第4話 お庭のねこ
目のまえの赤い色がふっとゆれた。
チューリップをどうどうとふみこえて、ねこがあらわれた。
黒と白の牛みたいな模様で、でっぷりとふとっている。
美穂のまえにデンとすわったかと思うと、うしろ足をあげて耳を上手に
かきはじめた、と思ったら、ドデンとうしろにひっくりかえった。
「あはは、かわいい。ふとっているねぇ」
美穂はおもわず声をあげて、そっと手をのばして、ねこの背中をさわった。
ちょっとしめったかんじがしてあたたかい。
ねこは目をほそめ、美穂のまわるい手をざらざらした舌でなめた。
おおきなあくびをした。のどの奥までみえた。
そしてプイとむこうへ行ってしまった。
◇◇◇◇
「美穂ちゃん、おうちにかえろうね」
おかあさんの声がしたとたん、とまったと思っていた涙がまたこぼれた。
おかあさんはにこにこしようとしたけれど、こまったような、かなしいような
顔になって、だまって美穂を自転車のうしろに乗せた。
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