第5話 day5
それは、夢の中だった。
薄暗い部屋で本を読んでいる。少なくとも、異世界転生前の自分ではないと思った。
「やっと新しい本あ読めるっ」
今の視点の人間(?)はまだ幼い声で机や椅子も大人用程は大きくなく、中学生程度の少女のように思えた。
「とある世界のお話...」
まるで、伝記のような小説だった。
世界は神々が作り出した、と言われているが実際そういう訳ではない。たしかに世界は神が作ったが、最初に世界をつくったのは神かどうかなんて分からない。ただしかし、最初に世界ができた後、そこに創られたのが神々である。神々はそれぞれ役割を与えられ、例えば生命、自然、時間、空間、知能、現象、運命、欲求、罪など、さまざまな役割を持ち、世界を維持する命を与えられた。
そこで目は覚めてしまった。
「今度はまた違ったパターンの夢だったなぁ...今後とまた何か関りがあるのかな?それともただ見てるだけで関係ないのかな?」
そんなことをボヤキながら起きると、いつもの声が聞こえた。
『能力ヲ獲得【武】』
『今日も能力かぁ...なんか...たまには話し相手とかになってほしいではあるけどな...』
そんなことを考えても返事一つ返ってくることは無い。
「まぁ...いっか...」
そう言いつつ、荷物をまとめて、今日も歩き出したのだった。
歩いて10時間。昼も過ぎたころだろう。太陽が真上を少しすぎた辺りである。この世界も元の世界と同じく丸い星なのかなとも思えたころ。
「あれ?こんなだったっけ?」
辺り一面、竹らしきもので生い茂っていた。
「和風っぽいなぁ...好きかも。」
そんなことを口から漏らしながら竹林を進んでいると...少し開けた空間があった。
「なんだろう...祭壇みたいな遺跡みたいな...」
円形に石が敷き詰められ、魔法陣というか、儀式を執り行うような祭壇のようになっていた。円形のサークルの片側には台座があり、その上には...
「綺麗な宝玉?」
エメラルドグリーン?と言うような淡い緑の宝玉が一つ、掲げられていた。そして、無意識に...
手を翳していた。
気づけばそこは真っ暗になり、宝玉と自分を残して何も目に映らない。
「名を申せよ」
まるで老人のような老いた声が質問をしてきた。
「おそらく異世界から来、
そう、返事すると、
「新しい者は、紅と申すのか。よき名前だが...新しい世界じゃ。新しき名を名乗ってみるつもりはないか?」
その質問に、紅は目を輝かせたが、きっぱり言った。
「私はこの名を捨てるつもりはありません。偽名というか二つ名的なものを欲しいとは思いますが、この名は永久に自分に刻まれている名前です。以前の世界では、そういうモノでしたので...」
声のぬしは、高笑いをして言う。
「そうかそうか。無理にとは言わん。それでいいならそれでいいさ。自己紹介をしておこう。私は、この地域の守護神をしているツバキという者じゃ。数千年の時を生きて居るがもうじき終わりが来るじゃろう。」
「それはどうしてですか?どうして終わりが来るのですか?」
その率直な質問に老いた声は答える。
「ワシは神だと言ったが、位の低い神は信仰をもとにして生きておる。信仰がそのまま力と生命力となる。今、この辺りの村の者どもは数を減らしておる上、信仰は薄れており、このまま行けば滅びてしまう...いずれ守護神の座は別の物になるだろう。そういうことじゃから、ワシはもうそろそろ終わりがくるじゃろう。」
話している間にも老化が進んでいるのだろうか。最初は一人称は「私」だったのにもかかわらず、気付けば「ワシ」になっていた。
『神もちゃんとした生き物ってことなのかな...』
そんなことを考えていると、老いた声は言った。
「何かの縁じゃ。そなたに力をやろう。」
「そんな!失ってきているのでしょう?無理をなさらないで...」
「どうせ先も長くないのじゃ。新人に手助けをできるチャンスができたのじゃ。そなたに力を分け与えよう。この村の守護神は...」
話しているうちに声は途絶えてしまった。普通ならわからないのだろうが、分かってしまった。
『なにか力溢れるモノが流れ込んでくる...』
「ツバキ様のお告げが...」
その謎の声に、紅は辺りの違和感に気づく。
『囲まれてる...?みんな武器を置いて、というよりは落として跪いてるけど...』
角が生えたもの、翼が生えたもの、鼻が長いもの、浮いているもの。様々いるなか、1人、桃色に近い赤髪の青年が口を開いた。少し体つきの良い戦士のような者だった。
「新たな守護神様。生まれて間もなく願いを申して無礼かと存じますが、どうか村をお救いください!」
「はぁ~...きれいな布団だぁ~」
和風建築の建物。つまり、畳の間に敷かれた布団。久しぶりの清潔かつまともな寝床に安堵していた。
あのまま、一番デカい屋敷に連れていかれ、事情を聴きひとまず泊めてもらえることになった。屋敷の者は皆して「守護神さま」だとか「救世主様」だとか言ってくる。おそらく、ツバキという守護神のなんらかの力を流し込まれて、この村の守護神と奉られるようになったのだろう。
『重い話になってるなぁ...』
そんなことを思いつつ、部屋の外にいる使いに声をかける。
「ちょっとおしゃべりしようよ」
「私でよろしければ...」
恐る恐る、戸を開き入ってきたのは『
「ちょっとこの村のこと、まだあんまり知らないんだよね...」
そう呟くと、謎に嬉しそうに話しだしてくれた。
この村は、太古から存在する、種族に無関係に繁栄している村だという。他の王国や村々はそこまで悪い関係性ではないが、世のなかにはもちろん忌み嫌っている者いるという。しかしここ最近では、何者かにより毎日村の者が殺されており、守護神の力も弱まっていたためどうしようもなくなっていたという。
「さっきも聞いたけど...中々に凄いことが起きてて大変ね...何か...力になれると...いいんだけ...ど...」
そのまま眠りについてしまったのだった...
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