第7話 ディオニソス

 グッドとラックは時空の歪みを出た。

「もういくつ歪みを抜けただろう」

「5つ目だ。そろそろ俺たちも酒でも飲んで休みたいぜ」

「酒は飲み過ぎると酒に飲まれるぞ」

「それくらい弁えるさ」

グッドとラックはいつものように機体を休ませるため、近くの星に降りた。この星の民は、酒を飲んでいた。そこらじゅうに開いた瓶が転がっていた。

「まさか本当に酒が飲めるんじゃないか?」

「ついてるぜ!」

二人は酔った民たちに絡まれた。

「お~い、一緒にのまないか!」

「酒臭い!離れろ!」

「もうなくなっちゃった。誰が飲んだんだ?お前か!」

「俺じゃない!離れろ!」

「ひどい奴らな~おい、行こうれ」

「大丈夫か?ラック」

「ああ。酒は好きだが、酒に飲まれた奴は嫌いだ」

「それは分かる」

二人は牧草地に来た。そこには樽が散在していた。

「これは酒の入っていた樽だ。ここから瓶に詰め替えるのだろう」

「おい、何か転がって来る!」

二人の前方から樽が転がってきた。二人は避ける必要もなく、樽は他の樽に当たって止まった。

「何事だ?」

「行ってみようぜ」

二人が行くと、豪快に樽から酒を飲む大男がいた。

「ぷはー。青空の下で飲む酒は美味いなー」

「樽ごと飲む奴は初めて見た」

「おや?客人か。一緒にどうだ?」

「いいのか!じゃあ、お言葉に甘えよう」

「お前たちは樽派か?瓶派か?」

「瓶だ」

二人は大男から瓶を受け取った。二人は陽気になった。

「お前たちもなかなかいける口だなー」

「いやいや、バッカスさんには遠く及びません」

「何せ俺は“チャンピオン”だからなー!はっはっは」

「そりゃよかったなー」

「いやー楽しいなー。これで祭に参加できればもっと楽しいんだがなー」

「祭があるんですか?」

「ああ。腕自慢を決める祭があるんだ。だが、俺はこの間出現したデカい動物に腕をやられちまってなー」

「デカい動物って、まさか怪獣のことかな」

「そうじゃないか。それでその動物は倒したのか?」

「倒したぞ」

「すごいじゃないか!」

「まあなー…と言いたいところだが、俺は助けられた。そいつは俺を助けた奴が回収していったよ」

「ふーん」

「それで頼みなんだけどよ、俺の代役で祭に出てくれねえか?」

「仕方ないですね」

「ありがとー!恩に着る。あとで応援に行くよー」

二人が山道を歩いていると、歓声と楽器、拍手の音が聞こえて来た。谷底で祭が行われていた。

「すごい盛り上がりだ」

「やってやるぜ。優勝は俺だぞ」

「やるからには僕も負けない」

祭会場の司会者が告げた。

「次の出場者は、ほろ酔いサンバさんです!張り切ってどうぞ!」

祭は谷にかかった二本の紐に乗った棒を掴み、谷底まで滑り落ちる競技だった。途中には障害物があり、落ちると泥水が用意されていた。

「あちゃー!ほろ酔いサンバさん、泥水に落下です。ここを超える者がなかなか現れません。優勝候補のチャンピオンさんが怪我のため、欠席です。誰か代役でも来ないでしょうか?」

「俺たちが出るぜ」

「おおっと!ここで金と銀の仮面をかぶった2人組が現れました!」

「僕たちがチャンピオンの代役の金銀仮面です」

「なんとチャンピオンの代役でした!金銀仮面さん、意気込みをどうぞ」

「絶対優勝するぞ」

「これは期待できます!では、挑戦お願いします!」

まず、グッドが挑戦を開始した。途中で突風が起きたり、泡が舞ったりしたが、落ちずに進んだ。

「ここまで順調です。さあ、次は難関の電撃です!果たして超えられるのでしょうか!?」

グッドに電撃が流れた。しかし、グッドはぐっと堪えた。

「おお!?超えました!初の優勝者です!」

グッドは歓声に応えた。続いてラックが挑戦を開始した。

「気合だ!!」

「すごい気迫です!」

ラックは電撃も気合で耐えた。

「おお!!」

「2人目の優勝者です!金銀仮面さんが代役の務めを果たしました」

二人は優勝記念の酒を手に入れた。優勝を祝う酒のシャワーを二人は浴びた。二人の元にバッカスが来た。

「2人ともありがとー。いい物が見れて酒も美味しいはずだ。今度の祭に向けて酒を飲むとするよ」

「今度の祭?」

「祭は毎日あるんよ」

「何だ。じゃあ頑張れよ」

「お前たちもまた来いなー」

グッドとラックは千鳥足で機体に乗った。

「飲み過ぎたー」

「兄さん、無理するなよ」

「ラックは強いなー」

グッドとラックはしばらく休んでから時空の歪みに入った。

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