第18話 day14,15
「はぁ、楽しかったぁ」
あの後、私たちはいろんな所を回った。
いろんなものを見た。魚屋、肉屋、武器屋、薬屋、魔道具屋、野菜屋、パン屋、飯屋...たくさん見て回った。
ちなみに、売り物として溜めておいた肉はしっかり売り切ることができた。時間をおいてもう一度、商業ギルドに戻り、出来上がった会員証をつくることができた。
会員証には、5つの階級がある。
銅、銀、金、
特に深い意味は無いが、まず全員に銅の会員プレートが配られる。そのプレートには刻印があり、このプレート、ギルドプレートを介した売買を行うと少しずつそのデータが蓄積されていくらしい。それが溜まっていくと、自動的に階級が上がるらしい。つまり、階級は売買の回数であり、信頼度につながるのだそうだ。
『ある意味ポイントカードみたいな感じか...ポイントカード?ってなんだ?...あ、前世の記憶か...』
クラウス商会の特別待遇証と、商業ギルドプレートの二枚のカードを持ち上げて天井を見ながらぼーっとしていた。
「ねぇねぇ紅!これ、おいしいよ!」
ハズレは無いだろうと思って、数種類十数枚ずつまとめ買いしておいた。
「クッキーでしょ?おいしくない訳ないと思って、買っちゃった。」
「へへへ、おいし...よぉ...」
突然、シズクの元気がなくなる。
「どうしたの?」と言いながら近寄ると...
「あ、いや、その...」
慌てふためいて、必死に手元を隠そうとするシズクを無理やりだかしてみると...
「あぁぁ!...シズク...罰として、ケーキ抜きよ...」
「そ...そんな...」
シズクは、三種類、計48枚を跡形もなく平らげていたのだった。
お風呂やご飯も済ませて部屋に戻り、買ってきたケーキを食べ始める。
『いやぁぁ、おいしすぎるっ。まさかこの世界でイチゴのショートケーキが食べられるなんて...』
街中を歩いているときに、一店だけ”スイーツ”のお店があった。店主さんと話してみると、「食べ物などを冷やしながら保存できる魔道具が代々受け継がれているの」と優しく教えてくれた。中にあったのは、もちろん氷や魚や肉など、色々置いてあった。長く保存できるのを利用して、それぞれのお店から先に買い取り保存しつつ売っているのだそうだ。
この世界には、魔道具という物が存在する。
これは、持ち主が魔力を注ぎ込むことで起動するものらしい。といっても、何でもできるのではなく、刻印された能力を発動させるというものだから、道具によって機能が違うらしい。また、持ち主が魔力を注がなくても魔石と呼ばれる魔力の塊でも代用できるらしい。ただ、魔石は基本的に一つ使うと、使用した分の魔力がなくなるまで起動し続けるのだそうだ。
もちろん、いろんな魔道具を魔道具屋で見た。一番気になったのは...
『ほしいなぁ...あの切り株のおうち...』
キーホルダーサイズまで大きさを変えることができるらしく持ち運びが簡単。そして、大きくして普通の切り株サイズまで大きくすると、人が通れるサイズの扉が現れる。その中に入ると、全部で10部屋分の空間が現れるらしい。しかも、空間の間取りは持ち主の想像の通りに代わってくれるらしい。ただ...
『15プラナ...高いな...』
村を出るときに持っていたお金は、5プラナ2000ゴルド。街に来て、商業ギルドのギルドプレート作成手数料、数々の買い物。溜めていた肉。これらの収支を考えて、現在所持金は4プラナ8000ゴルド。変わらず三倍くらいの所持金がいるのだ。
『ちょっとずつ貯めていくしかないか...』
紅はそんなことを言いながら、ゆっくりショートケーキを頬張る。
「ねぇ...一口だけ...一口だけでいいから...」
なんて言うシズクを因果応報と言わんばかりに無視して、紅はケーキ食べた。
『能力ヲ獲得【
夜も開けて、紅たちは図書館に来ていた。入場料が掛かるという虚しい事実があったが、クラウス商会の特別待遇証で入場することはできた。そこで、ひたすらに本を読んでいた。それは、世界に対する理解や今の自分の実力の強化のためである。
紅はしっかり忘れていない。この世界に飛ばされて最初に聞いたその言葉。
「天命を全うせよ」
その言葉が、何者のどういう意思なのか分からないが、それを信じて分かりもしない天命のために行動するしかないのだ。いまの紅は、なんでもできるような実力を求める。
「なんだかんだ内容も難しいなぁ...」
主に読む本は、世界史や能力などの概念に関する本、生物やその文化に関する本。そう言ったものに順番に触れていく。
『この世界には...大きく分けて元々、人間、魔物、神...の三種族が大きな勢力として存在していて...それぞれ険悪な仲だった...ある時、別世界と思われるところから...謎の生物が攻めてきたため...三種族は協定を結び、その繋がりを封印した...』
「へぇ...この世界って、ものすごくアニメチックだねぇ」
「あにめ...ちっく...???」
紅の独り言に、シズクはキョトンとしているのだった...
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