第7話 day6 Ⅱ
紅はそのまま、ホムラから話を聞いていた。
「他にも実力者というか、数日前に亡くなったのですが、村長の息子さんが強かったですね。何度か手合わせしていたのですが、確かに強者でありました。ただ、最近のこの事件で暗殺されてしまいました...」
言われてみれば、全然気にも留めていなかったが、村長という者に会っていない。なにか忙しいのだと思っていたが、息子が殺されていては精神的にも苦しいだろう。そういうことなのだと理解した。
ここで...違和感に気づいた。
「たぶん犯人だ!」
そう言って、紅は走り出した。慌ててホムラもついてくる。そして、ホムラはすぐさま追いつき...紅をお姫様抱っこする。
『えっ...///』
赤面しきっているが、ホムラは気づいていない。もしくは気にしていない。
「こちらの方が早いと思い勝手な行動をしました。いつでもやめるので、その時はお声掛けください。方向はどちらですか?」
そのまま真っ直ぐ走りながらホムラは質問した。そのまま、紅が道案内をする。
「おろして。」
紅はゆっくりとおろしてもらい、静かに戸を開けた。場所は昼間に来た医療施設。戸を開けた先にいたのは...
「総長?」
第一声はホムラのその一言だった。
「初めてこの村に来た時の戦士さんじゃないですか。」
紅は至って冷静に会話を始めた。ホムラの反応的に、この者は部隊か何かの総長なのだろう。言われてみれば、食事の時や稽古場のような場所に行った時に居たような気もする。
「こんな夜分にお見舞いですか?」
ホムラは唖然としていて反応がイマイチだったので、そのまま紅が会話をする。
「あぁ。守れなかった村人や同志たちを見ると、虚しさや意思が強くなってね。今日はちょっと様子を見に来たんだよ。」
「でもあなたは、村長の護衛があるのでは?」
「いや、今は休憩なんだ。代わりのやつが護衛をしている」
一つ、矛盾がうまれた。
「逆に守護神様はどうしてここに?」
「せっかくなので、深夜に都に出てみようと思いまして。護衛もいますし、多少なら大丈夫だろうと思ったんです。とりあえず、何か変化がないか、ここの人たちを見に来たんですよ。」
紅の返事に頷きながら、話を続ける。
「そうなんですね。ただ、残念なことに、何人か亡くなっているようです。私も今来たばかりで、驚いたんですが、数人亡くなってしまっているようです。」
二つ...矛盾が生まれた。そして、決定的な証拠が出る。
「うっ...」
病人の一人が目を覚ました。紅が能力で回復させようとした者の一人だ。苦しそうに上半身を起こした。
「あ...総長...」
少し間をおいて、その病人は言った。
「犯罪者!毎晩、村の者を殺している犯人だ!」
「ふっ...ふはははははは!」
病人がそう言うと、総長とやらは高笑いを始めた。
「そうだよ!俺が犯人だ!」
そう言って、刑事ドラマかと言わんばかりに、すべてを話し出した。
「そこの守護神とやらは分かっているのかもしれないが、おれはもう総長じゃない。俺は悪魔だ。神殺しの悪魔だ。俺たち悪魔はの中には、神を滅することを目的とするものがいる。なぜなら... 神は何も救わないからだ ...神は弱きものを救わない。この村の守護神は、この村を救わないまま新しい神に責任を押し付けた。それが神だ!神というのは残虐で非情なんだ!」
そう言って、総長ならざる者は、強く床に拳を叩きつけた。同時に、建物や寝床もすべて木っ端みじんに消し飛んだ。目を開くと...一面さら地になり、瓦礫があちこちに落ちていた。よく見ると...
「私...下敷き、だ...」
一気に力も抜けて、視界もだんだんと暗くなっていった...
気づけば、頭は真っ白になっていた。自分の知っていたはずの総長は総長じゃなくなっていて、悪魔だと名乗っている。自分の尊敬していた総長は、悪魔になったらしい。なんとも言えない、虚しさと憤りと悲しさと、、、複雑な気持ちだった。そして、守護神様は...
「守護神様!」
『まずい...自暴自棄になるところだった...なんて、考えている場合じゃない!悪魔の狙いは神の殲滅。つまり...』
「ふっ、神と言えど生まれたての神はこんなにもあっさりなんだな」
悪魔はそう言いながら、紅の目の前で立っている。
『まずい...この距離とこの体じゃ、守りに行くのに間に合わない...』
「死ねぇ!」
悪魔はそう言って、拳を振り下ろそうとする。
直後、血飛沫が飛び散る。
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