第7話 外へでるんだ
呼んでいるのはクゥタだった。
『美穂ちゃん。さぁ涙をふいてドアを開けてごらん。
ともだちがまっているよ』
「クゥタ!お話ができるんだぁ。
よかったぁ美穂はずっとここでクゥタといっしょにいる」
美穂は夢中でクゥタに抱きついて大急ぎで言った。
クゥタのやわらかい手が美穂のほほにふれて、そっとさえぎった。
『美穂ちゃん。ぼくがお話ができるのはきょうがさいご。
美穂ちゃんに勇気をあげるために、おじいちゃんにお願いしたんだ』
「まさかまさかクゥタ、いなくなっちゃうの。
美穂ひとりぼっちになっちゃうよ」
『よくおきき。美穂ちゃんはひとりじゃない。
勇気をだして外へでるんだ。
たくさんの人にあえるよ。
やさしい人もいるし、いじわるな人もいる。
ほんとうはひとりのなかに、やさしい心といじわるな心があるんだけど、
まだむずかしいかな』
西の空におりてきたおひさまを背にクゥタが金色にかがやいている。
むずかしいけれど、美穂はすこしわかるような気がした。
ともだちなんかいらないってずっと思っていたのに、
久美ちゃんのえくぼや、ねこの背中を思いだすと胸がキューンといたくなる。
美穂のなかにもいろいろな美穂がいる。
もしかしたら、おかあさんも悦子先生も、むりしてにこにこしているのではなくて、
かなしいきもちとやさしいきもちのふたつがあるのかもしれない。
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