第14話 day12,13

 そのまま進んで3日目。かなり進んで来て、少し道が安定してきた。村の周辺はあぜ道のような感じで、所々歩きにくい道もあった。が、昨日あぜ道がしっかりとした造りの道につながって、かなり歩きやすくなった。のだが...

 「逆に...歩きにくくないかな...」

 クタクタの紅はシズクに言った。

 「紅はずっと森の中やあぜ道を歩いていたもんね、急に平らになってかえって歩きにくくなっちゃったかなぁ」

 この世界に来て、村に着くまで雪踏せったで森の中を歩いていた。中々に歩きにくいが、慣れると安心感がそれなりにあった。何より身軽なのである。ただ、記憶にあるスニーカーや運動靴とはどう比べてもやはり歩きにくいものである。何より、裏が革なので比較的固い。そのため、歩くときに一枚の板を足の裏に付けながら歩いているような感じである。

 「というか、見る限り道だね」

 本当に、見る限りレンガのようなタイルで敷き詰められた道が続いている。幅は...15メートル...くらいだろうか。時々、馬車などが横を通っていく辺り、行きも帰りもスムーズに行き来できるように広めの道なんだろう。辺りには、これといったものは見当たらない。

 「山があり、川があり、谷があり、魔物がい...魔物がいる!」

 そこには魔物がいた。紅は慌てて身構える。

 「それは...魔物だけど、そんなに怖いモノじゃないよ」

 水色の球体がそこに転がっている。ぷにぷにとした雰囲気で溢れている。

 「それは魔物だけど、スライムって言って、普通のスライムは何の害もないよ。強いて言うなら、水をきれいにしてくれるとっても友好な魔物だよ」

 そう言いながら、シズクは転がるように道を横切るスライムを抱きかかえて、スライムが向かっていた道の反対側に運んであげた。もちろん紅には何とも言えない光景である。

 『悪いスライムじゃないよってこと?...っていうか、スライムってつかめる水なのかな?』

 そんなことを考えている間に、シズクは運び終えてスライムを見送っていた。

 「スライムは基本的に友好的だよ。ただ、友好的でも扱い方に気を付けないといけない子とかいるけどね」

 そういって、スライムについて説明してくれた。

 水色は水を綺麗にしてくれる友好的なスライム。緑色は植物の成長や健康を促進するスライム。赤色は生き物の死骸を吸収する一応友好的なスライム。紫色は毒を吸収放出するスライム...色によって大まかに分けられるらしい。ただ、細かく言うと、種類は無数にあるらしく、色の比率によってだいたいの性質は把握できるらしい。

 そんなこんなで話をしていると、枝分かれの道があり、看板が立っていた。

 『ふっふっふ。今の私なら読めるのだ。』

 そう心の中で誇らしげに言いつつ、能力を使う。

 『言語』

 その直後...

 「そう言えば、文字読めないんだったね...えっと、左が目指してる国。右が、南の島国地域の方角だよ。」

 そのシズクの心遣いに、紅は少ししょんぼりした。もちろん、それを悟ったのか、シズクも気まずい感じになった。

 紅の脳内には、しっかり翻訳されている。

 『←鉱山都市ミンドロール

  →南国諸島方面』

 『もう遅いよぉ...』

 そんなトホホな感じで、また歩き出した。

 この二日間で得た力は【ゲン】【】。極端な話、「言語」である。この世界に来て、思っていたのは、言語による意思疎通がどこまでできるかということである。

 『異世界に来た勇者は、自動翻訳してくれる能力とか、天の声があると思うんだけど...』なんて、思っていた。しかし、天の声は毎日ひとつ能力をくれるだけで、全く手助けという感じは無い。村に来た時は、偶然会話ができていたが、他の村や国ではそういかないかもしれない。もちろん、村にも何語か分かんない言語を使っている者や、会話をしないで意思疎通を成り立たせる者もいた。そして、本が読めない。会話はできるのだが、文字は全くの別物だったのだ。...が、この能力のおかげで、ひとまず字が読めるようには、なってきていた。


 「はぁ...まだ着かないの?」

 少し日が暮れてきたころ、疲れてきた紅は休憩合間に、ため息とともに疲れを口から漏らしていた。

 「そう言わないでよぉ。思ったよりペースは速いんだよ?」

 予定通りなら、明日の夜に着く流れだったが、到着は昼頃になりそうだった。

 「そうは言っても、もうクタクタだよお」

 紅はそう言いながら、能力で作った水を自分とシズクの口に数粒放り込む。

 「紅の能力は便利だね。ちょっとうらやましいな。」

 そこで、歩き出してから、少し気になっていたことを聞いてみた。

 「この世界って、能力者っているの?」

 「いるよ。数は多くは無いけど。まず、種族によって持ってる体質や不思議な能力チカラもそうでしょ。そして、家系や儀式を通して受け継いでいく継承能力。自然発生的に獲得する獲得能力。神や精霊との契約から得られる契約能力。大きく分けてこの3つだよ。紅のは...ちょっとどれか分かんないけど。後は、恩恵加護っていうのもあって...」

 シズクが説明の続きをしようとすると...

 

 ヴォーーーーーン(※角笛の音)


 角笛の音が、遠くで鳴り響いた。

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