第25話 day17

 小岩魔人ミニゴーレム達は、紅たち目掛けて走り出していた。というよりも、一部の小岩魔人ミニゴーレムというものがないのか、転がっている。

 『別に危険そうには見えないけど...』

 そんなに怖い見た目でもなく、ちょっとした泥人形のようにも見える。そんなことを思いながら迫りくる小岩魔人ミニゴーレムを見ていると...

 「爆発するぞぉ!」

 ボンッ! ボンッ!

 と、音を立ててあちこちで小さな爆発音が始まった。

 『え?見た目のわりにめっちゃ怖いじゃん...』

 紅自身、戦争やそういう事件にも出くわしたことが無いので初めての感覚だったが、爆発とは思ったより怖いモノである。ゲームなどで見るような生易しいものではないのだ。立っていられないほどの爆風でもないが身構えていないとバランスを崩しそうである。といっても、メイドさんがしっかり支えていてくれている。

 『これって、惚れるタイミングなんだろうな...』

 メイドさんの体にぴったりと張り付いて、腕に包まれている。よくあるイケメンがヒロインとかを腕に抱いて支えている状態である。そして、ぴったり張り付いた状態から、チラッとメイドさんを見てみる。無表情だ。

 『下から見ても美女とか犯罪だよなぁ...』

 よくカメラを取るときは下からじゃなく上からカメラを向ける方が良いという。紅自身、自撮りなど無縁だが一応そういうのは知っているのである。だが、下から見てもカッコいい美女が目の前にいる。

 『ずるいよなぁ...』

 そんなことを考えていると、一瞬目があった気がした。が、気のせいだろうと紅は思った。


 「紅様。少しお待ちください。殲滅してきます。よろしいでしょうか?」

 突然、メイドさんがそんなことを言い出した。が、それを聞いて断る理由もなかったので、

 「ケガしないようにね。お願いできるかな?」

 そう言った。それを聞いたメイドさんは少し微笑んだ後、そっと紅を離し、前に進みだした。

 『どんなことをするんだろう...』

 紅はこの世界の人々の戦いを見ていない。というのも、最初の村で現れた悪魔だが、まともに戦う前に気を失ってしまったし、この世界の人々の戦いを明確には知らないのである。そして、今の紅には到底考えられない出来事が起こる。


 「波動干渉はどうかんしょう

 その一言だった。その一言で誰もが理解したのだ。

 何も知らない人が見たら、もはや何もしていないように見えるだろう。むしろ、何をしたのかを理解する方が難しい。ただ、妄想が大好きな紅には目と耳から得る情報で十分な理解ができた。

 『何したんだろう...でも...なんとなく分かる気がする...。爆発を止めた?でも小岩魔人たちは動かない。時間を止めてるのかな?でも、私は動けるし...。

 あ、なんとなくわかってきた...』

 どこで、しっかり妄想力による名推理で紅はの前で起きた出来事を理解した。


 波動干渉はどうかんしょう。それ自体は何なのか分からないが、おそらくする能力か何かなのだろう。それで、小岩魔人の爆発や行動を止めたのだろう。もちろん、そのというのがなんのかは分かっちゃいない。


 数分後、小岩魔人たちは、いくつかの宝石を残して土の塊と化した。


 「紅様。戦利品でございます。どうかお受け取りください。」

 そう言って、メイドさんは集めた輝かしい鉱石をすべて譲ろうとしてきた。

 「えっ!いやいや!私何もしてないし!メイドさんが倒してくれたから片付いたわけで...」

 そう言っていると、 「今は紅様に雇われている、という形ですので、今は私の主は紅様なのです。」と、私のすべては主様の物と言わんばかりに無理やり渡してきたので、とりあえず受け取っておいた。そのあと、採掘中だった鉱夫たちに感謝され、感謝の証を渡したいから...と言われちゃったので、「とっても安くてきれいな宝石を明日紹介してほしい」と頼んでおいた。それでもお礼し足りないと言われたので、「まだお礼し足りなければ、クラウス商会に良くしてあげてほしい」と言っておいた。良くしてもらっているのだからこれは恩返し。商人にとって宣伝は良いモノだろうと思った。もっとも、クラウス商会が宣伝に頼るような弱小組合ではないのはもう理解している。


 そんなこんなで、紅はメイドさんとご飯を食べていた。

 「一日中歩いたけど結構慣れてきたかなぁ」

 数日前まで、森の中にいたのである。体力は最低限ある。

 「ですが、あんな問題に巻き込んでしまい申し訳ありません...」

 少し悔しそうに、メイドさんは言った。

 「メイドさんは何も食べないの?」

 辺りはすっかり暗くなってきている。というのも、あちこち回りすぎてお昼ご飯を食べなかったのだ。それに関してもメイドさんは申し訳なさそうだった。

 「はい。基本的に業務中は主、今は紅様の安全が第一。食事などは基本的に取らないのです。」

 ほんとは、尊敬や感謝を感じるべきなのだろうが、紅にはそれよりも先に、

 『つまり、食事バランスも悪いのに、そのスタイルや肌を保っていると...嫉妬や感心じゃ収まらないなぁ...』

 とつい思ってしまう。とはいえ、食べてもらわないと心配だし、何よりも黙々と目の前にいられるのも落ち着かないんので...、追加で飲み物を注文して無理やり飲んでもらった。

 「主の言うことが絶対なら飲んでくれるよね?」

 少し脅し文句にも聞こえるが、実際、かたくなに拒否するのだからこうせざるを得ない。

 そんなこんなで、紅が気になっていたことを問いただすことにした。

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