サんにんめ

 門の前に三蔵法師一行と門番が並び、本来の目的地を目指すモモとケルを見送ろうとしていた。

「この道を道なりに進んで森を抜ければ、本来の都へ通じる道に繋がりますので!」

「分かりました!」

「では、お達者で!」

「ありがとうございますー!」

モモとケルの姿が消えるまで、三蔵たちは見送った。見えなくなると、今度は門番が三蔵たちを見送る番になった。三蔵たちは大きな門の前で、横一列に並び旅路を思い出していた。

「長い……長い旅でした…………」

「ひゃー、キツかった!」

「ブー……ブー」

「大願成就で常駐…………」

門番が、声を掛けた。

「皆さま、ご苦労様でした。しかし、これからも修行は続きます。中でいろいろと、学んでいきましょう!」


――――――――――


「ハァ……」

「そう落ち込むなよ。」

「だってよ…………」

「言わなくても分かるよ。」

「無駄足ーーー!!!」

「まぁ、強い敵と戦えて、技も試せたんだし良いだろ?」

「…………ヘイヘイ……」

「…………………………」

森の中を歩く二人、モモとケル。修行僧たちにとっての都から、本来の目的地である都を目指して森を進む。外敵の侵入を防ぐためか、かなりの入り込み具合であった。道なりに進みつつも、数日がかかる程だった。

「てかさ、何で街の中に入れてくれないんだろな?」

「何度も言っただろ?認められた人しか入れないんだよ。」

「だからって、外のテントか???」

「しょうがないさ。」

「…………………………」

「なんだよ?まだ文句か???」

モモの質問を無視して、ケルは走る。

「出口だーーー!!!」

「えっ!本当だ!!!」

鬱蒼と茂る木々の先に、光が差す広い空間の様な物が見えた。二人が走って辿り着くと、そこには平野が広がっていた。辺りを見渡すと、進んでいる道の先に建物の群れが見えた。

「アレか!」

「遂に着くぞ!都!!!」

二人が道を駆けていくと、都に繋がる別の道と合流していた。合流地点には、小さな看板と人影が一つ。

「誰か居るぞ!」

「誰だ?」

「………………」

「………………………………」

「「あぁっっっ!!!」」

その人物に気づき、二人は声を上げた。そして向こうも、モモとケルに気が付いた。

「随分と来ルのが、ゆっくりしてルな?」


――――――――――――――


門番の言葉に押され、三蔵たちは進んでいく。光り輝く都へ歩んでいく。一歩一歩とこれまでの旅路を噛み締めながら、ようやく辿り着いた目的地に到着しようとしていた。あと少しという所で、悟空は立ち止まった。それに気づいた三蔵が、声をかける。

「どうしたんですか悟空?」

「………………」

「悟空???」

「………………………………」

「………………」

「…………………………………………」

黙る悟空に、三蔵は話を始めた。

「行きなさい。」

「へっ!?」

「モモさん達と、行きたいのでしょう?」

「………………でも………………」

「私たちの事は、気にしないで下さい。此処は安全ですから。」

「お師匠サま……」

「それに、全てが終わればまた此処に来て修行すれば良いんですから!」

「おら……おら…………」

悩める悟空に、三蔵は言葉を続ける。

「これまでの旅で、貴方は十二分に働いてくれました。少しくらい旅路を外れて動いてもいいでしょう。」

「でも……」

「それに、ホラ!」

「えっ!!!」

三蔵が手にする物を見て、悟空は驚いた。いつも頭に着けていた金の輪っかが、いつの間にか移動していたからだ。悟空は自身の頭を触るも、無くなっていたのだ。

「これで、貴方を縛る物は有りませんよ?」

「………………ぉ師匠サまー!」

「泣くんじゃありませんよ……」

「おら!おら!!!」

悟空は泣くのをやめて、後ろに宙返りで三蔵たちから離れた。

「おら、もっと旅したい!旅してわルい奴を懲らしめたい!!もっと強い奴と戦って、もっともっと強くなル!!!」

「素晴らしい考えです。」

「だから、修行は少し待ってください!」

「えぇ、待っていますよ。」

悟空は背中の如意棒を取り出して、思いっきり握った。全身が光ったかと思うと、その光の全てが如意棒へと乗り移った。そして光が収まると、如意棒を三蔵法師へと差し出した。

「お師匠サま!これを預かっていてくだサい!」

「如意棒ですか?」

「えぇ!しかも、おらの使える妖術が全て入ってます!」

「それだと、苦労するのでは?」

「いいんです!零から、空っぽの自分で強くなルつもりなので!」

「そうですか……」

「また此処に戻ってくれば、元に戻りますし。」

「では、待っています!」

「必ず戻って来ます!!!」

「いつまでも……待っています!!!!!」

「はい!」

いつの間にか、三蔵は泣いていた。後ろの猪八戒と沙悟浄も、泣いていた。

「ブー、寂しいブー!」

「泣くなよ〜」

「忠臣の友人、別れの定め!」

「二人の事、頼んだぞ沙悟浄。」

悟空はピョンッと飛ぶと、モモ達が進んだ道の上の木々に着地した。

「それじゃあ、行ってくル!」

「「「「頑張れーーーー!!!!」」」」

三蔵法師・猪八戒・沙悟浄・門番の応援を背に、悟空は森の上を駆け出した。


――――――――――――


「悟空さん、何でここに!?」

「「ええぇぇーーーッッッ!!!」」

モモとケルは、大いに驚いた。

「なんでオマエが、来るんだよ!」

「別に良いだろ?一緒に行けば、もっと強くなれルだろうし。」

「おいモモ、どうすんだよ!」

「お供すルけど、良いよな!」

モモは驚きながらも、笑顔で答える。

「じゃあ、よろしく!」

「しゃあーー!!!」

「悟空さん、頼りにしてますよ。」

「あー、そうだ。言うの忘れてルわ。」

そう言うと悟空は、少し離れて挨拶を始めた。

「えー、押忍おら、斉天大聖孫悟空です。けど、それは三蔵法師のお師匠様の元へ置いてきました。名前と能力を持たない、ただの修行者。今は空っぽの孫悟空という事で、クウと呼んでくだサい!」

「クウ、良いなぁ!」

「以後、よろしく!!!」

「お願いしまーす!」

モモとクウが仲良く挨拶していると、ケルが割って入る。

「ちょっと待ったー!」

「なんだよ。」

「オレは猿のオマエを、認めねぇぞ!」

「大将のモモが認めたんだから!文句あルかよ?」

「二人で旅してるんだから、モモとオレは同等ですー!」

「ヘッ!知ルかよ〜」

ケルとクウの言い争いに、モモが割って入る。

「はいはい、喧嘩すんな……」

「おい!コイツ仲間にすんのかよ!」

「するよ。」

「なんで???」

「仲間に入りたいって言うし、強いのは間違いないし。それに……」

「それに?」

「桃太郎のお供、何がいるか忘れたのか?」

「…………………………あっ……」

「犬の次は、猿。これは変えられないんだよ。」

「クッソー!世界も認めんのかよ〜」

モモとケルの会話に、クウは口を挟む。

「まだ納得すルの無理そうか?」

「あー、大丈夫大丈夫。」

「よし、じゃあ、都まで競走だ!!!」

「待てよクウ!」

「ズルすんな猿ー!」

3人は一路、都へ向かって走り出す。


遂に辿り着く都で、鬼ヶ島の情報は得られるのでしょうか。1人と2匹、いや3人組の運命や如何に………………

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