第3話 day 3

 「あぁ~おいしかった」

 全部は食べきってないが異常には食べた。十分である。もったいないが保存方法も無いのであとは燃料にする。

 「まぁだいぶできること増えていいなぁ。発見も多いから退屈しないし、進展も多い。慣れてくるとする事も無くなって退屈になりそうだな...でも...あと1つ...」

 『お風呂に入りたい...でも...いま...それが...』


 「できる!」


 「外ではあるけど誰もいないしイイヨネ」

 少し離れた何にもバレないようなところで、服を全部脱いでしまう。

 「まぁ、洗濯でき...ないか。火つけたらさすがに燃えちゃうし...」

 諦めて体だけ洗おうとする。

 「といっても、石鹸やシャンプーもないけどね。でも、冷水を浴びる必要はない!なぜなら...」

 「温水おんすい!」

 「温かい水が、お湯が、出せるようになったから!」

 ウキウキで水浴びを済ませ、また同じ木の根を眺めながら眼をとじる。

 『胸おっきくなる能力とか...ないか...』

 欲望丸出し...とまではいわないが、ちょっとした期待がワクワクドキドキを募らせ、眠りについた。

 

 3日目

 「おはよぉ~...って誰もいないのか...これはこれで寂しいな...」

 なんて、どうしようもなく今の一番の物足りなさを口から漏らした。そして、独りじゃないよと言わんばかりに、いつもの声が脳内に木霊する。

 「能力ヲ獲得。【風】」

 これを聞いて思いついたこと、それは...

 「これは...ドライヤーの役割ができる...洗濯ができる...素晴らしいっ...」

 寂しさなど忘れてしまい、ただただ興奮で胸がいっぱいになった。


 「温風おんぷう!」

 温かい風が辺りにふく。

 「乾風かんぷう!」

 辺り一帯に乾いた風がふく。


 まだ時間帯は昼時。前夜のイノシシモドキが森の中に放置されて、次の日の昼まで清潔に保たれるわけでもなく、食糧難である。朝から何にも食べていない。それに、能力の使用にはやっぱり体力か何かを消費しているのだと分かった。新しく得た能力【風】をいろんな使い方を試していた結果、慣れた道と思っても体力の消耗が明らかに激しい。ただ、よくわかるのは、そのエネルギーも最大量が増えていると思われる。無駄に能力を使用しても、多少の問題にはならない。

 「やっぱり能力っていうものに慣れてこれたのかな...とはいえまだ3日目だけど...それでも、やっぱり疲れる。できれば、ちゃんとした知識が欲しいし...人間のいる町とかないのかな。」

 未だに人間に出会ったことはない。そして、動物にもあまりあったことがない。たまに、鳥と思われる動物が飛んでいたり、イノシシや兎のような動物がいるくらいで、なかなか見られない。

 「そろそろ意思疎通が図れる生き物と出会いたいな...寂しいし...」

 あわよくばイケメンと会って幸せになりたいなんて思っていない...わけでもないが、素直に友達が欲しいとは思っていた。そんなことを考えていると...

 『あっ、獲物だぁ...』

 一本の大きな角が生えた兎のような生き物がいる。もちろんこの森の生き物は謎に危機察知能力が高いのか遭遇しない上にすぐ逃げられる。自分自身が身体能力が高い訳でもないから、どうしても仕留めきれない。

 『風線ふうせん

 空気の光線のようなものを想像して詠唱する。それは、【水】や【火】とは異なり、目に見えない脅威であると理解できた。兎モドキは一瞬にして穴を開けてピクリとも動かなくなった。

 『【風】かぁ...ある意味、空気そのものを操っているみたいだなぁ』

 『能力ヲ獲得...【気】』

 「ん?なんかまた能力...この前は【火】を使ってたら上位互換っぽい【炎】が手に入ったけど、これは...【風】の上位互換?」

 使い方も能力としても想像ができず、なんの能力かもわからないまま一旦保留することにした。とりあえず、兎モドキの下処理をして、イノシシの時のような運び方をするには少し能力を使うエネルギーが足りなくなる気もしたので、大人しく手で持って帰ることにした。


 「そろそろ遠くまで行ってみるかぁ...」

 まだ,そこまで遠くまでは行っていない。もちろん、危険があるかもだし、方角もそんなに自信あ無いから、遠くまでは行っていないのである。今の行動範囲は、だいたい目覚めた位置から1キロ無いくらいの距離である。といっても、方向感覚が完璧かと聞かれれば、そうとは言い切れない。

 「明日、ちょっと遠出してみるか...」

 そう思いつつ、今の自分の能力や今後の動向についていろいろ考えながら眠りにつく。

 

………………………………

 体が動かない。何が起きてるのか分からない。自分は動くこともない謎の視点で止まっている。目の前で二人の人間らしきものが木製の武器を交えている。少年なのか少女なのか分からないが、戦闘をしている。ただただ、真剣な顔で二人は戦っていた。

 一人は青い髪の一本角。1人は肩より伸びた髪を後ろで一つにまとめた淡い紫のような桃色のような髪の者。

 戦闘をして少し時間が経つと、二人は武器を納めて目の前に来て跪いて、声をそろえて言った。

 我らはすべてを貴方様に捧げるつもりで、お待ちしております。どうか、早い誕生をお待ちしております...

………………………………


 「...あ...夢か...なんだったんだろ...」

 何なのかも分からず、とりあえずまだ暗いし眠いからという軽い考えで、再び眠りについた。

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