第2話

 ──これはどういうことだ?

 突然のことだった。自分が何故この場所にいるのかまだよく分かっていない。

 真ん中に大きくて豪華な装飾が施された机と椅子。そこに上品な声色で話す一人の女性が座っていた。艶のある生地を何重にも羽織り、金の髪飾りをつけている。薄く赤く染まった頬と唇、水色の瞳が光る。


「初めまして。私はアテナと申します。貴方がクラトスですね」


 ある日突然、彼女の横に立っている大柄の男に連れてこられたのが始まりだ。

 アテナはクラトスに歩み寄り一礼する。


「貴方が来てくれることを心よりお待ちしておりました」


「それで、なんで俺がこんな場所に?」


 おい、言葉を慎め——アテナの横に立っていた大男が前に出る。

 濃い目鼻立ちに太い眉。あご髭を生やし、口を一文字に結んでいる。重厚な鎧、よく見ると小傷が無数についていた。銀色の輝きは失い、くすんだ色をしている。

 そんな大男を制し、アテナは微笑んだ。


「アイネイ、構いません。長い話なるでしょうから、どうぞおかけになって」


 目の前の長椅子に座るよう手を差し促した。それに従って彼はドサッと椅子にもたれる。包み込む様な柔らかさで思わず力が抜けてしまった。

 

「アイネイもおかけになって。長旅で疲れたでしょう」


「いえ、私なら平気です。お気遣い感謝します」 


 そうですか——アテナは呟き迎えに向かいの椅子に腰掛けて、使用人に茶を持って来させるよう指示した。


「話したい事は色々ありますが......さて、何から話しましょうか」


 アテナはこちらを見つめて何か考えている様子だ。

 しばらくして小さく息を吐いた。


「端的に申し上げますと、貴方にはここ、メテオラ修道院にて教師をやって頂きたいのです」



「......は?」


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