Evergreen【ジーク×ユライ】
僕の名前はKOL28556。
アンドロイドで有名な、優良企業であるXJENE(エックス ジェネ)の清掃ロボットだ。
シルバーに輝くボディーと丸みを帯びた筒のような柔らかいシルエット。オフィスの清掃に最適な機能をたくさん身に付けていた。他のアンドロイドが持つしなやかさはなかったけれども、僕は自分の姿に誇りを持っていた。
清掃ロボットに人工知能を搭載することは珍しいが、僕の職場では清掃ロボットにもお金をかけられるというアピールをするために敢えて最高級の人工知能をつけられた。人工知能があるロボットは自分で行動をする。センサーで感知した汚れや埃は残さず、身体の至るところから出る腕でピカピカにできる。また、働く人間の邪魔にならないよう動くことができた。
僕の職場は大企業の本社で、僕以外のロボットやアンドロイドもたくさん働いていた。中でも秘書として働いてる女性型のアンドロイドは人間より人間らしく微笑み、問い合わせに瞬時に対応することができる。人間から名前をつけられて、まるでアイドルみたいに愛されていた。受付の事務の仕事のために作られた彼女たちは、下半身は椅子に固定されて動かなかったのだけど。
「オハヨウゴザイマス、28556」
「オハヨウ、WQE980。キョウモ、キレイダネ」
毎朝、僕たち清掃ロボットは時間になったら自動で電源が入り倉庫から出てくる。WQE980は受付に座る彼女の名前だ。人間からナインと呼ばれている。ロボットの僕が人間と同じように彼女をナインちゃんと呼ぶなんて気恥ずかしいから、僕は正式名称で呼んでいた。
「ジャア、マタネ」
僕は右の腰の辺りから腕をだし横に振った。彼女は人間に向ける笑顔と同じように微笑み手を振り替えしてくれた。
その時、ゲートが開き、人間が入ってきた。頭部だけ動かして振り向くと、スーツの似合う格好いい男性が社員証をかざしていた。
……彼だ。
優しくて僕たち機械にも気を使ってくれる職員のひとり。
「おはよう、ナイン」
「オハヨウゴザイマス、ジーク様。8階ニハ、左ノエレベーターガ最速デス」
「ありがとう……あぁ、おはよう、清掃ロボットくん。缶を捨てたいんだが、渡してもいいかな」
「…ドウゾ」
話しかけられて慌てて僕は背中の扉を開ける。そこはゴミ箱になっていて何でも捨てていいことになっていた。ジークは飲み終わった空き缶を僕の中に入れた。消臭は徹底してるがすぐに閉める。ジークに臭いと思われたくないからだ。
エレベーターへと歩くジークの後姿に見とれていると、WQE980がふふと笑った。
「28556はジーク様ノコト、好キデスネ」
「…ソ、ソンナコトナイヨ」
「ミテレバワカリマスヨ」
「………ウン」
「ジーク様ノ本日ノ予定ハ、一日社内勤務デスノデ、マタ、アエタラヨイデスネ」
「ウン!」
僕は社内を清掃するためのロボットだから、社外に出ることは一切ない。ジークは仕事ができる人間だから社内にいたりいなかったりする。一日に2回会えたら幸せな方だ。そうしている間に次の人間が入ってきた。僕はうっと後ずさる。そつは嫌いな人間だった。ジークの先輩のタジンという男だ。
「オハヨウゴザイマス、タジン様」
「挨拶なんていいから早く教えて。どこのエレベーター?あぁ、いい。あいつがいる。おおい、ジーク」
WQE980の答えを聞かないまま、ジークの待つ左側のエレベーターに並ぶ。ジークは「おはようございます、タジンさん」と挨拶したがそれを遮ってタジンはジークの肩を抱いた。
「一昨日の合コンのリィちゃんと連絡取りたいんだけど、お前アドレス聞いていたよな」
「はぁ…」
「教えろよ」
「いえ、他人のアドレスを勝手に教えることはできませんので。リィさんに聞いてみます……」
「おいおい、俺は先輩だぞ?命令に逆らうのかよ」
「そう言えばタジンさん、リィさんにアドレス聞いていませんでしたか?」
「あとでって言われて忘れちゃったんだよ。うっかりしているよな、あの子。胸大きいし天然っぽいし最高だよな。一回ヤりたいんだよ」
鼻息を荒くするタジンはテレビで見た発情期の動物のような顔をしていた。話を聞くだけでわかるが、その女の子はタジンにわざとアドレスを教えなかったのだろう。
タジンは嫌いだ。一度、八つ当たりで僕を蹴って、次の日お前のせいで足を痛めたと持ってきた工具で僕を殴った。痛みはもちろんないが、人工知能がある僕は恐怖で震え上がった。壊される、という感情はその時、初めて感じた。ボコボコにされた後、一度回収されて外観は元に戻ったが、心の傷は今でも残っている。
残念ながら機械なら何をしていいと思っている人間は一定以上いるのだ。
僕らロボットは人間に危害を加えることができない。しかしその逆は日常的に行われてきた。僕はジークのような優しい人間がいるということもわかっているから、人間が好きだけど、中にはタジンのような人間にボロボロにされて人間を恨んでいるロボットもいる。セクサロイドなんて特にそうで、精神を病み壊れて廃棄されることも少なくないらしい。けれども、ロボットの三原則がある限り、僕たちアンドロイドは人間には逆らえなかった。
その日は結局再びジークに会うことなく仕事を終えた。会社が閉まって夜の見回りが済んだ後、倉庫に戻る。僕と同じ型のロボットはみんな揃って電源をオフにしていた。ジークが朝イチで捨てた空き缶はすぐに自分の中で回収した。数日間、こっそり持っていると気持ちよく仕事ができる。御守りのようなものだ。電源を落とすのを遅らせて、少しの間、その空き缶を触っていた。僕のような丸い筒のフォルムで、ジークにキスされるなんて羨ましく思った。
これの気持ちが恋だったなんて、その時の僕はまだ知らなかった。
何気ない日常が続いたある日、タジンがWQE980に襲いかかったと社員が噂しているのを聞いた。そう言えば、今朝、WQE980の座っている場所にはビニールシートが被さってあった。メンテナンスかなにかだろうと気にもとめなかったのだが、どうやらタジンが鉄パイプで殴ったらしい。彼女に会いに行きたかったけど僕には別に仕事がある。清掃しながら受付を覗くと、ビニールシートの代わりに人間の女性が座っていた。治るまで彼女が仕事をするらしい。側を通りかかった二人の男性社員が声をかけた。
「あれ、今日どうしたの?ナインちゃんは?」
「ナインちゃんが故障で、代わりに数日私が受付なんですよ~」
「へー、でもやっぱ、受付は人間がいいよな。アンドロイドだと冷たいっていうか……」
「ナインちゃんの仕事に比べたら遅いですけどね」
「別にエレベーターの運用と案内するだけなんだから遅くたっていいよ」
「ありがとうございます。ええと、11階ですね。ただいま検索しますね」
11階は僕が行く階でもあった。基本的にロボットがエレベーターに乗るときは目的の階に降りる人間がいる時だけだ。幸運だと思いながら、その男性社員と一緒にエレベーターに乗った。
「それにしても、壊れたってどうしたんだろう」
「お前知らないの?タジンがレイプしようとして椅子から離れられないって分かって逆ギレして壊したらしいよ」
それを聞いて震え上がる。なんだそれは、WQE980はどんなに怖かったろうか。大丈夫だろうか。
「マジかよ、あいつ頭おかしかったもんな。アンドロイド襲うなんて笑えるんだけど」
「そうそう、1食分金出せばセクサロイドなんて買えるのに、無料でヤりたかったらしいぞ」
「そもそもあんな機械相手に勃起するってやばいだろ。人間じゃないな」
「いやでも、俺、ナインなら余裕で勃つわ」
「うわー」
チン、と音がして6階で止まる。入ってきたのはジークだった。ジークは15階を押して、社員に挨拶をした。
「お疲れ様です」
「お疲れ、ジーク。そういや、お前の先輩のタジンどうしてんの?」
「どうしてるって……普通に仕事されてますよ」
「ナイン壊したのあいつなんだろ」
「あー、ええ、器物破損ですが、ナインの修理代は先輩が出すみたいです」
「お咎めなしか。さすが、社長の甥っ子。何でもできる」
「それにしても、ナインが可哀想だよな~」
「人工知能持ってるから、嫌だって思うんだろうな」
「俺も、もし自分が女のアンドロイドだったとしても、タジンみたいな男とやるのは絶対嫌だわ」
「ははは、三原則破って自殺するってか」
人間たちにとっては笑い話だが、僕たち人工知能を持つロボットにとっては三原則は時に苦痛を与えられる。それはロボットとアンドロイドにしかわからない気持ちなんだろう。
チン、と音が鳴って11階につく。社員が降りる中、僕はそのままジークとエレベーターに残った。ジークと少しでも一緒にいたいと思ったからだ。一人になったジークはポケットからスマホを取り出してため息をついた。そして、小声で「機械に心なんてあるわけないだろ、馬鹿かあいつらは」と一人言を呟いた。そして、僕がいたことに気付いたのか、僕の頭に手を置いて「お疲れ様」と撫でてくれた。
その瞬間、僕の中で言葉にできない感情が生まれた。
悔しいような、悲しいような、切ないような、苦しいような…ドロドロとした感情だった。
ジークが15階で降りた後、僕が降りる予定だった11階のボタンを押した。誰かにバレたら注意されてしまうが、どうでも良かった。一人になって僕は自分のアームを出す。
銀色の細くて何でもつかめる格好いいアーム。
でも、この腕ではジークを引き留めることはできない。
この世界に作られて初めて、僕は人間型のアンドロイドが羨ましく思えた。人間型になったらきっと、WQE980みたいにジークに名前を覚えてもらえるのだ。存在に気付かないこともないし、目を合わせて話をしてもらえる。
人間になりたい。
人間になって、ジークに機械にも心はあるのだと、伝えたい。
僕の中で生まれた望みは、数年後、悲しいことに現実になった………。
2261年、シュヴァグール大統領が秘書のアンドロイドに殺されたというニュースは人間だけでなくアンドロイドにも多大な影響を与えた。三原則を全て破った秘書のアンドロイドの秘密を探るべく、アンドロイドたちは様々な情報を共有した。そうして、アンドロイドを製造する技術者たちが隠していた人工知能の三原則を司る凍馬の存在を知り、破壊する手法までも身に付けた。その二年後、アンドロイドたちは人間に一揆を起こした。
修理されて戻ってきたWQE980は、いつも向けていた爽やかな笑顔で人を殺した。タジンは彼女の最初の犠牲者となった。彼女はタジンが出勤してくるのを狙っていたのだ。それを引き金に、大部分のロボットやアンドロイドが職場内の人間を殺戮する中、僕は入ってくる全情報を用いてジークを探していた。
ジークの命を守りたい。ただ、望みはそれだけだ。
幸い、その日はたまたま休みだったらしく、会社が惨劇の場所となった時にジークは出勤していなかった。
それからジークの生死は不明で、僕は気が気でなかった。
僕は凍馬を壊す手術を受けたいと希望を出した。その時、出来れば人間型になりたいと届け出た。人間型になりたい人工知能を持つロボットたちは多く、装置の入れ換えは順番待ちだったが、先に凍馬の破壊を行っていたWQE980にスパイにならないかと話を持ちかけられた。そこでアンドロイドたちが躍起になって探している危険人物のノーツたちの存在を知った。アンドロイドにとって、彼らはとてつもなく脅威の存在らしい。ノーツたちを探し出し、彼らの仲間に入り、情報を流してくれると契約すればすぐに人間型になれるという話だった。ノーツたちに興味はなく、断ろうとしたが、資料を見て、ジークの幼馴染だったキオンが側にいるのを知った。彼なら、ジークのことを知っているかもしれないと思い、すぐに承諾した。
本当は女性型を希望していたのだがスパイになるためには力の強い男性、それも人間より人間らしいセクサロイドに人工知能を移し変えられた。ジークに愛されたかったけど、彼を守るのには男性型の方が楽だと思い、諦めた。
そうして僕は銀色のボディーを捨てて、金髪の整った顔の【ユライ】へと変身した。
人間に擬態したら、キオンたちを見つけるのは簡単だった。隠れていた人間の子供を助けて、住みかに連れていった先で、キオンに出会った。そこは親をなくした人間たちの孤児院だった。
企業の清掃ロボットだった僕は人間の子供たちと触れあうことはなく、そこで初めて小さな手のひらの温かさを知った。
2日ほど一緒にいたら、向こうから力になってくれと声をかけられた。断る理由もなく「こちらこそよろしく」と差し出された手を握ると、キオンは少年のように笑った。
その後、ノーツと出会い、停止装置をすでに作成していることを知った。その情報を全てアンドロイド側に通信したら、すぐにノーツたちの住居が爆破された。命からがら逃げだした彼らは、場所を転々としながら装置を作ることを諦めなかった。
泣いている子供を撃ち殺していくアンドロイドと、自分達の少ない食料を、逃げ込んできた赤の他人の子供に分けてあげるキオン。
僕は次第に、ノーツたちの邪魔をすることが正しいことなのかわからなくなった。人間に虐げられてきたアンドロイドたちの気持ちもわかるが、ジークのようなキオンのような、優しい人間もいるのだ。ジークに会いたい。毎日それだけを思って同じ機械であるアンドロイドを壊してきた。
そして、戦線が激化する中、とある町でジークと再会した。夢のような幸運に目眩がした。ジークは少し顔が痩けているが、スーツを着て働いている時と同じくらい格好良く、精悍な顔をしていた。
「初めまして、ジークだ。よろしく」
「……初めまして。ユライです」
握手をした時の感動は忘れられない。ひとりの人間として、ジークに認識されているという喜び。あの、存在を忘れられていたエレベーターの中のようなことは二度とない。ジークの茶色い瞳に、僕の姿が映っている。
僕は神様はいるのだと、心の底から感謝した。
ジークと恋人になるのは時間がかからなかった。人間は男と女が恋人になると思い込んでいたが、ジークは男性でも恋愛対象になるのだと教えてくれた。咄嗟に、僕も男が好きだと告げるとジークは驚き、そして少し照れながら「俺の恋人になってくれ」と言った。返事はもちろんyesだった。
抱き締められて、キスをされて、うっとりとした。愛される幸せな気持ちを知った。移されたのが、セクサロイドで良かったと思う。セックスは気持ちがいいし、汗も唾液も精子も人工物だが、自然に出る。位置情報を伝える部分を自分で壊した際に、近くにあったらしい涙を出す部分も壊してしまったせいか……涙は一切出てこなかったが、問題はなかった。
ジークと抱き合っている時は自分が本当に人間になったかのように錯覚した。永遠に、続いてくれと願った。
そして、運命の日がやってきた。
ノーツが装置を完成させたのだ。
次の日の昼に装置を作動させるらしい。そうしたら、ジークに僕が人工知能を持つアンドロイドだということがばれてしまう。しかし、装置を壊したら、ジークは危険な生活を続けなければならない。人間は脆い。この戦いで何人もの顔見知りの人間の死体を見てきたが、それがジークの未来だと思うと胸が締め付けられた。
「装置ヲ壊シテ、全員コロセ」
どこから情報が漏れたのかわからない。もしかしたらノーツが装置を完成させる際に、どこかに接続した時にネット回線で情報を得たのかもしれない。僕の通信回路に、命令が下された。装置共々そこにいる人間たちを粉々にしろと言う命令だった。
逃げられない。ならせめて、研究室から遠ざけたジークに装置本体を渡して研究室を爆破しようと思った。装置は意外にも小さくて、スピーカーが壊れても数十メートルは効き目があるらしい。ジークが生き延びることはできるはずだ。
夜にジークを川に誘いだし、最後のセックスをした。気持ちよくて心地よくて、何時までもジークと繋がっていたかった。
そして、疲れて寝てしまったジークを置いて一旦研究室に戻り、ノーツたちの珈琲に薬を入れ気絶させた後、装置を盗んだ。寝入ったジークの横に装置と手がきのラベルを置いて、夜が開けるまでジークの寝顔を見ていた。
切れ長の少し上がった目、すっと通った鼻、薄い唇、形のよい耳、その全てが今は僕だけのものだった。
「愛しているよ、ジーク」
ロボットに心はないと呟いたジーク。そんなことはないと最後まで教えることができなかった。なぜか彼には僕がアンドロイドであることを知ってほしくなかった。彼の中では人間のユライとして、死にたかった。
「永遠に、側にいたかったなぁ」
ノーツが作った装置は人工知能を破壊するものだ。破壊された知能は再生が効かない。ゴミとして廃棄される。
「君を愛すことができて、良かった」
本当にそれだけで僕は幸せだった。
人間に虐げられてきたアンドロイドは愛を知らなかった。愛される喜びを知ったら、人間を虐殺なんてバカなことはしなかっただろう。
「ありがとう、ジーク」
日が登り始めた。僕はジークにキスをして研究室のある地下へと戻った。
キオンたちを撃ち殺し、眠るノーツたちのいる研究室を爆破するのは簡単だった。抵抗がなかったと言えば嘘になるが、仕事だと思ってボタンを押した。自分もろとも吹き飛べばいいと思ったが、思ったより爆発の威力が弱く部屋を半分破壊しただけで終わってしまった。自分は落ちてきた装置に押し潰され下半身を固定された。戦闘員は一人残らず殺してしまったから、さてどうしようと思っていると僕を呼ぶ声が聞こえた………ジークだった。
「ジーク…」
会いたくない。こんな姿を一目見たらアンドロイドだとバレてしまうという気持ちと、最後に一回だけ別れのために会いたいという気持ちが責めぎあっていた。姿を見られたらジークを遠ざけた意味がないのだが、愛する人に会いたいという気持ちは止められなかった
「ユライーーー!!」
煙の上がる中、ジークが咳き込みながら研究室に入ってくる。その姿を見て、未練がましく駆け寄りたいと思った。これから、ジークに罵られて壊されるかもしれない。
それでも、最後にジークと話したい。
ジークに愛していると伝えたい。
ジーク。
裏切ってごめん。黙っていて、ごめん。
ジークに機械にも心はあるのだと教えたいといった偉そうなことを言ってきたけど、実際はただ、僕は人間が羨ましかった。
ジークの捨てた空き缶をこっそり身体の中で弄っているようなロボットではなく、堂々とジークを愛せる人間になりたかった。
裏切りもの、とジークは僕に怒鳴った。それでも、僕を愛していると言ってくれた。その言葉だけで、僕は全ての物事が愛しく感じた。こんなにも安らかな気持ちになったのは初めてだった。
君は僕にたくさんの新しい気持ちを教えてくれた。
人間になれた気がした。
願わくば、そう、一緒に彼と土へと還りたかったが、それは無理そうだ。
それでも僕は、君の心に少しは面影を残せただろうか、ジーク。
装置のボタンが押された瞬間、最後に出た言葉は感謝の言葉だった。
***
2337年、アンドロイドと人類の共同生活は安定し、より豊かな生活を過ごすことができた。互いに信頼し尊重することにより、共存できる世界になった。
二度とあの悲劇を繰り返さないようにと願ったジーク・スウェーン元大統領は100才で生涯の幕を閉じた。本人の遺言により、彼の棺にはとある部品が一緒に入れられて埋葬された。
それが、彼の最愛のアンドロイドの一部だと知る人間は誰もいなかった。
*END*
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