if XIII
僕たちはケートスの石像の前で立ち尽くしていた。守護者、均衡、そして大地と海が関わる何か――それらすべてが、この島に深く結びついていることは明白だった。
「この石像がここにあるということは、ケートスはただの伝説じゃないってことなんだろうね…」高梨が像を見上げながら静かに言った。
「でも、これだけじゃまだ足りない。もっと確実な手がかりを探さなきゃ。」僕は焦りを感じながらも、周囲の壁や床を調べ始めた。
「確かに…何か決定的な証拠が欲しいよな。守護者がどうやってこの島を守ってきたのか、その方法がわかれば…」斉藤が壁に彫られた模様をなぞりながら言った。
その時、突然、大きな揺れが僕たちの足元を襲った。大地が鳴動し、まるで島全体が揺れ動いているかのような感覚だった。
「何だ…?!」僕は思わず壁に手をついてバランスを取った。
「地震…?それとも、何かが始まってる?」高梨が驚いた声を上げた。
揺れは数秒で収まったものの、僕たちはその場で立ち尽くし、何が起きたのか理解しようとしていた。大地の震えは、ただの自然現象ではなく、この場所に何かが呼び起こされているかのような感覚を伴っていた。
「これが、均衡の崩れってやつなのか…?」僕は自分に問いかけた。
「いや、まだ始まったばかりかもしれない。」綿津見くんが冷静に言った。
「どういう意味?」高梨が不安そうに訊いた。
「均衡が揺れるって言ってたけど、それが少しずつ崩れ始めてる兆候なんだと思う。大地と海が共鳴している――そんな感じがしないか?」綿津見くんは地面に手をつき、微かに震えている感覚を確かめていた。
「じゃあ、何かがこの島全体で動き出したってこと?」僕は不安を感じつつも、これまでの謎が少しずつ繋がり始めているように思えた。
「そうかもしれない。守護者――ケートスが本当にこの島を守ろうとしているのか、それとも何か別の力が働いているのか。どちらにしても、時間があまりないかもしれない。」綿津見くんの言葉は真剣だった。
「もし、この揺れがもっと大きくなったら…」斉藤が不安そうに呟く。「この島全体が危険に晒されるかもしれないってことか。」
「それが、均衡が崩れるということなら…僕たちが何か行動を起こさないと取り返しがつかないことになるかもしれないな。」僕は決意を固めた。
***
その日の夜、僕たちは神社から戻り、再び学校の図書館に集まって今後の計画を練った。大地が揺れた感覚が忘れられず、胸の中には不安が渦巻いていた。僕たちは手がかりを集めてきたが、今こそそれをつなげて一つの答えに導かなければならない。
「今日の揺れ、やっぱりただの地震じゃないよね。あの石像が関係してるのは間違いない。」高梨が言った。
「でも、どうやって均衡を保つのかが問題なんだよな。俺たちが何かをするべきなのか、それともただ見守るしかないのか。」斉藤は腕を組んで考え込んでいた。
「ケートスがこの島を守ってきたというのは確かだ。でも、その守護者がどうやって均衡を保ってきたのか、まだわからない。」僕は考えを巡らせながら言った。
「守護者が均衡を保てなくなった時、この島には何か大きな災いが起こる。そんな気がするよ…」高梨の言葉は、まさに僕たちが感じている不安を代弁していた。
その時、不意に扉が開いて瑠海が現れた。
「遅れてごめんね、ちょっと用事があって…」瑠海は少し息を切らしながら言った。
「大丈夫だよ、ちょうど今、今日の出来事を話してたところなんだ。」僕は瑠海に簡潔に大地の揺れと神社での出来事を説明した。
瑠海は僕の話を聞き終えると、少し考え込んだ表情を浮かべた。
「もしかして…その均衡って、私が関わっているんじゃないかな。」瑠海の言葉に、僕たちは一瞬静まり返った。
「どういうこと?」僕は思わず訊いた。
「最近、何か大きな力が私の中で目覚めようとしている感じがしてたんだ。でも、それが何なのか、ずっとわからなかった。もしかしたら、私が…その均衡を保つ役割を持っているんじゃないかと思うの。」瑠海は少し苦しそうな表情を浮かべていた。
「瑠海……君が?」僕は驚きながらも、彼女の言葉に妙な説得力を感じていた。
「でも、それをどうすればいいのかはわからない。だけど、何か大きな決断をしなきゃいけない時が迫っている気がするの。」瑠海は真剣な目で僕たちを見つめた。
その瞬間、僕たちは感じた。彼女が何か大きな秘密を抱えていること、そしてそれがこの島の運命に深く関わっているということを――。
「わかった。僕たちでその謎を解き明かそう。時間がないなら、急がなきゃ。」僕は決意を固めた。
「うん、一緒に解決していこう。」瑠海は頷き、僕たちは再び動き出すことを決意した。
***
翌日、僕たちは再び神社を訪れることにした。今度は、何か新しい発見があると信じていた。石像や祠、そしてその周囲をもう一度入念に調べるためだ。
「今日こそは、何か見つけたいね。」高梨が意気込んで言った。
「絶対に何かあるはずだよ。」斉藤も同意した。
僕たちは再び神社へと向かい、その場に立った。大地の揺れは今は感じないが、何かが動き始めていることを、僕たちは全員が感じていた。そして、それがこの島に何をもたらすのか――その答えを見つけなければならない。
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