第2話 始まる特訓

進学の都合上そこまで大きくはないアパートに住んでいる僕は、指定された制服を着て、高校への登校を始めた。

昨日のあれはなんだったんだろう?結局あのあとはなにもなく明日もきてねって言われたけど、なにか準備でもするのかな?とにかくきてって言われた以上は行かないとね。ほかの役員さんとも話してみたいし。

僕が住んでいるアパートから学校はそこまで距離はなく、ボーッと頭の中で考え事をしているとすぐに学校門の前に着いた。自分の前に大きく立ちはだかる門の下には昨日は見かけなかったが立っており、門をくぐり抜ける生徒は元気よくその先生にあいさつをしたり、していなかったりだった。

「おはようございまーす!」「……うっす」「おまえ昨日のライテンドーダイレクト見た!?」「みたみた!!パルミンの新作がおもしろそうだよな!!」

という友達と通学している生徒や、元気にあいさつして門を通り抜ける生徒や、先生に指導を受けている生徒などいろいろな生徒の声が入り交じっていた。

僕も自分の教室へ向かうために門をくぐり、校舎へ入った。


先輩方もいるからだろうか、校舎内が昨日以上に活気にあふれている。いろいろな教室のしゃべり声が廊下中に響き、交わっていた。

うーん、何回来てもなれないなぁこの空気感。

 早く教室に入ろう、少しだけ歩く足を早め、『1-E』と看板に書かれた教室へ後ろの扉から入った。

教室へ入るとすぐさま自分の席へと向かい、学生には欠かせない小道具をカバンからだし、着席した。

名前が『神谷』だから仕方ないけど、扉側の席はやっぱり落ち着かない。正直来たくないし。まぁHRまで時間もあるし、ちょっとだけ寝よっかな。

自分の机に組んだ腕と頭を置き、眠りについた。

 

「――――それじゃあ今日の放課後から部活動見学があるから、文化部、運動部問わず興味があるやつは部活棟に行くように。」

先生の話が終わり、決まったばかりの学級委員長が号令をかけ、先生が教室を去る。その一連の行動が終わると、皆一斉に動き始め、教室もガヤガヤとうるさくなった。

うん、起きれたよ?HRまでには。起きれたけど、僕が起きたのはHRで、起きたかったのはHR。つまりは1日寝過ごしたということだ。

いやぁ、移動教室がなくて助かったなぁ。

でもみんなからの印象は最悪だろうなぁ。今だって教室を出ていく人達が僕の方を見てから出ていってるもの。うぅ、早くこんな場所からおさらばしてしよう。

僕は急いで出しただけの小道具をしまい、すぐそばにある扉から教室をでて、生徒会室にある部活棟へと向かった。


「ラグビー部はここでーす!」「一緒にかるたしませんか!?」「わが天体観測部をご覧あれ!」「運動部だけど、文化部のようなスカッシュ部へ来てみてくさーい!」「写真部はどっすかー」「サドウイッショニタノシミマセンカ?」

昨日は明かりがひとつも付いていなかったが、今日は全ての教室に明かりが付いていた。その数多の教室がある中で、僕たち1年生を我こそは我こそはと自分たちの部活動へと引き込んでいた。

てかここの学校の先輩達癖が強い人が多いな。さっき聞こえてきた勧誘の声だけで収集がつかなくなりそうなんだけど。と、そんなことを思えたのも束の間。気づけば廊下のど真ん中に僕は佇んでいた。

っとこんなところにずっと立ってるのはさすがに危ないし、人に当たらないよう細心の注意をはらって生徒会室に向かわないと。僕はこの一生進むことの出来なさそうな、雰囲気ムード夏祭りな廊下の中に自分の身を投じた。ぎゅうぎゅうに押し潰されながら廊下を進んでいる僕はあることに気がついた。

当たり前なことなのだが、学年ごとに違うカラーラインの入った名札を配布されおり、3年生から『赤』『青』『緑』のラインが入っている名札をつけており、この人混みの中には赤や青の名札をつけた人はまれにいる程度でほとんどが緑の名札をつけた生徒でこの人混みを成していた。もちろん僕もその1人。そんなどうでもいい当たり前のことに気がついた僕は、早くこの人混みを抜け出すためにもっとその中に潜っていった。


「や、やっと着いた」

ぜぇはぁと息を切らしながらやっとの思いでたどりついた生徒会室の前に立っていた。

昨日はなかった「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた貼り紙に気づくこともなく、僕は勢いよく教室の扉を開けた。

「「「「「「ようこそ生徒会へ」」」」」」

「へ?」

その瞬間、昨日見かけた役員の人達が全員1列にならび僕に向かって歓迎の言葉を一斉に放った。いきなりのことにびっくりしてしまい、体が固まってしまった。

「おーい、幸四郎くん?」

心配そうな声色で名前を呼ばれ我に返る。

「あははっ!幸四郎くんって面白いね〜!」

「おい桃花、あまり人のことを笑うな」

アイタッ! と、その様子を見て笑っていた役員の人を昨日の黒縁眼鏡の人がペシッと頭を叩いた。その光景を見ていた会長がみんな並んでーと声をかけ、列を直した。

「早速ですまないけど、自己紹介をさせてもらうね」

「まずは僕から、昨日も言ったと思うけど、僕は立村家司。会長だよ。」

よろしくねと会長。

瀬見良高貴せみらこうき、副会長だ。」

黒縁眼鏡の人。

古井桃花ふるいとうか、副会長だよ!」

さっき頭を叩かれていた人。

井沼悠志いぬまゆうし、書記」

僕と同じぐらいの身長の人。

「同じく書記の山根杏香やまねきょうかです。」

ポニーテールの人。

南雲慶なぐもけい、会計です」

中性的な人。

自分の役職と名前を各々言い、自己紹介が済んだところで、会長がさらに話し始めた。

「自己紹介が済んだところで、本題に移ろうか」

そう言い、会長たちが考えてくれた不器用克服プログラムの内容の説明を始めた。会長の一通りの説明をまとめると、

『1年後の選挙に立候補するために、顧問を含めた会長以外の役員の得意なことを全て1年でたたき込んでもらう。カリキュラムとして1週間ごとに役員を回していく。』とのことだった。

「なにか質問はあるかな?」

そう聞かれ、特にありませんと答えると、話を続けた。

「それじゃあ早速始めるんだけど、最初の週は、高貴。君だよ」

「な、なんで俺が1番最初なんだ!」

 と瀬見良さんの名前を呼ぶと、反抗を始めた。

「まあまあ、になるんだよだから頼む!な?」

「それなら仕方ないか。おい神谷、移動するぞ」

そう瀬見良さんを説得させると、強引に手を引っ張られどこかへ連れていかれた。

え?ど、どこに連れてかれるの!?

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