番外 その後の瀨見良

「はい、ありがとうございました。また明日もよろしくお願いします」

そう自分に向かってお辞儀をされ、神谷が見えなくなるまで見届けたあと、生徒会室へ向かって自分も歩き始めた。

コツン、コツン、と誰も居ない寂しい廊下を一歩、また一歩と歩き、着実に生徒会室へと近づいていく。

”さっきのゲームの件なんだが、どうやって正解したんだ?”

”そ、それは答えられません、すみません”

ついさっき神谷とした会話がふと頭をよぎる。

「答えられない、か」

ただ感ならば感だといえば済む話なのに、なぜ答えられないと言ったのかという疑問で頭が埋めつくされる。

俺の嘘をつく時の癖を知っていた?

本当は嘘をつくのがうまい?

昨日で目まぐるしい変化があった?

超集中状態ゾーンに入ったかのように頭の回転速度が上がる。

そして、たどり着いた答えはただ一つ―――

神谷ペルソナを手にしたということ。

奈貴なき、いるか」

「どうした、高貴」

奈貴、そう呼びかけると、誰もいないはずの空間から一人、俺と姿が現れた。

「仮面持ちが現れた。これ以上能力を開花させないようにするぞ」

「りょーかい」

気だるそうな声で俺の声に奈貴は応答し、俺は仮面を付ける。もし、本当に神谷もペルソナを手にしたのだとすると、あいつも同じ道を辿ってしまうかもしれない。

俺と同じドン底の道へ進むことになるかもしれない。

それだけはさせない、させてはならない。あの立村が認めた男だ。いずれ生徒会長へなるであろうものがドン底の道を進んではいけない。かつての俺のように。

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