第5話 幼稚園なんか行かない

 公園に行くいつもの道にでた。

昨日も行った公園、買い物をしたスーパー、赤いポストの郵便局、

その角をまがるとクゥタをくれたおじいちゃんの家。

おじいちゃんはこの冬、死んじゃったけど…。


おかあさんがこぐ自転車、昨日と同じ景色がとびさっていく。

でも今日は少しちがう。


久美ちゃんの泣きそうな顔、

俊樹くんのきもちわるいって言った顔がうかぶ。

ともだちなんかいらない。クゥタがいればいい。


とおくで草刈りをしている音がする。風のなかに草のにおいがする。

さっき会ったねこを思いだした。

かわいかったな、もっとお話したかったのに、プイとむこうへ行ってしまった。

しっとりとあたたかい背中、ぷっくりとしたお尻、美穂の手をなめて…。

胸のおくがキューンといたくなった。

お話したい。あそびたい。美穂はひとりぼっち。


「でもクゥタがいるもん」

美穂は大きく頭をふって、おかあさんの背中にはっきりと言った。


「美穂はクゥタがいればいいんだから。

 幼稚園なんか行かないからね」

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