第7話 ご機嫌な斜めな・・・

「で?ロイエは無事なんだよね?」


「ふぉふぉっ、リィンのところにおるから大丈夫じゃよ。

どうやら、セラフィナがロイエは転生者だとリィンに教えたそうじゃ。

ソフィアは知っておったのか?」


目の前に居る人の姿をした人ならざぬ者へとそう言えば虚を突かれたように瞬きを繰り返す。

何に対して意外じゃったのかのぅ。


「なるほど、異世界の知識は確かにリィンの興味は惹かれるだろうね。

なら、大丈夫そうだ!」


ロイエの安全が確保できた事に嬉しそうに笑うソフィアにこれでちと安心かと考える。


「それで?何時まで閉鎖にするのかのぅ?

司書達の出入りは許可して利用者は締め出すなど・・・。」


「だーめ!ロイエを勘違いで追放したんだよ?

ロイエの価値観を教える為でもあるんだし。

今後、こんなバカな事をされても困るからね!」


本当にこやつ、気に入った者に対しては過保護じゃのぅ。

まぁ、それもしかたないのか・・・。

ロイエの魔力は量は少ないが質は大分良いからそれに対して心地よく思い手元に置いておきたくなるのじゃろう。


「まぁ、今まで秘匿にしてたのもあるが・・・。

しかし、教えてしまって良いのか?」


「いーの!双子もさ~、いー加減に自覚して欲しいんだよ?

あの2人のやらかしのシワ寄せでロイエ苦労してるのにぜーんぜん理解しないんだもん。

討伐で良くない?」


「ロイエは望まぬじゃろう?」


「そーだけどさぁ!いい加減理解すべきなんだよぅ。


それが出来ないならいらない。」


表情豊かだったのが拒絶の言葉の時だけ無表情になるのに目を見張る。

ソフィアがここまで拒絶するとは・・・。

これはちと厄介事になりそうじゃ。


「能力がすごかろうが術者がダメダメじゃん。

力を持つ者としての自覚ないし、その影響力も理解しない。

そんな奴等の尻拭いでロイエのあの髪切ったんだよ!?」


「あー・・・。」


そうじゃった、ロイエの髪を切る事にソフィアは大層怒っておったな・・・。

その元凶たる双子に良い感情も抱いておるわけなかったわ。


「なーのーにー!!!!

あの双子ってばぜーんぜんわかってない!!ロイエの髪が短くなったってドジって髪短くしちゃうとかどんくさ~い!(笑い)なんて馬鹿な事言うんだよ!?

むーかーつーくー!!!」


子供の様に癇癪を起す様子に溜息をつく。

一番はロイエをないがしろにする元凶たる双子かのぅ。


「ソフィアよ。ロイエは双子の姉じゃからあんまり手を出すのは・・・。」


「手は出さないよ~。王族が勝手にするでしょ?

次の館長はあの子って決めてるんだから。

その辺ちゃーんと理解してもらわないと。」


やれやれ、ロイエに戻って来てもらったらご機嫌取りしてもらわんといかんのぅ。

まぁ、双子の自覚を促すのには良いじゃろうが・・・。

なにぶんソフィアは人間の価値観が違うからやりすぎそうで怖いわ。


「ソフィアよ、わかっておると思うが・・・。

お前さんとわし等の価値観の違いを考えての手加減じゃよな?」


「・・・。」


聞いてみれば忘れてたと言わんばかりの表情に溜息をつく。

ロイエが戻って来るまでわしがストッパー役しないとやりすぎそうじゃわ・・・。


「あー・・・うん。そこはヴィナが止めてよ。

価値観の違いは分かるけどさ・・・。

どれぐらい違うかってわかんないし。

今までの館長の立場って君みたいな長命種だったしねぇ。」


「ほぅ、それは初耳じゃな。

とは言っても・・・わしもハーフエルフじゃから人間の価値観微妙じゃしのぅ・・・。」


「そうだね。君も長命種だもんねぇ。」


わしもあまりソフィアに言えんわ。

ストッパー役としても価値観人間よりもエルフよりじゃし・・・。

それを考えるとストッパー役向かん・・・。

人の事言えんかったのぅ。

代わりのストッパーを用意せんとまずいわ。


とは、言っても・・・。

こやつのストッパーが出来る奴なんぞおるのかのぅ?

歴代の館長お気に入りの為にしか動いてこなかった奴に言葉が届くのおるのか?

目の前に居るソフィアの今までの事を考えて思考するがやはりストッパーになりえる存在がいないのに頭を抱える。

本当にどうすれば良いんじゃろうか・・・。


ロイエの為として言葉を言えばいいがそれが間違っていたら発言した奴殺しそう。

ストッパー役探すにしても本気吟味せんといかんし・・・。

王室での事実確認が終われば呼ばれるの確実じゃから時間もあまりないわ。

となれば・・・。


「・・・ソフィア、1つ提案なんじゃが。」


「なぁに、ヴィナ?」


「処罰は延期にしてはくれんか?」


「・・・何で?」


あからさまに不機嫌になる様子に言葉を慎重に考え紡ぐ。

わしも間違えたら癇癪起こされそうじゃし。


「ロイエがどうしたいかと確認してからの処罰が良いと思ってのぅ。

お前さんのやりすぎでロイエに悪評なんぞ着いたら困るじゃろ?

あの子は次期館長である事も知らんのに知ってて黙ってたなんて周りが言い出したら、難癖をつけて来るじゃろうし・・・。」


「えー・・・馬鹿なの?」


「嫉妬からそう言いだす奴おりそうじゃろ?」


「まぁ・・・前に実際いたから否定は出来ないかな?

んー、そうだねぇ。人間の価値観わかんないしやりすぎてロイエに悪評着いたら困るね。

うん、そう言う事ならヴィナの提案は仕方ないかな。」


「さすがにわしも人間の価値観とズレとると自覚しとるからのぅ。」


「僕なんて指摘されなきゃ忘れるけどね!」


「お前さん関わるのが一部じゃし人間と関わるとしても王族だけじゃろうが。」


「あははっ、そうだねぇ。

まっ、王城に呼ばれるまではゆっくり待つよ。

あっ、リィンとの連絡は取りやすいようにしておいてね?」


「使い魔を使うから安心せい。」


「うん、ロイエの事は定期的に聞き出しといてね~。」


ソフィアがそれだけ言い残して消えたのに息を吐く。

やれやれ、あやつが癇癪を起さずによかったわ・・・。


「まったく、国唯一のダンジョンの主の癇癪は怖いのぅ。」


ソフィアのダンジョンの上に王都が出来たようなもんじゃから下手したら王都が滅ぶわ。

王太子もよりにもよって何故、勘違いの相手がロイエじゃったのやら・・・。

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