第9話 アフロディテ

 グッドとラックは時空の歪みを出た。

「だいぶ歪みも通ったな」

「半分を超えてると嬉しい」

グッドとラックはいつものように機体を休ませるため、近くの星に降りた。星の民は、他の星と異なり普通に感じられた。電飾が光る町並み、お洒落な雑貨店、高級そうな毛皮の衣服を纏う通行人で溢れていた。

「楽しそうな星だ」

「どこを見ても色鮮やかだ。刺激的だ」

二人が見ると、民は髪をかき上げたり、頼んでもいないのに視線を送ったり、ポーズを取ったりした。

「うーん、どうも落ち着かないな」

「俺たちが見てるのか、俺たちが見られてるのか分からない」

二人は早足で町を抜けようとした。しかし、どこまで行っても町が続いていた。そして、どこの町にも同じように民がいた。

「見るな!」

「兄さん!こっち!」

二人は店に駆けこんだ。その店は香水が並んでいた。

「いらっしゃいませ~どの香水に致しますか?」

「違う!客じゃない!」

二人は店を出た。民から逃げるように向かいの店に入った。また店を出て、隣の店に入った。何度も繰り返し店を出入りした二人はある事に気が付いた。

「はあはあ…ラック、気づいたか」

「ああ。どの店にも同じ女性の張り紙があったな」

「あの方は、カリスマと呼ばれるスーパーモデルよ♪」

「「ひゃー!!」」

「何よ♪驚いちゃって♪」

二人は一目散に逃げた。

「はあはあ…驚いた」

「男が女みたいな恰好をしていた。あれは何だ?」

「さあ。あの化粧は派手だったな」

その時、星の民が歓声を出しながら、同じ方に駆け出した。二人も恐る恐る行ってみると、敷かれた赤い絨毯を歩く女性が民の声援にポーズで応えていた。

「綺麗だ」

「それを言うなら美しい、が良いんじゃないかしら♪」

「「出たー@#%」」

「そんなに大きい声出さないでよ♪あの方に迷惑でしょ♪」

「はあ!口を塞ぐな!」

「ごめんなさあい♪でも、ついてるわ♪あのカリスマを生で見てるのよ♪」

その時、女性が二人を見て、近づいてきた。

「きゃあ♪カリスマが目の前に…(失神)」

「あなたたち、ちょっといい?」

「え?僕たち?」

二人は全員の視線を受けながら、女性とともに車に乗った。

「あの、僕たちをどうする気ですか?」

「どうもしないわよ。私はあなたたちを見込んで頼みがあるの」

車が着いた場所に、ポーズを取る怪獣がいた。

「あれは、怪獣なのか?」

「最近現れたの。放っておいても害はない。でも不安でメイクが決まらないの。どうにかしてくれる?」

「任せておけ」

二人が車から降りたとき、あの戦艦が現れた。戦艦はいつものように鋼鉄の網で怪獣を回収していった。

「また怪獣を回収した」

「何が目的なんだ?」

「何だか分からないけど、解決したわ。突然ごめんなさいね」

二人は機体に戻った。

「この星は疲れる」

「行こう、兄さん」

グッドとラックは時空の歪みに入った。


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