持ちだったから、その兄上の存在の残り香に終始気づけなかった。


そうしてやってきた新しい団地。あるものはオレのように枯葉とめやにでめをぐずぐずにし、あるものは道の黄色い中央線でひんやりするまで座る子猫で、またあるものは伐採された木々の泥水から一匹だけ泣いているのを見つけられ、あるところ、とあるスクールの裏手で身体中黒いカビだらけのホワホワで、しろいけなんて、ちょっとしか残ってない子猫として捕まった。


医者にも相談する。自分たちから拾いに行っているわけではない。危ない娘は手術を終えたまだ若かりしばあさん猫を眠さで病院まで迎えに行きたくない為、


迎えに行くわけないだろ!

あのバカ猫!


と罵倒したことがある。そうすればもっと寝られるのだから。危ない娘はよく眠る女だった。


この娘は今後、一番、俺たちについて後悔するのかもしれない。みんなの最期はバラバラだ。もしかしたら、出て行った三匹も、どこかで生きているのかもしれない。2022年になったいまでも。


話はオレの喉が枯れてとうとう声が出なくなってしまった2013か、2014年に、

楓と、もうぽやぽやじゃない、立派な紺色の眼を持つ白猫として治療され成長した白猫が去って行った日に戻る。


先に語っておこう。

オレは浮気を疑われていた。

ばあさん猫、仮に名前をライムとしよう。

ある日ライムにそっくりで片側に薄い肋骨のような茶色のしまがある猫が、我が家に堂々と侵入してきた。まだ楓とぽやぽやが消える前の夏だ。そいつはあまりに堂々しすぎて、チラシを見ていた父が一度見、またチラシを見、またその猫を見て。

ライムじゃねえ!!

と驚愕した。

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