第16話 day14

 「聖光道ホーリー・ライトロード!」


 目的地までの道を、聖なる光で導いてくれる。というのを想像しながら編み出した技である。


 この3日間。紅は合間合間に能力について調べた。まず、分かったことは、得る能力は漢字一文字。という流れで、2文字の感じでとして扱っていた。しかし、1文字や複数の文字数でもとして使えることが分かった。

 そして、前から分かっていたことだが、会得えとくしていない文字を使用すると、消費エネルギーが大きくなる。追加で分かったのは、文字数が多い程、消費エネルギーが多いということである。ちなみに1文字で能力が発動しなかったのは、おそらく、どういう力なのかイメージが足りていない、または、能力としての要素が足りていないということだろう。

 例えば、【火】による「火」というを使うことができるが、どんな火なのかという想像が足りていない可能性がある。また、【火】による「灼熱しゃくねつ」はとしては成り立たないということである。単純な話【火】で再現可能な域を超えているのである。

 また、毎日、能力を使えば使う程、エネルギー的余裕が増えている。これは、なんとなくだが、実際そうだと思っている。実際今、3文字分の技を使っているが、研究してるときに使った時と比べると、明らかに余裕ができているのである。

 『この感じなら、朝まで使いっぱなしでもなんとかなるな』


 そんなこんなで、道が分かりやすくなったところで、すべての馬車の走りが安定した。周囲の危険に臆する必要なく目の前が見えるからだ。もちろんペースも上がる。


 気づけば、あっという間だった。

 「いやいや、紅様。一時は何事かと焦りましたが、このような心掛けまでしていただいて...本来、夜明け前に到着予定だったのですが...」

 到着直後、ショームが再び感謝に来た。正直なところ、眠たい。しかし、会話中に欠伸あくびしそうになると、横からシズクに攻撃される。一応「主としてしっかりしろ」と言われているようだ。

 ほんとは、もう2時間くらいかかる予定だったらしいが早く着いたようだ。魔物に出くわすこともなく、平和に国まで着いた。といっても、辺りは暗くて、全く様子は分からない。街中を明々あかあかと照らすわけにもいかないので、明るくなってからにすることにする。


 「広~い!...あっ、つい...すいません、はしゃいじゃって...」

 「良いんですよ、今日は他のお客もいませんですし、恩人様方が喜んでいただけたのなら何よりです。」

 そういって、部屋まで案内してもらった。二階にある、階段を上がってすぐ横の部屋である。あまり、場所を取るのもよくないだろうと思い、二人で一部屋を使うことにした。


 二人で入浴を終えて、ゆっくりベッドに向かう。

 浴場で何があったかは言わない。とにかく、紅は安心した。とにかく、安心したのだ。


 そんなこんなで、部屋に戻り、髪を乾かす。もちろん、紅には能力があるので、二人分乾かす。

 「そういえば、子どm...ッ」

 シズクが何か言おうとしたが、手が滑って横腹を抉るように殴ってしまった。

 「ちょっと...痛いよ...だから、子d...ッ」

 やはり手が滑ってしまった。何が言いたいのだろう。最後まで言ってくれなきゃ分からないのに。

 「.........k...ッ...ってまだ何も言ってないじゃん!」

 「よからぬことを言おうとしてるのは目に見えて分かるんだよっ!」

 そうこうしているうちに、もう寝ることになった。いろいろあって、相談した結果...

 「なんで私なんダヨ」

 「?」と言わんばかりの顔で不満そうにシズクが床に布団を敷いて寝た。元々、1人部屋だったのでベッドが一つしかなかった。明日のうちに、一つ増やしてくれるらしい。ショームさんには困るほど謝られた。


 「「おやすみぃ」」

 二人は仲良く寝たのだった。


 と、いっても、夜明けまでの時間としては、だいたい一時間。紅とシズクは、睡眠時間、約3時間。朝8時ごろ、と思われる時間に起きた。

 来賓館の1階にて、食事がふるまわれる。もちろん、朝から豪華過ぎないかとも思うが、実際の味は、思ったよりも朝に向いている食べやすい朝食だった。食後は、部屋に戻り、荷物をまとめて来賓館を出る。

 「っと、その前に。ショームさんに挨拶しなくて大丈夫かな?」

 近くのメイドさんに、「ショームさんってどこにいるか分かる?」と、聞くと、

 「本日、朝、朝食の後に向かうと申しておりましたので、もうそろそろいらっしゃると思います。」

 と、言ってくれたので、待つことにした。

 

 数分経って、ショームさんは来た。

 「お待たせしてすみません。こちらをお渡ししようと思いまして。」

 そう言って渡してきたのは、とても固い金属製のカードだった。

 「こちらは、クラウス商会の特別待遇証とくべつたいぐうしょうです。同じマーク、すなわち、クラウス商会の建物や、クラウス商会と繋がっている商人やお店で、好待遇で接してくれます。私が手厚く対応しなさいと命令しているようなものです。紅様には最高位のプラチナカードをお渡しします。」

 そう言われて、そのカードを受け取った。

 「よかったらクラウス商会運営の商業ギルドにもお尋ねください。紅様も、商人としても世界を旅できますし、クラウス商会の管轄で、どこででも売買するためには、必要なものなので...ぜひどうぞ。あと、シズク殿から聞いておりますが、狩りをした、精肉を売りたいとのことでしたが、そのときにも、カードやギルド証があると便利ですよ。」


 そんなこんなで、いろいろ話を聞かせられて、約1時間。

 『商人の話って長いなぁ...』

 なんて思いながら、来賓館を後にするのだった。

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