第20話 day16
図書館での様々な情報収集で学びを深めながら、修行を行う。そういう計画であるのだ。食事は、来賓館の方なら無償で食事を提供してくれている。朝と夕はお金をかけずに食事ができている。昼飯代のみお消費なので、そこまで困ることは無い。本を読むだけなのでそんなに空腹も感じないので平気なのだ。修行のときは街を出て、街周辺で魔物や動物を狩って売る。それで、十分利益になっているのである。
「読んだのは...ここまでだったけ?」
紅は、最近読んでいる世界史の本を開き続きを読みだした。
かつて、異世界から来た
『そもそも、三種族がどうやって
ここで、人間はどうなったのか。人間は、特別な
『人間とは愚かで醜い生き物。目先の者を第一に信じ、周囲の雰囲気に飲み込まれる生き物である。』
その書き出しで、人間の
『人間は勝利を喜んだ。人間は喜びを分かち合うのも好きな、繋がりを大事にしている生き物。しかし、神々は大半が姿を消し、魔物たちは距離を置くようになった。最初は、文化的な違いだと思い込んでいたが、神々は次第に姿を見せなくなり、世界各地で、魔物による被害報告がされた。ここからが人間の愚かなところである。
ある者は、「
ある者は、「人間が指揮を執った中でその脅威に気が付いた」や「嫉妬心が沸いた」と言い張り、
ある者は、「裏で神と魔物が手を組んでいる」などと言ったり、
ある者は、「
ある者は、和解や原因を探るべく残された意思疎通の可能な魔物や神を探しに旅に出たり...
それぞれ様々な思考を持ち出したのである。結果それはどうなるか。誰でも想像できるのではないだろうか。
人間は派閥をつくり、各団体に分かれ対立すようになったのだ...』
そこには、勇敢で鮮やかな命の輝きと共に、人間たちの愚かで悲惨な愚行が記されていた。
「人間ってなんなんだろね...」
紅がそう呟くが、聞こえていたか聞こえていなかったのかは分からないが、誰も反応することは無かった。
今日は、来賓館で話があるとショームさんから声を掛けられていたので、昨日より早めに帰る。まだショームさんは来賓館まで来ていないらしく、ひとまず部屋に戻った。
しかし、紅は今日読んだ歴史の本のことが頭から離れず、ぼーっとしていた。それを見たシズクが声をかける。
「紅?さっきからぼーっとしてるけど...大丈夫?」
それに対し紅は、
「人間って何なんだろうね...強いのに、弱い...よね。せっかくの平和も...なかったことになるんでしょ?...それじゃぁ、意味ないんじゃないの...?」
その疑心暗鬼な言葉に、シズクはそっと紅の横に座り、言った。
「人間の存在が必要なのか?って言いたいのかな? もしそうなら、それは必要だよ。少なくとも私はそう思ってる。歴史書を読んでたんだよね。じゃあ想像できるでしょ?人間がいなかったら、もちろんその戦いには勝てなかったんだよ。確かに、人間は残酷なことをしたのかもしれない。でも、みんながみんな、そうだったわけじゃない。だって、紅がこの前救った村には、人間も魔物もいたんだよ。皆が皆そうじゃないの。私は紅の考えを尊重するけど、やっぱり人間は必要だと思うよ?」
少し経って、召使いさんが部屋までやってきた。ショームさんが到着したようだ。
「ということで、紅さんがお求めの物を探していたのですが...なかなかすぐに手に入れられる距離には無くて...申し訳ありません...」
とても申し訳なさそうにショームさんは言った。紅たちが求めていたものは...
「基本的に世界地図を求める人もおらず...国家規模の軍事運動や領地開拓でしか利用されなくてですね...」
世界規模とはいえ、クラウス商会でも世界規模の地図は持ち合わせていないのだそうだ。
「そこで...代わりにはならないのかもしれないのですが...周辺の交易に利用している割と正確な地図ですが、ひとまずこれをお渡しします...」
その地図は想像以上に規模が大きかった。
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