第8話 技術とは

「・・・良くこれだけの味が出せたな?」


「異世界の料理やば・・・。」


「野菜のうま味とか出ただけですが?」


調味料が少なくってもやり方なんていくらでもある。

確かに、前世だと調味料とかいっぱいあって味のレパートリーも豊富だったけど・・・。

なければないでやりようはいくらでもあるんですからね!


あの後、リィンさんが館長のところに転移魔法で飛んで女性司書さんに買い物を頼んでくれたそうで・・・。

着替えとかカトラリーも1人分しかないだろうと色々と買いこんでくれたのでとっても助かりました!

おかげで食器無しで鍋から直接食べる事とかにならずに済みましたよ・・・。

さすがにそれは行儀が悪すぎますからね。


「ふむ、野菜のうま味か。」


「煮込むと野菜の甘味とかおいしい部分が出てくるんですよ。

そう言う部分をダシって言って・・・。

この世界で言うコンソメスープみたいなものです。」


「なるほど、アレもこうやって煮込んで作られるのか。」


「はい。ただ、今回はコンソメスープみたいに本格的なのじゃないですけど。」


根野菜と豆とベーコンの具材でトマトの果汁と野菜の水分だけで作ったトマトスープ。

コカトリスの肉で作ったからあげ2種。

卵とお酢で作ったマヨネーズを使ったごろっと感のあるポテトサラダ。

割と作れた結果がコレです。

メインは備蓄されてたパン。


「それにしても揚げるって不思議だね。

油で煮てたけど・・・あげるってどこから?」


「多分、中まで火が通ると底に沈んだのが浮き上がって来るからじゃないですか?」


「ふむ、事象からの名付けか。

お前にとってそれはそう言うものと認識しかしてないようだが・・・。」


「逆に聞きますがあなたにとって風の現象説明付きます?」


「・・・なるほど、感覚的に覚えたが故に言語化が難しいと言うものか。」


風じゃなくっても呼吸の仕方でも呼吸は呼吸だろ?

って、感じで返すんだろうなぁ・・・。

でも、そんな感じで身に着けた知識や常識だからなんとも言えない・・・。


「このからあげ・・・噛むたびに口の中で肉汁があふれておいしいっ!」


「今回塩で下味付けたのと下味付けてないプレーンの2種類。

プレーンの方はそのままでもお好みでレモンを絞っても良いですよ。」


「変わるのか?」


「さっぱりとした感じになります。」


「どれ。」


リィンさんが試しにカットされたレモンを絞ってかけるのを見つつパンをスープに付けて食べる。

この世界のパンって硬いよね・・・。

酵母菌無いっぽいから作ろう。

林檎を瓶に水と一緒に入れて放置すれば大丈夫だったはず・・・。

直射日光は避けるんだっけ?


「どうかした?」


「やわらかいパンの作り方を思い出してただけです。」


「?パンは硬い物だろう?」


「やわらかいパンなんてある?」


「くそう、異世界常識・・・っ!」


このかったいパンが常識なリィンさん達にはわかるまい!!

前世のあの柔らかいパンを何度夢見た事かっ!

まぁ、今世は割とラスクにして食べてたから硬さなんて無視してたけど!


「異世界では料理技術も進んでたか。」


「どうでしょう?

他国の調理方法とか取り込んで進んでる部分もあるので。」


「他国の交友もあるのか。」


「私が生まれる前・・・祖父母の幼少時代だから7,80年前は世界的戦争がありました。

とはいっても経験者の祖父母の伝え聞きになります。

終戦時代が祖父母の幼少期になりますので。」


「ふぅん?そこから国交とか意外だね・・・。

戦争後はギスギスするものだろう?」


「他国でやっばい兵器を故郷に落とされてそれがきっかけですかね。

その兵器を使用されて障害を持った方や草木が生えなくなったりと弊害もいっぱい出ましたので。

で、世界中その被害を知って戦争止めよう!

って、流れから条約を国同士で結びあって終戦。」


「うっわ・・・。その兵器の情報はダメだよ?」


「ですよねぇ。

ちなみにその兵器の動力源は医療技術やエネルギー生産の為に転用されてるんですよ。」


「・・・怖い物知らずか?」


未知の物と遭遇したとばかりの顔でこっちを見るリィンさんとセラフィナさんにそうだろうなぁと考える。

大量の死者を出した兵器が今では医療技術やエネルギー生産に転用されてるとか・・・。

理解出来ないよね。


「そう言うのを聞くと結局全部使い方次第って思えて来るんですよ。

料理で使う包丁だって人を殺そうと思えば殺せるんですし。」


「極端だが・・・まぁ、的は射てるな。」


「何と言うか・・・。

異世界やばい。」


「戦争は技術促進にうってつけなんて言葉もありますよ。

命が掛かってるから技術促進が飛躍して兵器開発が進むって思うんですよね。」


「あぁ・・・。

その考えは分かるな。人は安寧な時よりも生存が脅かされる事で底力を出すとも。」


「なんだっけな・・・。

人間は普通は少しの力しか出せないように脳がリミッターをかけてるって話聞いた事あります。

リミッターが外れるのは生死が掛かった時でそう言うのを火事場の馬鹿力って言う言葉ありますね。」


「ほぅ、たしかに冒険者で死地に追いやられた事でそう言ったのを発揮するのもいるな。」


「とは言ってもそれが出ると肉体への負荷がとんでも無いから普段は脳がリミッターを掛けてるそうなので後日は寝込みます。」


食事を取りながら異世界の過去の話、技術促進、火事場の馬鹿力の話とか話題がコロコロ変わりながら楽しんだ。

前世の話とか今まで出来なかったし気を付けてたから言えるって言うのは気楽でいいや。

下手に言えないから口にする前に一回脳内で大丈夫か考えないといけないって大変だったからなぁ・・・。

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