第6話 ヘルメス
グッドとラックは時空の歪みを出た。
「いい調子だ」
「どんどん行こうぜ」
グッドとラックはいつものように機体を休ませるため近くの星に降りた。この星の民は、全員が急いでいた。
「この星の民はせっかちなのか」
「足が速い。まるでラウスがたくさんいるみたいだ」
「そんなに急いでどこに行くのだろう」
「走っているのにぶつからないのか?」
ラックが試しに道に入った。走って来た男が止まり切れず、ラックにぶつかった。
「痛て!」
「すみません。でもそこに立たれていたら危ないです。避けてください」
「早口だな。どうしてそんなに急ぐ?」
「人生は有限です。急がねばすぐに死んでしまいます。そういうことなので」
男は走って行った。次々と走って来る人の波をラックは避けた。
「ここは危険だ。普通に道を歩くことすらできやしない」
「ラウスでもここまで急いだりはしない。何かおかしい。調べてみよう」
グッドとラックは家で休む民に聞き込み調査を行った。家に招かれた二人は、高速でお茶を振る舞われた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
「ついでにお菓子もどうぞ」
「どうも」
「それで聞きたいこととは何ですか?時間がないので手短にお願いしますね」
「えーと、単刀直入に聞きますが、何かに追われているのですか?」
「どうしてそんな事を聞くのですか?」
「追われていなければ急ぐ必要がないからです」
「これを見てください」
民が棚から紙の束を取り、二人に見せた。
「これはニュースペーパーまたは新聞紙と言います。ここには沢山の情報が書かれています。これを見て人はすべてを欠かすことのないように楽しむため急いでいるんです」
「すべてを楽しむ…。大変ですね」
「では、もういいですよね」
「はい。ありがとうございました」
民は二人が帰った後、再び急ぎ出した。二人は新聞紙を発行する工場に向かった。二人は道を歩くとぶつかってしまうため、茂みの中をかき分けて移動した。そして、工場に着いた。
「ここが新聞紙工場か」
「門番がいて中に入れないな」
二人は目を合わせ、頷いた。二人は工場員の服装に着替え、中に入った。
「ちょっと手荒な方法になった」
「仕方ない。この星の真実を突き止めるためだ」
門番が仰向けに倒れていた。二人は走ってくる工場員を避け、奥に進んだ。そして、最深部に到達した。
「ここが工場の最深部か」
「中に何が待ち受けているかわからない。緊張するぜ」
二人は勢いよくドアを開き、中に入った。そこには一人の男性が机に座り、高速で手を動かしていた。
「誰だ!」
「この新聞紙とやらを作っているのは貴様か!」
男性が立ち上がり、二人の方に走ってきた。二人は避けた。男性は冊子を取り、高速で読み始めた。読み終えると、冊子を仕舞い、机に座った。二人は机に近づいた。
「何だ!」
「これが新聞紙の出来る瞬間か!」
男性は高速で記事を書いていた。書き終えると、読み直し、高速で訂正した。完成した記事を箱に入れた。男性は額の汗を拭った。
「ふう~」
「あの、今いいですか?」
「あなたたち、入るときはノックしてください。それから作業の邪魔ですから作業中は話しかけないでください。あと」
「すみません!僕たちはここの者じゃないんです!」
男性は二人をじっと見た。
「そういうことか。何か用なら3分以内で」
「えーと、あなたは誰ですか?」
「マーキュリー。異名“ハイスピード”。高速処理が得意だ。はじめ趣味で始めたこの仕事も今は従業員が増えて大量生産が可能になった。昔は配達も自分でしていた。あの時は大変だったな~。この仕事の良さは、自分の楽しみを他の人にも伝えることができる所だ。あと聞きたいことは?」
「ないです」
「じゃあ、仕事に戻るから」
「ありがとうございました」
二人は走る工場員を避けながら入り口に戻った。服を脱ぎ、門番の側に置いた。ゆっくりと機体に乗り、発進した。
「僕たちはゆっくり行こう」
「そうだな」
「そうは言ってもゼウス王の身も心配だ」
「じゃあ、ゆっくり急ぐか」
「矛盾してる」
グッドとラックは時空の歪みに入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます