1幕 2章 最初の国 鉱山都市ミンドロール

第13話 day11

 久しぶりのサバイバル。腕は...鈍っていない。むしろ、能力が増えて楽になっている。

 『嘘気きょぎ

 【気】と【キョ】から考えた技である。嘘で作られた気を操る力。それで何をしているのかと言うと...

 「来たでござるね...仕留める!」

 シャッ...

 大自然の中を、刀の音が小さく風の音と一体化する。


 数分前。

 「狩りをしようと思うんだけどさ、とっておきの名案があるのっ」

 そう言ったのは紅だった。そこから、自分の能力チカラについて説明した。そしてその名案というのが、今の方法である。

 嘘気きょぎで、紅自身とシズクの気配を薄くして、逆に関係ない場所に嘘の気配をまき散らす。その気配に警戒したり、反応したり、逃げ出したりする動物を狩る。という方法だ。結果は、素晴らしいものになった。

 半日歩いて、ずっと森の中だった。以前は居たのは、村の正式な入口のとは別のところだった。本来は結界によって入り口からしか入れないが、何らかの理由で入れてしまったようだ。そちら側は、結界やそれに関するモノの影響で生き物があまりいないらしい。しかし、村の正面から出発したことによって、最低限の道も動物もいる好都合の旅路となっている。村長曰く、3日ほどあれば国まで着くらしい。

 「無理言ってごめんね。ホムラの正式な村長任命式は明後日だって言ってたけど...本当はお祝いしたかったでしょ?」

 紅の話に、シズクは答える。

 「ううん。ちょっと恥ずかしさもあるし、私だってホムラとずっと一緒にいたから、きっと気持ちは分かってくれる。頑張るって約束もしたしっ」

 満面の笑みで答えてくれた。

 「それに紅ともホムラにお手紙書いたでしょ?きっと、読んで分かってくれるよ」

 そう言って、足を進めた。


 辺り一面、暗くなってくる。近くにある、とても狭い小川の傍で一晩過ごすことにする。

 動物の肉は全部シズクが管理してくれた。

 「すっごい上手!今度教えてもらおっかな」

 「小さいころからやってるからね。こっそり村を抜け出して、ホムラと狩りをして、肉を捌く。結構、慣れないと大変だったりするし、狩りも含めると良い修行になってたんだよぉ」

 そう言いながら、慣れた手つきで丁寧に捌いていく。見た感じほとんどが一本角の兎のような動物と、ちょっとイカついイノシシモドキである。

 「一角兎いっかくウサギ4体と野生豚ワイルドポーク2体...3シルバと2カッパくらいかな?」

 「シルバ?カッパ?何それ」

 紅はシズクに聞いた。もちろん何も気にせず、細かく話してくれた。

 世界には様々な金銭が存在する。

 そのうち、今向かっている国や周辺の村々が利用しているお金の単位である。

 カッパ、シルバ、コルト、ゴルド、プラナ、ダモンの6つである。それぞれ、銅、銀、コバルト、金、白金プラチナ、ダイヤモンドでできているらしい。そして、その貨幣には刻印があり、もちろん偽物は使えない。

 『カッパは10円くらいかな?シルバ、ゴルドがそれぞれ100円、1,000円で、コルトは10,000円ってあたりかな?ゴルド、プラナ、ダモンは1億、1兆、1京...京???』

 だいたいの価値観は理解できた。極論、1円なんて価値が微妙なのだ、そこは匙加減である。

 「それぞれの硬貨の原料になってる鉱石は希少なの?」

 その質問に対し、シズクはこう答えた。

 「確かに、価値が上がるほど希少ですが、それほど差は無いですよ。金くらいまではそこら辺でも掘ればありますし、そういった素材を無から作り出せる者もいるらしいです。白金プラチナは詳しく聞いたことないですけど、ダイヤモンドも鉱脈みたいなものがあるところなら困ることなくじゃんじゃん取れるみたいだし。」

 それを聞いて、ポカンとしてしまった。

 『記憶が正しければ...ダイヤモンドのアクセサリーとか、めちゃくちゃ希少で高価だった気がするけど...まぁ、いっか...』


 夜になり、野宿。だが一味違う。

 「紅すごいっ!」

 地面を階段状に堀り、崩れないだろう高さで部屋をつくった。これも、能力、【土】でだ。エネルギーの消費は激しいが、十分な出来栄え。安全に寝るには申し分ない。

 そうして、外で、お肉を焼いて食べる。

 「1個1個葉っぱにくるんでるのはどうして?」

 「この葉っぱに包むと、腐るのを少し遅らせることができるの。もちろん新鮮な方がおいしいけどね。」

 そういって、紅の質問にシズクは豆知識を披露してくれる。国について、まだ売れそうあ物があれば、肉屋や飲食店に売ろうと思っていたようだ。『流石さすがシズクっ』


 食べ終えた後は、お風呂にする。と言っても、軽く拭くだけである。濡れタオルで拭く。できるのはそれくらい。強いて言うなれば、紅の温水で温かくするだけ。狩りや火起こし、寝床づくりのために、殆どのエネルギーを利用してしまっているため、あまり無茶はできない。


 そうして、眠りにつく。

 寝床の出入り口は、枝や草木、葉っぱを組んで、板のような、自然っぽいもので塞いでいる。そのため、知能無き生き物であればわざわざ開けて入って来るのは無いだろうし、人間が乗るくらいなら多少耐えられる。日の光は通すので朝日で目覚められるだろう。


 「「おやすみ」」


 そう言って、明日に備えるのだった。

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