第3話 悦子先生
赤い色がボーとかすんでいる。
チューリップだ。幼稚園のお庭のチューリップ。
誰かが小さな声で話している。
悦子先生のおこっているような、かなしいような横顔がみえる。
さっきはあんなににこにこしていたのに、美穂のせいだ。
美穂のせいでかなしくなったのに、悦子先生は、にこにこしながら歩いてきて
美穂のいるベッドにすわった。
「美穂ちゃん。
お医者さんがなんでもないって。
泣きすぎて、ちょっとお胸がくるしくなっちゃったんだね。
だいじょうぶよ。
もうすぐおかあさんがくる、むかえにくるからね」
おかあさんもまた、かなしいのにむりをして、にこにこするのかなぁ。
公園に行けば、おともだちができるからって、おかあさんはいつも美穂を
つれて行った。
公園はクゥタもいっしょで、手はいつもクゥタとつないでいたけど。
こんどは幼稚園…
美穂はおともだちなんかいらないのに。
クゥタがいればいいのに。
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