第23話 day17
メイドさん、もとい、セレアさんはクラウス商会の四番手なのだそうだ。というのも、その順位は、あくまで実力。戦闘力や意識量、サービス精神や接客態度、もちろん容姿なんかも少なからず影響しているのだそうだ。
『普通にとっても可愛いメイドさんだけどなぁ』
紅の記憶の中にもある、ザ・メイドと言わんばかりのメイド服。細く邪魔にならない程のサイズのアレ。美しく無駄のない歩き方や
「メイドさん...?」
「何でしょう?」
「もしかして、何か怒っておりますか?」
堅い表情に少し不安になってしまった。
「そんなまさか。なにも怒るようなことございませんでしたよ?」
メイドさんは表情一つ変えずに言ってしまうものだから...
『怒っていないと言われれば怒っていないのだろうし、怒っているか聞かれたら微妙な表情なんだからちょっと分かりにくいなぁ...』
本当に表情が変わらない。ただただ真顔、と言うような表情である。でも、それでも可愛いさと美しさを兼ね備えた美貌とその仕草である。
『なんか、尊敬通り過ぎて嫉妬してきたなぁ』
そんなことを思いながら、メイドさんのふくよかなアレを見る。
『なんて妬ましいんだ...』
「触ってみますか?」
なんてメイドさんは言ってくれたが、今はそんな気分じゃなかった。
「嬉しいけど、今触ったらそのままちぎっちゃうかも」
そんな何とも言えない会話をしながら食事に向かう。
「シズクはまだ起きてないのかな?」
その質問にメイドさんは確認を取ることもなく答えた。
「まだお目覚めになられておりません。起こしましょうか?」
「ううん、大丈夫。今日は急ぎの何かがあるわけではないし。」
今日はすることがだいたい決まっている。
「今日のご予定はお決めになさっているのですか?」
「うん。この国は鉱山都市ミンドロール。なのに私たちが言ったのは、いろんなお店と、商会のギルドと、図書館と...それくらいだから、流石にそろそろ鉱山都市だということも忘れちゃいそうだから、その辺りの観光というか、話を聞いてみたいなぁって思ってるの。」
メイドさんに大雑把ではあるがそう説明をした。洞窟なのか坑道なのかも分からないが、何かしら知りたいなと思っている。
『地中にしかいない
そんなこんなで、朝食を頬張る。今日あパンとスープが並んでいる。サラダもついているが、なかなかに緑である。ただ言えるのは、機械的な技術は無いものの、医療というか、体に優しい朝食という概念は有りそうで、少し安心した。
少し部屋を出ていたメイドさんが戻ってきた。
「シズク様がお目覚めにならないので、本日は私が紅様をご案内させていただきます」
「え?」
思わず驚いてしまったが、思わぬ吉報である。いや、吉報かと言われると、シズクともうちょっとデートっぽいことをしてみようかなと思っていたので、本来の予定とは少し違い微妙な感情になってしまった。しかし、この辺りに詳しい人が付いてきてくれるのはかなりありがたいということには変わりない。
「こちらが鉱山の第四入り口です。」
来賓館での話の後、結局メイドさんに案内してもらった。シズクはというと...
「シズク?お出かけするけど来ないの?」
「フフフ...べにさまぁ...きょうはせきょくてきぃ...」
「...」
見事に起きなかった。『もはやだれか催眠術とか睡眠薬と使ったでしょ!』と言わんばかりの睡眠である。どうやら幸せそうな夢を見ているらしい。
そんなこんなで案内してもらったのは、来賓館に最も近かった鉱山への入り口である。第四入り口と言うからにはたくさん入り口があるのだろうなと、ぼそぼそ呟くと、
「はい。この国には100を超える入り口があります。というより国外にも入り口が存在しており、すべてが地下で行き来できるようにつながっております。」
と、丁寧に教えてくれた。もちろん、地上と同じように関所があるため、危険な兵器や指名手配者のような悪人も簡単には通さないように手は行き届いているらしい。
「へぇ...思ったよりひろいですねぇ...」
地下は思ったよりも広く作られていた。入り口も馬車が通れるくらいには広かったが、地下はそれ以上にしっかりできていた。もちろん青空なんかは見えないが、十分に人が行きかっている。
この地下は、人々もよく利用するらしい。元々はここも採掘場として採掘が進んでいたが、掘ってしまった地下をどうするか迷った結果、地下も都市の一部として機能させることにしたのだそうだ。来賓館近くの第四入り口。そこから入っていくと、最初は土や石が多く見えていた壁も、中央に近づいていくだけで、石畳や木造の部分が見えていた。中には地上の建物と繋がり、地下1階としている建物もある。地上と違うのは、青空が見えないこと、野菜や肉や魚のような食物が少ないこと、植物が少ないこと、そして...
「あれって...アクセサリーですか?」
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