第4話 day4

 4日目。


 何とも言えない目覚めだった。

 「昨日の夢は何だったんだろう...」

 少しぼやけていて正確な記憶かは分かっていないが、何か不思議な夢を見た気がした。ただ、あんまり細かく思い出せなかったから気にしないことにした。重要ならきっといずれ思い出すだろう。


 『結局どうしよう...』

 なんだかんだで、俺からどうするか決まっていなかった。

 『とりあえず...「探知!」』

 昨晩、眠りにつきながら考えた力である。【気】というものが、なんとなく生き物の意識や気配の気を意味するのならば、こういう使い方ができるのではないか、と考えていた。案の定その通りだった。生前、実は能力オタク。こういう考え方が得意なのである。

 今、脳内にはたくさんの能力の使用方法が思いついているし、昨晩の妄想中に新しく絵に入った能力もある。

 『なんだかんだ楽しいんだよなぁ...』

 そんなことを考えていると、いつもの声が脳内に響く。

 『能力ヲ獲得【あま】』

 明らかに今までとは違う能力が来た。

 『めちゃくちゃ強そう...けど...なんでこんな使い道分かんない能力出てくるの?』

 率直な感想である。あんまり実用性というか、汎用性がないといか、妄想しにくい。 


 「とりあえず...ゆっくり考えればいっか。せっかくだし川沿いに進もっかな。」

 この三日間で得たものをしっかりまとめて、自作のカバン(それっぽい感じで昨日までの動物の革や異常に頑丈なツタを使って作ったそれなりの自信作)に詰め込み

肩にかける。

 「おしっ、いくぞっ」

 川沿いに上流絵向かう。人間探しなら下流に行くべきと思うだらうが、いまだにヒトという生物を目にしていない。つまり、この世界がの環境も知らないし文化も知らないのだ。急に襲われてしまうかもしれない。その場合、村や町で集団リンチになれば明らかに戦うことも逃げることも難しい。それなら、もう少し、山中を散策して少人数に出くわした方が何とかなるかもしれない。それに...なんとなく上流部に行った方が良い、そんな気がしてしまった。そんなこんなで、川沿いを進んでいった。


 探知にはほとんどのものが引っかからない。動物と思われる鳥や昆虫たちは所々にいるが、探知した瞬間に離れていく。おそらくバレているのだろう。探知できる範囲が狭いのかとも思ったが、遠くにはちゃんと何かがいるのかが分かる。つまり、ここら一帯の動物の察知能力が凄いのか、自分から何か漏れてるのか...

 「隠密...」

 詠唱してみた直後はなにもなかったがそのまま歩いていると、近場でも生き物の気配が感じられるようになった。ただ...

 「あんまり長くは使えないかもなぁ...時々探知して、時々休みながら隠密かな?」

 『【穏】【密】ヲ獲得』

 『あれ...?』

 いつものと同じように、よく分からない声を聞いたが、これまた不思議ことが起きた。さっきまで技みたいな感じで使っていたものが、能力として使えるようになった。それと同時に、能力の使用と同時に起きる、ちょっとした辛さや体の重さが少し弱まり、かなり楽になった。

 『なるほど...』

 新しいものを得つつ、ただひたすらに歩く。


 数時間歩きお腹がすいてきたころ、大きな岩...というより崖の下に池と空間となっているところがあり、ひとまず今日はそこで一晩過ごすことにした。

 ちょっと池が深いのも見て分かるし、探知で魚などが沢山いるのも分かったため、池に向かって...

 『水操すいそう

 池及び川の水の流れなどを操り魚を誘導し、数匹だけ河原に打ち上げる。ある意味魚類なら容易く手に入れられるのだ。今となっては、火も好きに出せるし風も起こせる。おそらく気配も隠せてるから、目視されなければバレることは無い。

 ルンルンな気分で体も綺麗にする。昨晩、編み出した【霧】【霞】で自分の周りを目視できなくしておく。見られることは中々無いが、念のためである。文字通り丸裸のため、襲われたくはない。

 ...もしも!わざわざ見るものなんて無いとか言おうものなら、もちろんその口を二度と開けないようにしてやる...なんて思ったりはしていない。と、言っておく。


 今日は、能力以外であまり得るモノがなかった。いや、十分なのだがそれ以上に求めているものが得られていない。といっても、何もすることがないのは事実。ただ、分かりもしないなにかを求めて彷徨っているだけである。

 『このさき...どうなっちゃうんろう。このまま、孤独なのかなぁ...』

 少し寂しいような気もするが、

 『前向きに捉えていこっ。今自由なんだ、今自由を堪能しなきゃ!』


 なんだかんだ今の生活も楽しんでいる。ぱっと見、毎日が変わらない日常ではあるが、新しい能力ちからを手に入れたり、それを頭を使って試行錯誤したりするのは、それなりに楽しいのである。

 「今晩も、何かいいもの思いつけるといいな...」

 そのまま、眠りにつくのだった。

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