第2話 館長は神っ!

側近2人に両腕を掴まれて会場を引きずり出された上に王都からほっぽり出された。

とりあえず・・・会場にいた弟達、お前等姉の不幸が楽しいの?

相変わらずの愉快犯と言うか快楽主義と言うか・・・。

周りからどう見られてるか自覚すべきトラブルメーカーツインズよ。

自覚してないと大変な事になりそう・・・学生だから許されてるけど卒業したらアウトだよ、弟達。


今と関係ない事つらつら考えてたけど・・・。

はー、本当に・・・。


「して?そこの馬鹿共何をしておる。」


聞きなれた声と同時に側近2人が植物の蔦で縛られるのを見上げる。


「んな!?」


「誰だ!?」


「ロイエ何事じゃ?」


「公爵令嬢のアリアナ様と勘違いされて王太子に婚約破棄の国外追放告知されて同じく勘違いしてるそこの側近2名に放り出されたところです。」


「うむ、ロイエものほほんとしてるが言ってる内容がトンデモナイわ。

アホか、王太子は?何故、子爵令嬢のロイエを公爵令嬢と勘違いしておる?」


館長が馬鹿か?って視線を側近2名に向けるのに頷いてしまう。

だって、本当の事だし。


「貴様、何をする!?」


「勘違いで追放なんぞに加担する愚か者共がわめくでないわ。

して、ロイエどうするかのぅ?

勘違いとは言え戻るのもちとまずかろう。」


「あー・・・やっぱりですか?」


「そもそも・・・なんで、婚約者の顔知らんのじゃ?

もう廃嫡で良いじゃろ。」


「館長が投げた!?」


あの館長が!?のほほんしてるおじいちゃんがぶん投げるとか本当にどうしたの!?

思わず館長の言い方に慌てれば遠い目して現実逃避してるのに怖くなった。

いっつもふぉふぉっなんて笑ってるおちゃめなおじいちゃんがどっか行っちゃってるぅ!?


「はぁ、わしこの馬鹿共を王城に連れて王に報告をしてくるが・・・。

ロイエ、スマンがわしの幼馴染のところに送るかのぅ。」


「館長の幼馴染?」


「うむ、国外じゃから王太子の馬鹿発言も守ってる事になるから安心じゃ。

ちょっと待っておれ、手紙をしたためるからのぅ・・・。」


そう言い魔法で紙とペンを準備して手紙を書き始める館長。

正直、行先の人がどういう人かわかんないから不安だけど・・・。

まぁ、ここに残って魔物に食われるよりはマシだよね!

自衛能力?軍人家系でもない令嬢に戦う能力があるとでも?

魔力量も少なくって戦うなんて無理だよ!

生活魔法ぐらいしか使えないもん!


「よし、これで良いぞ。

わしの幼馴染で・・・ちと、知識欲が強くてのぅ。

大図書の司書をやっとったからあやつの知らん本の情報でも与えれば問題ないぞ。」


「猫にマタタビかな?」


「うむ、まさにそれよ。」


大図書利用者によく居るタイプだぁ。

思わず今まで大図書で会った研究者とか知識者を思い浮かべる。


「えぇい!!!罪人に手を貸すとは貴様も仲間か!?」


「・・・愚か者はちと黙っておらんか。

この子は公爵令嬢ではないわ。

はぁ、とんでもない勘違いをしおってからに・・・。」


「あっ、館長ー。明日の約束破ってごめんなさいってソフィアに言っといてください。」


「なんじゃ、約束か?」


「おいしそうなレシピあったから作ろうって約束してました。」


「そうか、そうか。王太子の馬鹿発言でリィン・・・。

幼馴染のところにおると言っておくわ。」


「リィンさんが行先の方?」


「うむ。」


名前知らずに行くとこだったよ!

知れてよかったぁ・・・。

知らずに行ったら不信に思われそうだもん。

でも、行くにしてもどうやってだろう?


「あぁ、わしが転移魔法で送るから心配せんでえぇぞ。

そもそも、未来の国の中枢を担うものが公爵令嬢の顔も知らんとは馬鹿過ぎるわ。

それぞれの親も呼んで説教じゃ、説教。」


プンスコと怒る館長にこれこそいつもの館長だと頷く。

うん、この感じだよね。

さっきまでの館長は幻だよね!

あんな館長見タクナイ・・・。


「そもそも、王太子と公爵令嬢の婚約は王命じゃからのぅ。

王の許可なく婚約破棄しおったのならお前さん等は王命に背いた反逆者よ。」


「「っ!!!」」


「あっ、忘れてたって顔だ。」


「馬鹿じゃのぅ。そんな反逆者をとっつかまえて文句言われる覚えはないじゃよ。

少しは自分のやった事がどう言う事か理解するんじゃな。」


館長の指摘に顔を引きつらせる2人から視線を外して館長を見る。

とりあえず行先は分かるけど場所が分かんないから聞いとかないと・・・。

家族への伝言は・・・いや、ツインズが現場に居たから問題ないかな?

さすがのあのツインズでも今回の件はちゃんと伝えると思うし・・・。


「館長とりあえず行先は分かったけど場所は?」


「迷いの森じゃよ。あそこに住んでおる。」


「死ねと!?」


迷いの森と言えば森の中を迷うので有名だし高レベルの魔物いるよ!?

死ぬからそんなところぉ!!!

なんでそんなところに住んでるの!?


「ふぉふぉっ、安心せい。わしの手紙があるから放り出される事はないからのぅ。

うまいもんを作って胃袋を掴めば問題ないわ。」


「まさかの・・・。」


「食をおろそかにしがちな奴じゃから有効な手じゃよ。

さて、ロイエよ。あやつのところに送るぞ。

なぁに、考えなしの王太子達を説教してから迎えに行くから安心するといい。」


「まぁ、館長がそう言うなら・・・。」


館長、出来ない事は出来ないってはっきり言うタイプだからなぁ・・・。

とりあえず、館長に任せれば大丈夫かな。

転移前にと送り先のリィンさん宛の手紙をしっかりと受け取ってから館長の転移魔法で送ってもらった。


「さて、わし等も行くかのぅ。

やれやれ、老いた身で面倒な事に巻き込まれるとはのぅ。

老体にはちときついわ・・・。」

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