王立勇者学園

第1話

「あ、でも魔剣の紹介はしておきますね」


一つの剣が女神様の横に浮く。


「こちらの魔剣はですね……」


女神様の商品紹介が始まる。


「効果は使用者を色々と成長させてくれます」

「それは説明と言えるのでしょうかね……」

「まあまあ、さっきも言ったように、魔力を流すと詳しく知れるので」

「はい」


剣か……異世界はもしかして戦闘する事があるのかもしれない。


「それでは、異世界ライフを楽しんで下さいね」

「はい! 本当に、ありがとうございます」


その言葉を最後に意識を失った。


目を覚ます。


不思議と、転生先の体の記憶が頭の中に入っていた。セルリド王国の王子、ハル、それがこの体の元の持ち主だった。


デブで、弱くて、王子という権力を使って人をボコボコにする嫌われ者、それがこの体の元持ち主だった。


「めっ、女神様あぁぁぁ!?」


こっ、ここここれはどういう事なんだ!?


もっと、普通の生活が出来るとおもったのに、前と全然変わらない。


「ハル王子様、朝食をお持ち致しました」

「へっ? あ、ああ、ありがとう」


メイドに持って来られたご飯を受け取る。


「も、もう部屋から出て行って良いよ」

「何処か調子が悪いのですか? 少し顔色が悪いですが……」

「あ、あはは、なんでもないよ」

「そ、そうですか、なら私はこれで」


サッとドアの前から去る。僕はバンッとドアを勢い良く閉めた。ちゃんと鍵も掛ける。


「か、考えろ考えろ……とりあえず目標を立てないと」


自分の頭の中にいくつかの目標を出す。



1 デブを卒業

2 魔剣の事をバレずに生活

3 王子をやめる。正確に言えば城を出る

4 嫌われない様にする

5 強くなる



パッと思い浮かんだのがこれだ。これら全てをクリアするためには……ま、努力かな。


「出来る事はするか。変な目で見られたって良い、前の自分と同じは絶対に、絶対にダメだ!」


ダイエットをしないと……! 


そう決断した僕は城を出て外を走る。子供から変な目で見られた。陰口を沢山言われていた。


「はっ、はっ! ぜっ……はぁ、がっ……」


盛大にコケてしまう。


周りからクスクスっと笑われてしまう。だけど今の僕にはそんな事どうでも良かった。


どれだけバカにされても前と同じ結果は辿らない。どれだけ血を出しても、汗が噴水の様に流れても、やめない、やめる訳にはいかない。


「ママー、変な豚さんがいるよ?」

「シッ、見ちゃだめよ! 感染してしまうわ!」


……。


「僕はウイルスなんかなの!?」


少し今の言葉だけは心を抉った。


変な豚さんじゃありません! 感染なんてウイルスもありません! 

と、心の中で声を大にして嘆く。


再度立ち上がり僕はまた走り出した。


走り終えた僕、次なる特訓は部屋の中での筋トレだ。何がどんな効果がある、なんてわからない。

だから上体起こしと腕立て伏せだけをした。


「ふっ、はっ……ぐっ、まだまだぁ!」


止める事のない努力を続ける。


「46…47…48…49……ごっ……じゅう!!」


はぁ、と大きな息を吐く。


「つ、次は腕立て伏せをしよう」


動けばぷるんっと揺れるお腹。僕はなんとか体を起こし腕立て伏せのフォームをとる。


「1…2…3……24…25…26……37…38……ぐわっ!? も、もう限界だ」


この体じゃ限界がある。一度休憩しよう。


まだ食べたなかった飯を食べ終える。感想を言えばバリバリに美味しい。冷めていたのに僕がいつも食べてた料理の3倍は美味かった。疲れた後だからってのもあるかもしれない。


「絶対に……諦めない」


心に固く決意する。


っと、魔剣の事を調べないとな……。僕は魔剣を握り体内の魔力を魔剣に移す。



武器効果ウェポンスキル:成長力向上



「へっ……? たった、これだけ?」


ま、まあ成長が良くなるのはいいんだけどさ……。


「な、なんか女神様、僕の周り辛くない?」


上手くいかないな……と呟き、再びダイエットに取りかかった。


「ふっ、ひっ、はっ……ほっほっほっ」


走る速度を上げる。


くぅ……転ぶ度に聞こえるはずのない声が頭の中で再生される。


そうして俺は転んでしまう。


子供からのあの目と言葉が一番心にきた。


僕みたいな豚にならないでね。


「よし! 終わった。部屋に戻ろう」


城の周りを3週したので僕は部屋に戻る。


毎日続けないとな……。


朝、僕は朝食を受け取り食べていた。


ムシャムシャ……ムシャムシャ……。


美味くて箸が止まらない。


「さて、食べ終わったから……いつも通り城の外を3週しようと」


そう言い城を出る。そしていつも通り走る。


2時間ほど走り続けようやく部屋に戻る事が出来た。


僕は鏡で自分の姿を見た……んで驚いた。


「結構痩せた?……ああ! 魔剣のお陰か!」


10キロくらい痩せたと思う。それでもデブは変わらない。


魔剣の効果って凄いな……こんな短期間で……。


「このまま続けるんだ……!」


辛い、それら変わらないが少しの辛抱だ。


「絶対に、変えてやるんだからな……!!」





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