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また次の日の学校で、僕は腫れ物扱いをされた。
いつもそうだったが、今日はもっと酷い。
きっと、僕が我慢ならずに犯罪を起こしたものだと勝手に推察して、確信しているに違いない。
なんて失礼な奴ら!
僕は決心した。
こんな輩に心を動かす必要は無い。
僕は無視をしてその日も本を読む。
すると、机をバン!と叩かれた。
僕の本がどっか飛んでいってしまう。
昨日の女子が、僕の机を蹴り飛ばしたのだ。
教室中が静まり返ったのを感じながら、僕は怒った。
すると、僕の数百倍くらいの勢いで、女子は怒鳴ってきた。こわい。
曰く、やっぱり僕が犯人だと推察して決めつけているようだ。
確かにチビ君は僕を虐めていた。
だから、動機は十分に思うのも無理はない。
だけど、そんな理由で犯人にされちゃ溜まったもんじゃない!
決定的な証拠は全部消したのに!
すると、急に女子は泣き始めた。
余程心配なのだろう。
この子、チビ君の事が好きだったもん。
殺したんだろ!と叫ばれた瞬間。
僕は頭がカッと熱くなって、目の前が真っ赤に染まった。
殺されてない!そう叫んだ。
女子は目を見開いて固まったのも気にせず、僕は続ける。
君が、殺されたなんて思っちゃダメだ。
彼は絶対に生きている。
こんな僕だって、彼が行方不明になったとあらば心配だ!
君だけでも、彼が生きてることを信じないでどうする!
僕は熱弁した。
僕が今までの生涯で発した言葉の中で、熱されていた。
マグマのようにグラグラ煮え立ち、だけど水流のように滑らかに出てくる。
女子はまた泣いた。
そして小さな声でゴメンと呟いた。
存外、素直な子なんだな。
その日は僕こそゴメンと言って終わって、家に帰った。
部屋の引き出しを開けて、マッチ箱を開く。
そこにはチビ君がいた。
僕は今日の出来事を話そうかと思って、止めた。 なんかダルい。
君、すごい心配されてたよぉ〜うへへ
と言うのは、なんか嫌だったのだ。
……ところで、何だか異臭がするな?
見てみると、枝豆が腐っている……だけでなく、糞尿が放置されていた。
きたなーい。うへえ
僕は素直にそう思った。
でも、トイレがないからしょうがないか。
うんうん、許してあげよう。
仕方の無いことで怒鳴ったって、何もならないからね。
僕は騒ぐチビ君を押しのけて、中をキッチンペーパーで拭いた。
ちょっとは綺麗になっただろう。
今度はもっと綺麗にするために、アルコールスプレーとか買おっかな。
僕はそう考えていた。
この間、僕はチビ君を無視してしまっていた。
つまりチビ君に隙を与えたって事だ。
気がついた頃には、チビ君はえっさほいさと壁をよじ登っていた。
いけない。いけない。
僕は人差し指で、そっとチビ君の体を戻した。
なんの抵抗もなく落ちてったチビ君は、すぐにのたうちまわる。
僕はそれを不思議そうに見た。
踊っているみたいだ。下手なブレイクダンスって感じ。
そして気がついた。
あ、そうか、チビ君ってば怪我しちゃったんだ。
小さい体のチビ君。でも体は人間だ。
だから僕みたいなガリの人間の微かな力で、骨折とかしてしまうんだ。
僕はそっとマッチ箱を閉じて、大きく笑った。
あー面白い。あー面白い。
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