第3話

選択を考えよう。



1 戦う

2 逃げる

3 和解

4 お金で交渉



戦う、これは択が無い時にだけ選択しよう。

逃げる、これは無理だな、速度で負ける。

和解……絶対無理。

お金で交渉、差し上げた所で殺されるのは目に見えている。


……戦うしか無いのか。


「盗賊さん……見逃してもらえるってことは?」

「……」

「ないですよね」


冷や汗が出る。

この状況を打開する方法はあるかな……。


先に動いたのは、盗賊だった。


僕はそれに合わせて地を蹴る。

盗賊の剣と魔剣が打つかる。アチラも結構良い剣を使っている様だ。


戦闘経験が少ない僕にどうしろと言うのだ。中身が変わる前王子が先頭をよくしていたから体が着いていけるが、僕自身は着いていけない。


「ちなみに、お金渡すから逃してって話は……」

「奪えばいいだろう。殺して奪う、それがルールだ」

「物騒なルールですねっ!」


剣と剣がぶつかり合う。ほんの少し火花が散った。


マズイマズイ……! 逃げるしか無いな、でも、どうやって逃げようか……。


「戦闘中に考え事か?」

「どうやってこの状況を掻い潜ろうかなぁっと」

「死は救済だぞ?」

「そんな言葉信じてないのでね!」


本気で悩む。戻るにしてもまあまあな距離だ。とりあえず戻るか、速度で負けるだろうけど。行ける所までは行こう。


「ほお、諦めず逃げるのか」

「諦めるのは性に合わないんですよ」


走るついでに木を切り倒しながら距離を取る。


後50メートルくらい……。


方法としては……魔物に戦わせる事か、だけどそれは僕も危険だ。


もうここで突っ込んで、ダメージを食らった回復を繰り返すか? いや、それも危ないけど……。


「ああもう! やるしかない!」


身を翻し、盗賊に突っ込む。


「〈急所一点ストライク〉」

「んなぁっ!?」


飛ばされる斬撃。


「ぎっ……」


避けようとはするも、反応が遅れ横腹を少し抉られる。


すぐさまにポーションを飲む。上級ともなれば腕がなくなろうと再生してくれる。


「上級か、金持ちなんだな」

「王国の王子といえばわかるかな?」

「なっ!? あのブタか」

「ブタ言うなあ!」


そう言いながら魔剣を振る。状況は不利なままだ。


「見た目が変わった王子様はスキルを使わないのか?」

「それは僕が弱いと知って聞いてるのかな?」

「勿論」

「いい性格してますね」

「皮肉か?」

「そりゃそうですよ」


あー、イベントのせいで誰にも気づいてもらえないな。


「楽しそうですね」

「弱者を殺すのは楽しいからな」

「そっすか」


せめて、僕にスキルがあればな。


「ただ、貴方のその剣もヤバいですよ?」

「ん?……ほー、確かにそうだな。その剣は金持ちだからこそ手に入れたのか」

「そうかもしれませんね」

「曖昧な返事だな」


盗賊の剣はこの魔剣と打ち合ったせいでガタガタになっている。

本当に切れ味がいい魔剣だな。相手の剣は刃こぼれしている。少しは戦えるかな?

確率低いけど、力任せで剣を壊してみようかな?


地を蹴る。まあ盗賊は防いでくれる訳でもなく避ける。不毛な戦いだ……。


「〈急所一点ストライク〉」


斬撃、だか一度見た攻撃に引っ掛かるほどバカじゃない。


「流石にもう食らう事はないよ」

「だよな。まあ剣はもういらねえ。拳で十分だ」

「うっ……やっぱそうなるよね」


厳しい展開になってきたと呟く。


「ふっ!」


盗賊のラッシュ、避けれない攻撃は剣で防ぎ、隙を伺う。


右、右、左、右、下。


攻撃を見極め避けていく。


この体のお陰だな。


「ぐあっ!? ど、どんな力してんだ……」


魔剣で防いだつもりだったが、力が強く腹に魔剣と共に叩きつけられる。


そんな隙を見逃すはずもなく盗賊のラッシュは続く。


右、左、右、右……。


時折混ざるフェイントや蹴り。厳しくなってきた。


「ワウッ!」

「え?」


聞き覚えのある鳴き声が森の中に響いた……。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

嫌われ者で最弱でデブのダメ王子に転生した俺は、魔剣と共に努力で成り上がる。 紅葉司 @supiayut

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ