第22話 day17

 『能力ヲ獲得【】』


 「あ、日付変わっちゃってるね」

 紅は能力獲得によってそれに気づく。

 「ショームさんの話、いかにも商人さんって感じだもんね。」

 髪を乾かしながら、遠回しに話が長かったと言った。

 「まぁね、でも結構重い話多かったな...」

 どうしても、南側の村のことが気になるのだ。

 『無意識に助けに行こうと考えちゃう...別に義務でもないのに...』

 ついつい、考え込んでいると...

 「行ってみる?」

 「え?」

 シズクは満面の笑みで提案してきた。

 元々この国に来た理由は、周辺の地図を手に入れて、旅の計画を立てること。それと、この世界について理解を深めること。この二つ。別に行っても問題は無いのだが...

 「行きたければ行けばいいんだよ!また二人で旅をするのも楽しいし、いろんなところをこれから旅するにはもっと強くならなくちゃ!」

 シズクはとても前向きに言った。

 「そういえばさ、シズクって、締約神って、私のお嫁さんか旦那さんってことだよね?」

 少し、頬が赤くなるシズク。

 「そういう、こと、に、なるよねぇ」

 謎に惚気のろけているシズクを見て、真剣な表情で紅は顔を向けた。

 「私にずっとついてきてくれるんだよn...」

 「はいっ!」

 シズクは紅の質問を聞き終える前に理解し、即答した。その異常な即答に、沈黙が続く。

 『なんか、そこまでの即答をされちゃうと、さすがに恥ずかしいな......じゃない、真剣な気持ち、真剣な気持ち...』

 ちょっと動揺しかけた気持ちを、抑え込む。

 「じゃぁ、ずっと一緒だよっ」

 少し照れつつも、真剣なつもりでシズクに向かって言った。

 「うんっ」

 元気に返事をしたシズクに向かって、紅は思いっきり飛び込んだ。決して、破廉恥ハレンチ行為ではない、決して。傍から見ればもちろんそういう風に見える状況であるが、そういうことは一切ない。と考えている。


 「決めたっ」

 紅は、シズクとベッドで横になったまま言った。

 「二日過ごそう。二日ここに滞在して、三日後の朝にこの国を出る。南に向かって状況を確認しつつ海に行こう。」

 今後の計画をざっくりと言った。シズクは元々そのつもりだったのだろうが、頭が回っていないようで混乱していた。ずっとうなずいている。別に変なことをしたわけじゃない。飛びついて、ハグをして横になっただけである。ヤマシイことはしていないし、ただ一緒のベッドに横になっているだけなのだ。

 『そんな、湯気が出ていますみたいな状況になるんだ...』

 そんな感想を持ちつつも、紅は平常心しか持ち合わせていない。

 『とりあえず、気になることが残ってるんだよねえ...』

 気づけば、シズクはそのまま気絶したように眠っていたので、さすがに死なれたら困るので治療という程でもないが、少し様子を見て眠ることにした。

 明日何をするか決めながら、そのまま同じベッドで眠りにつく。


 「おはようございますお客様。」

 目が覚めると、メイドさんが目の前に立っていた。

 「あの...どうかなさいましたか?」

 寝ぼけたままの紅は、目の前のメイドさんに向かって、意識も曖昧なまま反応する。

 「いえ、夜が明ける頃に悲鳴が聞こえ、様子を見に来ると、シズク様がひどく怯えているというか、困惑なさっていまして...それで気絶されてしまったので、別室に移動させていただき、念のため私がこの部屋の警護についておりました。」

 なんかシズクが叫んだので警戒態勢なのだそうだ。なんか申し訳ない。そのまま話を聞いていると、結果的には何もなく、まだシズクは寝ているそうだ。

 「そういえば、メイドさんはよく話してくれるよね。」

 そう。護衛についてくれていたメイドさんは、紅やシズクと割と多く関わっている。お風呂や食事の際の案内もこのメイドさんがほとんど担当してくれているのである。他にもメイドはいるのに、である。

 「そういえば、メイドさんはいっつも私たちのこと担当してくれてるけど...メイドさんたちの中で担当とかあるの?」

 その質問に、メイドさんは少し間をおいて、淡々と答える。

 「私が会長様に申し出て担当させていただいております。」

 『へぇ...なんでだろ。』

 「どうして申し出たの?」

 紅は思ったままに質問し、メイドさんも表情をあまり変えることなく、淡々と答える。

 「会長様の恩人と伺ったので、ここは私が担当せねばと思いまして。」

 「どうしてそう考えたの?」

 一瞬、誇らしげな表情にも見えなくもなかったが、表情を変えずして、メイドさんは言った。

 「私は、この全クラウス商会の館におけるメイドの四番手のセレアだからです。」

 自信満々に言うその姿に少し驚いたが、紅はとりあえず落ち着いて話を進めた。

 「えっと...四番手なの?」

 「はい。クラウス商会にはメイド序列というのがあり、お客様の反応や仕事成績などから総合して順位が決まられます。そこで、高い腕を見込まれ四番手として君臨しているのです。」

 そのまま、説明を受ける紅であった...

 『商人関連の人って話長い決まりでもあるのかな?』

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