第9話 day7,8
「天日 雫。 今より貴方様に仕えます。」
淡い青の光が輝きを終えると、元々蒼の瞳だったその目は、片目だけ透き通った空色へと変わっていた。
「村長に挨拶をしてきますので、お時間をくださいっ」
そう言って、シズクは離れていった。
「シズクがウキウキで出ていきましたが...何かありましたか?」
「いや...なんにも...なかった...よ?」
そんなことを言っても、ホムラはひたすら聞いてきたので、全部話してやった。
「え?なんですかそれ‼‼」
怒鳴るようにホムラは言った。ずっと共にいたのだから、急に連れていくと、急に村を離れると、そんなことを言ったら驚きも隠せないだろう。それに、シズクはかなり強い。だからこそ、この村を守る重要人物であるシズクには村を離れられては困るだろう。
『考えなしにシズクと繋がってしまったけど...今思えば良くないことしちゃったな...もしかしたらホムラは惚れてたりして...』
「私もどうか連れて行ってください!役に立ちます!一生ついていきます!命を懸けてあなたを守ります!」
「えっ、いや、その...」
思わず赤面してしまう。
『いや、告白かよっ!』
心の中でツッコんでいると...
「それはダメ」
シズクが戻ってきた。
「なんでだよシズク!ともに守護神様に仕えるって、そう目指して頑張ってきたじゃないか!なのに...なんで僕は残らなきゃいけないんだよ!」
そう、ホムラが言うと、
「確かにそう言った。でも、このお方は守護神様とは違う。元々はこの村とは無縁だった御方だ。そして、守護神様はこの御方に、力と未来を託した。よく考えろ。この御方はこの村の者ではないのだ。少なくともいずれこの村から離れる時が来る。」
シズクの話をホムラは淡々と聞く。それを一緒になって聞く。
「極端な話、守護神様はこの御方に宿った。しかし、この御方はこの村に留まらない。そうなると、村の外に出ることになる守護神様を護る者がいる。そこになろうとしたのが私だ。私は、この御方に忠誠と生涯の愛を誓える。だから、私が行くのだ」
ドヤ顔で言ってくれたが、ただ「好きだから一緒に行く!」って言ってるようなもんだ。もちろん、おまけのようなノリで本当に必要な話をしてきた。
神というのには位があり。ここにいた守護神は最も低位の神。低位の神々は、信仰こそが命でもあり力でもある。信仰があれば強い力を扱えるし、信仰が無くなれば、その存在は無くなってしまう。そして、この村にいた守護神を信仰する者というのは、大半がこの村の者。あと、わずかだが、村の外に出て、かつ信仰を続けている者。そうなると、守護神本人だけでなく、信仰者も守らねばならない。
「だから...ホムラはこの村を守っていてくれ。ホムラがこの村を守り通して、この紅様がすべての用事を済ませたとき、この村に戻り、また二人でこの村を護るその日まで。頼めるでござるか?」
優しいほほ笑みで、シズクはホムラに言った。
少し間をおいて、ホムラは口を開く。
「無事に帰ってくること、何かあったら帰ってくること。もし、この村に万が一のことがあったら、忘れて、守護神様をお守りし続けること。約束してくれ。」
「もちろんっ」
シズクは満面の笑みでホムラとの約束をかわした 。
「ところで、この村にはあとどのくらい滞在されますか?」
シズクが突然聞いてきた。
「どうしよっかな...とりあえず、この村がある程度落ち着くまでは居たいけど、そんなに長くはいないかも...ってとこかなぁ」
「了解です!」
そういって、シズクとホムラとの三人でいることになった。
「ちょっとここで待っててくれないか。」
最初の祭壇のようなところの近くで二人を待たせて、ひとりで、祭壇に戻る。
「よし、確認してなかったけど、見たところ、二日寝たきりだったみたい...能力ってどうなってるのかな?」
『能力ヲ獲得【界】』
「一つか...受け取らなかったら、もうその日の分は受け取れないのか...」
少し悲しそうに、自分の能力を整理する。祭壇の前で
「能力を表示!」
自信満々に言うが、何も出てこない。
「アニメチックにパネルとか出てこないのか...」
そう呟くと、自分の周囲に文字が浮き上がる。
「火、水、炎、天、界、風、霧、霜、霞、武、気、穏、密...狂?」
そこには、自分の手に入れた能力たちが広がっている。
「狂ってなんだ?...まぁ...いっか。」
能力は、日ごとに得たものと、使用中に会得したものがある。合計で、約20個の文字が浮かんでいた。それらの文字を眺め、深々と色々考え込むのだった。
10分ほど経ち、
「ごめーん、お待たせ~(汗)」
姿勢よく二人は立って待っていた。
シズクがすぐに声をかけてくれる。
「用事は済みましたか?」
「それじゃあ、村を回ろうっ」
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