世界に名を馳せた皇帝

昼間真昼

辺境ど田舎農村にて、

戦乱を極めた世の中、そんな中、周辺諸国をまとめ上げ帝国を作り世の半分を国土とした、皇帝が現れた。皇帝の名は瞬く間に国内外に広がり、名を知らぬ者はいないとまで言われた。名は噂と共に広まり、冷徹な残酷な人、温厚で器の広い人など様々な噂が尾ひれとなって広まった。


しかしとある辺境の農村は名を知らぬ者などいないという強烈なインパクトだけが伝わり、名を知る者などいるかどうか怪しいくらいだった。


そんな中、村の井戸端会議で皇帝が議題に上がった。

「知ってる?新しい皇帝、たくさんの国を従えて世界の半分を手に収めたって話だよ」

「誰から聞いたのよ」

「行商のエンさんよ。前に会った時に聞いた話よ」

「へぇじゃあ本当かな」

そこに現れた世に関心のない男が

「皇帝とは誰のことだい?名はなんだ?」

と、聞いてきた。

当然インパクトだけが残り、名などとうに忘れてしまっているが、知らぬ者など居ないと言ってしまったので知らないと言えないので

「名前を知らないとは本当か、村に早馬が来た時はお前も居たじゃないか」

男は

「居たが、よく聞こえなかった。だからこうして聞いているのだ」

女は仲間に向かって

「聞こえなかっただって、教えてあげて」

と、しかし忘れてしまっているので教えようがない。そこにその場では最年長の女が、

「私もよく聞き取れなかったけど、確かフーなんたらみたいな名前だったかしら」

男は察した、みんな忘れているのだなと。

このままでは埒があかないので村長の所へみんなで行くことになった。

村長宅には、村長とその孫がいた。

村長は

「ほう、確かめてくるから少し待っていてくれ」

と孫が

「フーリンって名前だよ!」

と言ったが村長は

「適当なことは言うんじゃない。あの時お前は家の中にいただろう」

と一蹴してしまった。


村長は家の中で悩んでいた、確かめる術などないのだから。確かフーから始まるんだっけなと家の中を漁っていると、紙が目に留まった内容はフーシンと言う男が何かをしたみたいな内容だった。村長にとって内容などどうでもよかった。フーシンと言う名を見て確信した。これだ!と、

「名前はフーシンだ、間違い無いだろう」

みんなは口々に感謝の言葉を述べて去っていった。


行商のエンはこの話を女から聞いた時、笑いを堪えていた。村長の威厳のために言わなかったが、心の中で呟いた、子供の方が正解だと、あの村は前は噂だけを覚えていて、今は間違った名を覚えている。あの子供はきっとこっそり抜け出して野次馬の中に入っていたのだろう。

1人の意見を大した理由もなく切り捨ててその果てに間違えるとは、運がないな、

これからも客としての付き合いは続けるつもりだが、面白い村だと思ったのだった。

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世界に名を馳せた皇帝 昼間真昼 @aru-9786

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