第4話 アテナ
グッドとラックは時空の歪みを出た。
「出た。歪みを通ると何だか肩に違和感があるな」
「兄さんも?ずしっと重い物がのしかかるような感じだよね」
「この重みが暗黒物質なのかもしれないな」
「嫌な感じだ。とっとと次の歪みを探そうぜ」
移動を始めたグッドとラックを狙う者がいた。
「グフ… 暗黒物質ノ恐ロシサヲ思イ知ルガイイ!醜イ体ヲ縮メ、ガイア人」
その者は、銃を構え、グッドとラックに照準を合わせた。銃はチタン製の銀色に光る胴体で、発射寸前エネルギーを充填した印に赤く光った。
「暗黒物質砲、発射!」
銃から黒い靄のようなものを纏ったレーザーが発射された。
「ん?何か来る!」
「うわあああ!」
レーザーを受けたグッドとラックは意識を失った。その者は銃を下げ、呟いた。
「グフ…命中ダ」
そこに、歪みから手が現れ、その者を捕らえた。
「ダダダ…誰ダ!?」
「知らないようだ。暗黒物質は使い方次第で常識を超えることができる。私は準備を進めるとしよう」
その者は消滅した。気づくと、グッドは壁に囲まれた場所に倒れていた。
「痛い…ということは生きている。何かを受けて体が縮んだようだ。懐かしい感覚だ。ここはどこだ?」
グッドは歩き出した。しかし、歩いても歩いても先が見えなかった。
「一体ここはどうなっている?まるで迷宮だ」
監視カメラがグッドを映した。それを見る男性が呟いた。
「その通り。迷宮だ。私特製のね。存分に楽しんでくれたまえ」
グッドは物音を聞いた。
「誰か来る」
グッドは行き止まりの物置に身を潜めた。鎧を身に纏い、銃を持った者が二人歩きながら話していた。
「お前、家に何日帰ってない?」
「うーん、7日くらい?」
「まだいい方だ。運が悪いと1カ月くらい帰れないって聞くぞ」
「1カ月!その間、宝箱の回復アイテム生活か。それはしんどいな」
「ああ。早く家に帰って美味しいご飯が食べたいよ」
鎧の二人は去って行った。グッドは物置から出た。
「どうやらこの星の民もこの迷宮に苦しんでいるらしい。それよりも宝箱を探さなくては。中に衣服があるかもしれない」
グッドは体が縮み、裸だった。それはラックも同じだった。ラックは鎧の兵士に見つかり、銃を向けられていた。
「怪しい者め!この星の者ではないな」
「待て。俺をどうするつもりだ?」
「正義の元に大人しくしてもらう」
「それは出来ない」
ラックは鎧の兵士の顔にしがみついた。
「何をする!?」
「その鎧をよこせ!」
鎧の兵士は壁に取り付けられた装置のボタンを押した。直後、迷宮中に非常事態を知らせる警告音が鳴り響いた。ラックにライトが当てられた。
「もう逃げられないぞ!」
「面倒になったぜ」
ラックは壁によじ登った。
「待て!」
「待たない!」
鎧の兵士たちが各地から集まり、ラックを追いかけた。銃から捕獲する網があちこちから放たれ、ラックは躱した。
「裸の不審者、待て!」
「だから、待たない!」
暗い部屋でコーヒーを飲みながら、眼鏡をかけた男性が二人の様子を見ていた。コップを置き、眼鏡を指で上げた。グッドとラックの脳裏に声が響いた。
「ガイア人の諸君、聞こえるかな?」
「誰だ?」
「私はミネルヴァ。この星の代表者だ」
「代表者が何の用だ?」
「私のいる城まで来てほしい。渡したいものがある」
「城はどこですか?」
「それは自分で探し出してください。報酬は努力の結果得られるものです」
「偉そうに。何者だ?」
「ですから、私はこの星の代表者です。民からは迷宮の支配人と呼ばれていますが。いいですか、私はあくまでもあなたたちの味方です。では幸運を祈ります」
グッドとラックは城を目指した。何度も行き止まりに当たったり、壁にぶつかったり、敵と戦ったりした。それでも二人は諦めず前へ進んだ。そうして、二人は城に辿り着いた。
「はあはあ…やっと着いた」
「おめでとう。約束の前に、これを着たまえ」
グッドとラックはミネルヴァに渡された上下が繋がった服を着た。
「ありがとうございます」
「いえいえ。知恵の身を食べたアダムとイヴは服を着て大事な所を隠したというから渡した」
「知恵の身?アダムとイヴ?」
「知らなくてもいい。ほんの知識に過ぎない」
「なんで迷宮にしたんだ?」
「この星の民は正義感に溢れている。それがかえって争いを起こす」
「だからっておかしいだろ」
「迷宮をつくったことで、争いは減った。あなたのように壁をよじ登る人もここにはいない」
「そうかい」
「それで約束のものは…?」
「こっちだ」
ミネルヴァが見せたのは、一機の戦闘機だった。
「これはかつてガイア人が乗ってきたものだ」
「ガイア人!?」
「そう、君たちと同じ戦士だった。名前は確かラウスとか言ったかな。相棒が見つかったから、一機不要になったらしい」
「ラウスもここに来てたのか」
「俺たちにくれるのか?」
「裸だった事を考えると、何もなくて困っていると思っただけだ」
「それじゃ、有り難く受け取ります」
「誰だか知らないけど、助かったぜ」
グッドとラックは戦闘機に乗り、飛び立った。ミネルヴァはコーヒーを啜った。
「努力は必ず報われる。九死に一生を得る」
時空の歪みはすぐに見つかった。
「なんでこんなに早く見つかったんだ?」
「分からないけど、入ろうぜ。新しい移動手段を手に入れたことだし」
「あの人に感謝だ」
グッドとラックは時空の歪みに入った。
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