第16話 遅すぎる情報

「ローレンス令嬢、弟達を何故捕縛をっ!?」


双子をお兄様の手によって確保の手紙を出せばすぐさま動いてくれましてよかったですわ。

ですが、メレディス家の長男が出張って来てしまいましたね。


「私が所用で領地に戻っていた間にあった騒動をご存じでしょうか?」


「王太子の婚約破棄の件ですか?

ですが、あれは・・・。」


あぁ、詳細までは知らないのですね。

双子と私が婚約破棄をされた件は関係無いと思ってるようですが・・・。

そもそも、私は現場に居りませんし。

この様子ではロイエの事も知らないのでしょう。


「勘違いであなたの妹。

ロイエ・メレディスが王都追放されました。」


「は・・・?」


理解出来ないとばかりに固まる彼の様子を眺める。

王太子バカの婚約破棄は知っていましても私が現場に居ないのは知らないようですね。

勘違いで別の令嬢を王都追放したなんて王家の威信的にも問題ですし・・・。

どちらにせよ現場に居りました生徒達が見てらっしゃいますから正確な情報も次期に各家にも届くのでしょう。

それまでは私が婚約破棄されたと言う勘違いは続くのかしら・・・。


「ご存じでしょうが、あの子の髪と目の色は私と同じでして・・・。

勘違いにしても婚約者の居ない令嬢を己の婚約者と誤認するとは嘆かわしい事ですわ。

あぁ、あなたの双子の弟はロイエが勘違いされてるのを知って放置したからこそですわ。

ただでさえ騒動の元ですのにが力を持ってるのです。

危険人物として隔離しておくのが妥当では?」


「し、しかし・・・!!!」


心当たりはあるでしょう。

あの双子が壊した物の賠償金や修繕費でメレディス家は首が回らない時期がありましたし・・・。

その時にロイエも断髪せざる得なかったのですよ?

貴族令嬢の髪は魔力量が少なくっても平民と比べて質は遥かに良いのですから。

素材として魔力のこもった髪を利用する魔道具師にとっては高値の取引になるのですよ。


まぁ、その時に目の前に居る彼が双子を説教して手綱をある程度は握れるようになりましたが・・・。

それでもあの双子は何度も騒動を起こしてるのですから危険視は続いておりますのに。

もっとも、長男の前では借りてきた猫のようにおとなしくしてますから彼も危機感が無いのでしょう。


「言い訳無用ですわ。

メレディス様、双子の尻拭いをし過ぎてあの双子が今まで責任を持てなかった結果でしてよ?

双子がまともな判断をしなかった結果がロイエの王都追放になります。」


そう、会場に居て何もしなかったのは双子なのですから・・・それに、あの双子。

自分が起こした事による影響を一切知らないのも問題なのです。


「ロイエが断髪した理由が自分達である事すら知らないなど言語道断ですわ。

髪に魔力は宿りますからそれを短くするなど貴族令嬢として落第の烙印を押されてしまう状態にした元凶がですわよ?

自覚させなければ国に災いをもたらす害獣として処分が下りますわ。」


国としての判断の側面もあると突き付ければ今までの事を考えてさすがに強くは言えないでしょう。

身内可愛さにしてもその身内に害をもたらしている場合、彼はどのような判断を下すのか・・・。

それもまた、確認する対象になっていますわ。


「あの部屋に居ればこれ以上、騒動も起こせませんし決定が下るまでは身の安全の確保も出来るのですよ?

どれだけ薄氷の上に立ってるか己の立場を自覚するべきでしてよ。」


あの双子はきっとぶーぶーと文句しか垂れないでしょうが・・・。

あぁ、そうでしたわ。

彼にも手紙がありましたのをすっかり忘れていました。


「メレディス様、こちらヴィナ様を経由して届きましたロイエからの手紙です。

ご両親宛のもございますわ。

あぁ、私はこれから双子にロイエの手紙をお届けしに行くだけでしてよ。

それでは、失礼いたしますわ。」


そのまま、呆然としているメレディス様を置き去りに私は双子が軟禁されている部屋へと足を進めましたわ。

それにしても、案外大人しいですわね。

もしや・・・現状を理解し反省してるなんて事は・・・。

いえ、双子の性格上あり得ませんね。


ですが、ロイエに懐いてるのですから無事かどうかは置いておいて迷いの森に居ると言えば少しは反省してくれるでしょうか?

ショックのあまりに倒れ・・・ませんわね。

あの双子の性格上それはかけ離れ過ぎてましたわ。


「どちらにせよ。

ロイエの事を知らな過ぎのようでしたわね。」


双子も長男も・・・あの子なら大丈夫と思ってたのでしょう。

ですが、ロイエもそんなものだと思ってるのも問題でしてよ?

あの子はもっと主張すべきですが・・・。

性格上無理かしら?

自分の時間が取れなくなるのが嫌だとか言いそうですわね。


双子の不始末片付けるのに奔走してた時期のせいでそう言う考えになってしまったようでしたし・・・。

いえ、そうではありませんね。

ロイエの場合は本人自ら動く事が無いからこそ周りが関わっていかなければ関係が保てない。

あの子の人間関係も薄氷上のようなものですわね。

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