掃除
部屋片付けが好きです。
仕事で忙しい中、ようやく取れた休日を掃除に当ててしまうくらいには、片付けが好きです。
もしも家に優秀なメイドさんがいて、いつも家中をきれいにしてくれていたとしても、ぼくは片付けられる場所を目ざとく探して、掃除に勤しむと思います。
でも、子供の頃はそうではなく、割と部屋を散らかすほうでした。
モノを捨てるのが苦手で、やたらと細ごまといろんなものが部屋の体積を圧迫していました。
▽
こんな事がありました。
ぼくが住んでいるこのあたりは、何度も大きな地震がありました。
ニュースに大きく取り上げられた地震の時など、近くの廃屋がぺっちゃんこになっていて、冷や汗が出たことを覚えています。
その日も、かなり大きな揺れがありました。
でも、ぼくは呑気に寝こけておりまして、一瞬は目は覚めたものの「今日のはやけにでかいなぁ」と思うだけで二度寝してしまいました。
しかし1時間もすると、なぜか友人が家まで集まってきました。
まだ早朝なのにです。
それも一人ではなく、複数人です。
聞けば「きっとカイエは埋まっているに違いない」「掘り出してやらないと」と思ったそうで、たしかにその頃のぼくの部屋は、分解したオートバイやら楽器やらで埋まっていて、まるでくずかごの底のような有様でした。
ありがたいことに、スピーカーやらオートバイはうまくぼくを避けて倒れてくれたようで、ぼくは怪我一つなくグースカ寝ていたのですが、友人たちはえらく心配してくれたようで、いまだに「地震が起きた瞬間お前の顔が目に浮かんだ」「ああ、あいつ死んだなと思った」などとチクチクといじめられています。
それでも、自分の家だって大変だろうに、うちの父や母の代わりに「カイエを掘り出してやろう」などと思ってくれたというのは、ありがたいことだと思います。
ぼくではなく両親のためっぽかったことはちょっと気になりますが(何故か両親は友人たちに人気でした)、それはきっとぼくの日頃の行いが良くなかったせいでしょう。
本当に人に恵まれた人生だと思います。
▽
とまあそんなふうに、散らかりに散らかった部屋で
何もない空っぽの部屋を見て「この部屋を自由にして良いのか」と思った瞬間、「絶対に散らかさないぞ」という強い思いがムクムクと持ち上がってきたのでした。
そこから、いつもの発作が起きます。
「自分のいる環境に、いかに不要なものを置かないか」をテーマに、いつも掃除をしていました。
毎週火曜日の晩には換気扇を掃除するというルールも作り、とにかくいつもピカピカにしていました。
おかげで知人友人たちのたまり場にされていました。
どれだけ散らかしても、次の瞬間には片付いているので、居心地が良かったのでしょう。
静かな日常を愛するぼくとしてはちょっと面倒ではあったのですが、みんなちょっとした食べ物なんかを差し入れてくれたので、おかげで食費がすごく浮きました。
そのぶん、洗剤の出費は一人暮らし男性としては異常だったと思います。
▽
そんなこんなで片付け癖がついた……というより片付け魔として覚醒したぼくは、暇さえあれば片付けたり掃除したりするようになりました。
結婚してからも、やたらと掃除をします。
奥さんはちゃんとキレイにしてくれているので、ぼくが掃除をし始めるとちょっと嫌な顔をされるのですが、ぼくの掃除はもはや趣味なので、そのうち諦めて放置されるようになりました。
しかし、そんな生活に大きな変化が現れます。
それは、子供が生まれたことでした。
この人生最大の出来事により、ぼくの生活は一変します。
▽
ぼくの片付けというのは、基本的に「決まりごとを作って、それを守る」というスタイルです。
- 無いと困るものだけ買う。
- 好きで好きでしょうがないものだけを買う。
- 使わない道具は悪。
- 何かを買うときには、どこに収納するかまで考え尽くす。
- 買い替えが少なくなるよう、なるべく一生使い続けられるものを選ぶ。
- 消耗品や破損する恐れがあるものは、10年後も同じものが購入できるような定番品を揃える。
- 予備は買わず、ギリギリの数で揃える。
- 高級品はなるべく避ける(必要があって買い替えるときに大変だから)。
という感じで、こうなると自然と古くから使われてきた定番品が集まってきます。
べつに、おしゃれブロガーさんみたいな丁寧な暮らしを目指しているわけではありません。
とにかく自分にとって一番快適な生活を、ラクに持続できるようにしたいだけです。
雑貨屋さんめぐりなどはとても楽しいのですが、実際に手にとってレジに持っていくことはほとんどありません。
奥さんなどはかわいい雑貨なんかが好きなタイプなので、もしかするとデートなどしていてもつまらないかもしれません(ごめんね)。
まぁなんにせよぼくは、自分の所有物はなるべく少なく、かつ管理がラクであることを基本としているわけです。
しかし、子供が生まれるとそんなこだわりが邪魔になることもあります。
とにかくバカスカとモノが増えていきます。
赤ちゃんのころなら哺乳瓶ひとつ洗うにしても専用の道具が必要ですし、消耗品の数も半端じゃありません。
ちょっと大きくなれば、情操教育のためにも本やおもちゃが必要になりますし、安全にも配慮が必要です。
気づけば家が子供一色に塗りつぶされていました。
(……ま、こればっかりはしょうがない)
掃除や片付けなんて、そもそも自分がラクに、快適に、楽しく生きるための手段なのですから、それがストレスの原因になっちゃ本末転倒です。
マイルールには厳しいぼくですが、早々に諦めまして、自分の生きる環境をコントロールできないことにも、だんだんストレスを感じなくなりました。
でも、そうしたぼくのこだわりが役に立ちそうな時がやってきました。
▽
まもなく、一人目の子供が一人暮らしを始めます。
なぜか引っ越しするときや、モノを買う時に相談されることの多いぼくです。
これまでたくさんの友人知人の独立を見てきたぼくですが、特に初めての一人暮らしは衛生的によろしくない状態になることが多い気がします。
主な原因は、ものを買うときに「コレかわいい」だけが動機である点が大きいと思います。
気持ちはわかります。
いい雑貨は一期一会です。
一目惚れしたマグや靴など、たとえ不要であっても手元に置いておきたくなるのは人情でしょう。
それで本人が快適に過ごせるならばそれでいいと思います。
ですが、モノが増えすぎて快適な環境を維持できなくなり、諦めたような顔で生活するのはちょっともったいないと思うのです。
その点、幸いうちのお子たちの感性は、かなりぼくに近いところがあります。
ならば、ぼく流の「楽に、快適に、楽しく生きる」ための生活術を伝授できそうです。
それが正解かは人によると思いますが、本人たちが望むならば、惜しみなく協力しようと思っています。
ぼくは子供にあまり一般的でない教育しかできず、基本的にはみんな勝手に育って勝手に大人になってくれています。
まぁぼくみたいな人間に変に影響を受けてもらっても困るんで、それはそれで良いですし、実際ぼくは「18歳になったら親子関係は解消して、ただの友人になろう」と常々言っています。
いい年した連中の親を続けるのなんてごめんです。
はよ出て行って、お互い無責任な、ただの仲の良いツレになってほしいと思います。
というわけで、独立していくお子たちのために、レシピ集とともに、楽しくて維持し易い快適な環境づくりのコツを文章に書き溜めているところです。
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