第18話 後悔と反省
「ゼクス・・・お前は知ってたのか?」
「まぁな・・・。
さすがに、俺も頼まれてのにかばい切れないとは言いだしにくくてな・・・。」
ゼクスの妹・・・ローレンス嬢から受け取った手紙に場所は書かれていないが大図書の館長の知人の元にいると言う事。
知識欲があり大図書で仕事して得た知識などを代価に居候してるとあった。
館長から王都の様子を聞きに戻るタイミングは見計らうとあるが・・・。
「俺は、ロイエの事を何もわかって無かったな・・・。」
「なまじ何があってもするりと潜り抜けてるから安心感もあったんだろう。」
「・・・待て、お前何故ロイエの事を詳しい?」
「ちょっとね。
君の妹は特殊な立場なんだよ。
今回の件で王もそれを口にすると思うよ。
それがあってアリアナも君の妹を護ると言う意味で側にいたからね。」
ゼクスの言葉は意味が分からない。
ロイエが特殊な立場?
そんな事、あの子は一度も・・・。
「あぁ、言っておくがロイエ自身知らない事だ。」
「なら、何故お前は知ってる・・・?」
「立場上に知ってると言おう。
妹さんの特殊な立場はごく一部の者しか把握してない。
で、それを知ってる人達は王太子の勘違いに絶叫しちゃうわ気絶して倒れるわ・・・。
すごい、混乱だったさ。」
その時を思い出したのかどこか遠くを見ながら言うゼクスに俺には到底理解出来ない。
ロイエの知らない情報もそうだが・・・その情報が一部にしか知られていないなんて。
本来なら開示して護衛をつけるなどすべきではないのか?
いや、それは俺の願望か・・・?
「今言った事は全部本当だよ。
多分・・・君も近々、それを知る事になると思う。
ロイエにも知らせないといけないけど・・・彼女、今どこに?」
「・・・大図書の館長の伝手を頼ったと。」
「ヴィナ様の?
・・・噂の幼馴染かな?」
「知ってるのか?」
「知識欲があって大図書の常連でどこかの森に籠ってるハイエルフな幼馴染じゃないかな?
なるほど、かの方は知識を提供すれば助力を得られると踏んだのかな?
大図書の司書たる妹さんなら確かに引き受けるだろう。」
「・・・俺よりもロイエの事を知ってるな。」
「アリアナがよく話に出すからかな?
まぁ、君の場合は双子の方で手が一杯って感じだし・・・。
妹さん、家を出てるんだろう?
一緒にいる時間も取りにくいと思うんだけど・・・。」
ゼクスの指摘にそれもそうだと考えるが・・・。
あの子が家を出たのは家から学園への通学に時間がかかるからだ。
当初は学園敷地内の寮だったが・・・満員で学園敷地外のアパートメントに暮らしている。
正直、貴族令嬢が住むには警備面で心配だったが・・・。
大通り沿いで巡回も多かったのもあって両親も許可を出したのだったな。
一応・・・ロイエと同じ貴族も利用してるが。
騎士科の男共ばかり。ごく少数に女性騎士を目指す者もいるがそれでも数える程度。
ほとんどは平民や商人の者が利用している。
正直・・・ロイエが貴族令嬢と見られて無いようで不安がある。
問題を起こすよりはいいが・・・。
貴族社会では汚点とされてしまう。
いや、それでも・・・。
「・・・お前無駄に考えすぎだし視野が狭まりやすい。」
「ぐっ・・・!!」
考え込んでいればゼクスに頭を叩かれるのに少し視界が揺れる。
「軍部では視野は広いが家族の事に関してはすぐに視野が狭くなる。
手の掛からない子より手の掛かる子の方が印象に残りやすいが・・・妹さんに関してはさすがにまずい部分もあるだろう。」
こいつは、いつも俺が考えすぎてしまえば意識を戻し悪いとこを指摘してくれる。
それによって俺も成長出来てたが・・・。
「・・・言葉も返せん。」
いままで、プライベートにまで指摘される事は無かった。
今回の件はそれを踏み越えて指摘してしまうほどヒドイのだろう。
「赤貧っぷりにアリアナが家の者を使って調べていた時もあってな・・・。
さすがに生活費に関しては手を打つのはマズイだろ。」
「っ、あれを知らせたのはお前の家だったのか!?」
ゼクスの言葉に下がっていた顔を上げる。
ロイエが学園に入って1年ぐらい経ちそのような手紙が家に届き失態に血の気が引いたものだ。
あの時にロイエを後回しにし過ぎだと両親もっとロイエにも気を配るべきだと話し合ったのに・・・。
結局はその気になってただけか。
「・・・過ちに気づいてるがそれに対する認識の維持。
それって難しいものだよ。
特に習慣的に身に染みてしまってるのだから。」
ゼクスの指摘は正しい。
長い期間、ずっと我が家では双子を護り続けていた事。
双子自身で自衛が出来る様になってからはロイエとの時間が取れるだろうと考えていたが・・・。
問題を起こし始めそちらの対応に時間が取れなくなった。
ロイエならわかってくれると後回しにし続けた結果が今だ。
「まぁ、俺も妹がいるから長男として下の兄妹を護るのは当たり前だと思う。
両親だって下の子を護るのが長男の役目だとも言っていたしな。
多分だけど・・・お前、妹さんに無意識に求めてたんだろう。」
「求めてた?」
「あぁ、長女の役割。
さっき、言った下の子を護る役目だ。
お前の妹でもあり長女の立場でもある。
で、お前は長女の役割を無意識に求めてたんじゃないのか?
双子の尻拭いで奔走してたしな。
あの忙しさを見れば他にも人の手を借りたい。
両親は慰謝料、修繕費と言う金銭の工面と謝罪で奔走していた。
お前は双子を抑えていたが同時に抑えるのは最初の方手を焼いていただろう?」
「それは・・・。」
「猫の手も借りたいって状態でそれが長く続き習慣染みてしまったんじゃないか?
まぁ、推測だしな。
習慣として身についた事を直すのはなかなか難しい。
意識を継続させないといけないからね。」
「あぁ、そうだな・・・。」
俺からゼクスに返せるのはその言葉だけだった。
・・・両親も現状を知らされてないのだろう。
ましてや、ロイエからの手紙は定期の手紙で元気なのを知っていたからな。
手紙が届く頃合いではない限りロイエが王都に居ないのは知る事はないだろう。
俺の方から・・・両親に手紙を書かなければ。
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