第2話
ここ1ヶ月、僕はずっと、ずっとずっと陰口に耐えながらダイエットをしていた。
結果……大成功。痩せれた。だけど……。
「変わり過ぎじゃない……?」
髪色、顔、全てが変わっていた。魔剣の効果だろうか?
「これ本当に僕の顔かな? あ、作戦を練らないと」
城を出る作戦。とりあえず、今の僕はメイドに見つかれば知らない人扱いされ城を追い出される。うん、これでいいかも。
「もう別人なんだし、つまみ出されよう」
最後にアイテムだけ整えようかな、
アイテムボックス…中身…
大金貨100枚
水 5本
ビーフジャーキー 5パック 50枚
ドライフルーツ 5パック
イチゴジャム 1個
「よし、出よう」
そうして僕は部屋を出る。
「あれ、誰もいないのか。このまま進もう」
僕の部屋は一階なのですぐ外に行ける。
「侵入者だ! 捕らえろ! つまみ出せ!」
「あ、お願いします」
騎士達に連行され投げられる。
よし、これでいいんだ。
一応、計画もある。
この体は今14歳。んで、この王国には王立勇者学園がある。学園長が元勇者だ。そこに行こうとしている。
必要なのは実力。これだけだ。
入学試験開始までの期間は1ヶ月。そこまででどれほど強くなれるかが鍵になってくる。
「もうカードは作ってもらってるからね」
誰でも行ける訳ではない。貴族などに作られるカード、身分証明書とも言えるのか。それを持っていないといけない。
それと、頼んで僕の名前を改造してある。王族、王子とバレない様にね。
それほどの権限、権利を保持しているからね。
「後は実力を高めるだけだ、頑張ろう」
とりあえず、魔物と戦おう。
魔物を見つけた僕は魔剣を取り出す。
「一瞬だ!」
脚に力を入れ、地を蹴る。前の僕じゃ想像も出来ない速さでゴーレムに近づき首をチャンパする。
「前から思ってたけど、この剣切れ味いいよね」
ちなみに、この世界じゃゴーレムはあまり強くないらしい。
「変われたかな……いや、変わりすぎだな」
苦笑する。
前の自分と比べると、これ以上はないってほど変われた気がする。
「魔法だな。まあ今は使えないだろうけど」
いずれ使えるといいんだけどな。
「次なるターゲット発見」
ゴブリンを見つけた。同じ様に地を蹴って距離を一気に近づける。
魔剣を振るが、その分厚い棍棒で防がれた。
ま、もうその棍棒は使い物にならないだろうな。
『ゴブゥゥ!!』
「諦めずに腕で突っ込んでくるの? いや、知能が低いだけかな」
一人で納得し、魔剣を振る。
「生物を倒すってのは慣れないな〜。無理矢理慣れるしかないかな……」
足に血が流れてくる。僕はゴブリンの血か、と思い避けようとするが、そこで、そのおかしな事に気づいてしまう。
「赤い血……?」
ゴブリンの血は紫、だがこれは人の様に真っ赤な血だった。
僕がいる場所は坂の様になっている。少し上を見ると、血が上から流れていた。
僕はその血の位置まで坂を登る。
「う、ウルフ……?」
D級の魔物だ。そこらのゴーレムじゃ相手にならない、強力な魔物。何故、こんな所に……?
「涎垂らしてるな……予測としては、腹が減って、動けない時に攻撃されたとかか?」
矢が刺さっている、人の仕業で間違いないだろう。
「これでいいか」
僕の服は少しデカいので、下の部分を魔剣で慎重に切っていく。
「矢を抜くぞ……」
矢を手で掴み、力を込めて抜いた。
「ワウッ!?」
「暴れるな暴れるな……」
足に服の布を巻く。とりあえずの止血だ。
「この場合どうすりゃいいんだろう? 〈アイテムボックス〉」
ビーフジャーキーを食わせる事にした。
ムシャムシャとウルフは食べていく。
魔物を飼う人間も珍しくはない。まあD級は珍しいと思うけど……。
「ワウワウ!!」
「飛び掛からないでよ、足怪我してんのに」
随分と人懐っこい性格のウルフだ。
「よしよし……さて、こっからどうしようか」
とりあえず連れて行ってはいいからな。まあ大丈夫だと思う。
「歩けるか?」
「ガウ!」
「よし、なら着いてきて」
とりあえず大金貨100枚もあるしなんでも買えるからね。
とりあえず僕が買うべき物リストはこれだ。
1 家 大きめ
2 ヒールポーション 上級
3 マナポーション 上級
って感じかな。
「とりあえず着いてきてねっ!」
そうして店を探す。
「こちらの家は金貨20枚です」
「ふむ、大金貨5、6枚だとどれくらいですか?」
「それほどの大金となると……これですね」
「うーん……決めました! これ買います」
「え、えっと、中も見てないけどいいんですか?」
「はい、不満があるならまた別の買うので」
「そ、そうですか……」
大金貨6枚出す。
さて、次々!
「あった。おじさん、上級ヒールポーション、マナポーションを売れるだけ売ってくれないかな?」
「ほお、高くなるぞ?」
「大丈夫です、お金には余裕があるので」
そうして20本ずつ置かれる。
「大金貨4枚だ」
「はい」
さて、家に行くか。
そうして買った家に着いた。中も十分に広かった。
「ふぅ、疲れた疲れた」
ソファでグタァーとする。
ちなみに上級のヒールポーションを使いウルフの足は治してあげた。
「そうだな……名前はルウだ」
「ワウ!」
……今食べたい物にカレーのルーがあった。発音が少し似ているのでそれにした。
少し可哀想だか喜んでいるのでいいだろう。結果良ければ全て良し、なんて便利な言葉だろうか。
「奴隷……はあ、嫌な世界だなぁ」
王子の記憶を思い出す。
金を使って救うか……いや、そこまでする義理もなければ意味もない。
「ただ……」
可哀想だ、と小さく呟く。
気が向けば、多めに救うのもいいかな。
「さて、僕は少し走るかな。ルウ、僕はちと走ってくるよ」
「ワウ!」
待っていてね、と伝えてから僕は家を出る。
僕は家の鍵を閉める。鍵はアイテムボックスの中に入れておこう。
「良い方向には……進んでるかな?」
ペット的存在も出来た、十分に大きな家も持った、デブも卒業出来た。
良い方向には進んでいるだろう、後は道を間違えずに歩くだけだ。
「……少し気になる事があるけど」
それはルウの怪我だ。
矢が刺さっていた、それは普通だったらおかしくないかもしれない。
D級を倒せるほどの実力者だから、矢を放つ。おかしくはないんだ、でも、今日だからこそおかしい。
今日、祭りというか…イベントが行われるんだ、その場合、冒険者は魔物を倒すことを禁止されている。恨みを買わないためにね。
「……! やっぱりだ、方向がおかしい」
冒険者が魔物を倒すのは金を稼ぐため、それともう一つ、魔物達を街の中などに入れないためだ。
僕はルウの血の跡を見る、明らかに遠くの方から血を垂らしながら来ていた。
「進んでみよう」
血がどこから出てるのかを調べる。
「……記憶を探るに……冒険者に依頼を出しておくのがいいかもね」
僕は冒険者ギルドに向かう。
この体の記憶、そして血の跡を見るに多分犯人は盗賊だろう。
森の奥、微かに人がいた。その周辺にアジトがあると考えて良いだろう。
今盗賊が外にいるのは、イベントで冒険者達が外に来ないからだろう。
「見つかるとは思わないけど、早く帰らないとな」
「そこで何をしている」
「……僕は高速でフラグ回収が出来るのか」
僕は魔剣を取り出す。警戒心高めで逃げないと…な。
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