みやこ
モモ、ケル、三蔵法師、悟空、猪八戒、沙悟浄は、都の前へとやってきた。継ぎ目の見えない巨大な門が、目の前にそびえ立つ。縦に長い長方形と、半円が合体した形の入り口があった。扉は無かったが、太陽光が黄金に反射した様な強い光で中は見えなかった。それ以外は大きな塀に囲まれ、一切の侵入は許されない強固な壁であった。
「デッカッッッ!」
「これが、都……」
ケルとモモが驚く中、三蔵達は跪き、泣いて喜んだ。
「おぉ……おおおぉぉぉ……遂に、遂に辿り着いた!!!」
「ブー、お師匠様ー、ブー!」
「艱難辛苦……四苦八苦…………」
「ここまで来ルのが、本当に長かった……」
あまりの喜びの姿に、若干ケルは引いていた。
「よ、喜びすぎじゃね?」
「まぁ、何年も旅してたからな。」
「そんなもんかね〜」
「いろいろ有るんだよ。」
「ヘイヘイ。」
「そろそろ、中へ行きましょう!」
モモは三蔵たちに、声をかけた。立ち上がる4人と二人は、都の門へと進んでいく。しかし、それに待ったを掛ける存在が後ろから現れた。
「行かせやしないよ!」
「その声はまサか!」
「バッバッバッ!!!」
「山姥!!!」
全身が真っ黒焦げの山姥が、後ろから来ていた。包丁は炎で焼け落ちたのか、武器は持っていなかった。だが巨体を武器にして、大きな爪・手・腕を伸ばし、三蔵法師に掴みかかる。
「バッバッバッ!喰わせろぉっ!!!」
「「「「「やらせはしないぞ!」」」」」
襲いかかる山姥から護る為、三蔵法師の前に5人が飛び出した。もの凄い速さで迫る山姥に、覚悟を決めて武器を構えた。しかし、5人と闘う前に、山姥は行く手を阻まれた。なんと、都の門から巨大な黄金の腕が飛び出してきたのだ。腕はすぐに山姥を握る。拳の先から顔を覗かせる山姥は、身動きが取れず罵詈雑言を叫ぶしかなかった。
「なんだなんだ!!!」
「コレは……」
ケルが驚き、モモが思い出していると、山姥は叫ぶのを止めた。そして何かを話し出した。独り言にしては違和感が有り、誰かと話している様に見えた。その話し相手は、どうも巨大な黄金の腕の持ち主の様だった。
「離せー!離さんかいーーー!!!」
「………………」
「なに?」
「………………………………」
「フン、逃げるのは簡単だね!」
「……………………………………………………」
「バッバッバッ!やってやるよ!!!」
「………………………………」
巨大な黄金の腕は、ゆっくりと開いた。そして山姥は自由の身になった。しかし、
「なーに、やってんだ?」
「まさか……」
モモとケルが山姥の様子を見る横で、悟空だけが笑っていた。
「キッキッキッ、おらと同じ事してルよ。」
巨大な黄金の腕は、そのまま山姥を連れて都の中へと消えていった。
「大丈夫なのか、アレ?」
「大丈夫サ、もう山姥は現れル事は無い。」
「ホントかよ?」
「うルサいな〜」
「あぁ!?」
ケルと悟空が喧嘩し始めたが、すぐにモモが止めた。都の門から、誰か出て来たからだ。その姿は、三蔵法師とよく似ていた。その者は、6人に声をかけた。
「よくいらっしゃいました。私は門番をしている者です。」
「どっ、どうも!」
三蔵は緊張した面持ちで、会話する。
「三蔵法師様ですね。お待ちしておりました。」
「こちらこそ、長らくお待たせいたしました!」
「お弟子様も、一緒ですね。」
「はい、こちらの者たちです!」
「存じております。」
孫悟空・猪八戒・沙悟浄は、門番にお辞儀をした。
「では、中へとお入り下さい。」
「失礼します!!!」
「
「!?!?!?」
門番は門の方へと声をかけ、ゆっくりと歩き出した。しかし、すぐに呼び止められた。声をかけたのはケルだった。
「ちょ!ちょっ!ちょっと待ってくれ!!!」
「なにか?あぁ、怪我の治療と食事は、すぐにしますので。」
「マジ!助かる〜……っじゃなくて、今『弟子の5人』って。」
「ええぇ。貴方も、お弟子さんでは?」
「いや、オレ達は違うんだよ!」
ケルは、モモを指さした。
「オレとアイツは、たまたま行き先が同じだけで、三蔵さんの弟子じゃないんだ!」
「そうでしたか。それは、失礼。」
「この都で、情報収集しようとしてるんだ!」
「情報……収集…………???」
門番は困惑の表情を浮かべたが、すぐに気が付き、申し訳なさそうな声で話し出した。
「あのー……」
「なに?」
「大変、申し上げにくいんですが……」
「???」
「ここは
「「え……えええぇぇぇっっっ!!!!!!」」
門番の発言に、モモとケルは驚いた。
「いやいやいや!待て待て待て!そんな訳、無いでしょ!」
「おそらく……」
「だってオレ達、三蔵さんが都って言うから一緒に来たんだぜ!?」
「………………………………」
門番は少し黙ると、目の前の光り輝く都について説明を始めた。
「ここは昔から、多くの僧たちが修行をする事を目指して世界中からやってきます。東西南北、四方八方、寒冷温暖、ありとあらゆる場所から、旅して来ます。なので段々と此処のことを、都と呼ぶ者が現れました。それが広まり、世界中の僧侶たちは此処を都と呼ぶのです。」
「つまりオレ達の思ってる都と三蔵さん達の言う都は、別物ってこと!!!」
「そうなりますね……」
「なんて……無駄足………………」
ケルは膝から崩れ落ち、横たわる。凹んでいるのは、明らかだった。門番は、モモに確認をし始めた。
「貴方がたは、どちらから旅を?」
「えぇと、おそらくここから南東の山々の方から。」
「なるほど。道が有りませんでしたか?」
「一応。山の住民たちには、道なりに進めば到着すると言われたんですけど……」
「けど?」
「道が無くなってて……」
「なんと!」
「砂漠に飲まれてしまってるみたいで。」
「あぁ!なるほど!!!」
門番は至極、納得といった顔をした。
「いろいろな事が重なった様ですね。確かに道なりに進めば都に着きます。それが浸食されてしまい砂漠に入り、此処を都と呼ぶ三蔵法師さまと出会い一緒に来たと。」
「そう……なりますね…………」
「本来、何の準備もせずに砂漠に入ろうとする者は居ませんから……」
「法師様の悲鳴が聞こえたので。」
「砂漠の件はこちらに非が有りますから、再配置時に調整します。ご迷惑をおかけしました。」
「いえいえ!ただ、他の人たちの為にも、よろしくお願いします。」
モモたちの話に、三蔵も話を始めた。
「申し訳ありません。私たちのせいで、とんだ無駄足を踏ませてしまい。もっとちゃんと話のすり合わせを、しておけば……」
「確かに……でもまぁ、結果的に法師様をここまで無事にお連れできたので!」
「その点も、大変ありがとうございました!」
「いえいえ!」
モモはケルを起こすと、門番に尋ねた。
「あのー、本来の都ってどこに有りますか?」
「それなら、ここから南西にあります。」
「分かりました。ありがとうございます!」
「待ってください!先を急ぎたいでしょうが、少し休んで下さい。」
門番は門の前の大きなテントへと、みんなを案内した。そして中で、モモたち怪我人の治療を行った。特別な薬なのか、みるみる傷に効いていった。そのまま一晩を過ごすと、傷も疲れもすっかり無くなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます