「伊草いずくさんの質問企画」の返答!
どうも皆さんこんにちは、カイエです。
伊草いずくさまから、質問企画の栄えある1人目に指名していただきました!
これまで、まさに落ち葉の如く書きたい放題書き散らかしているこのエッセイですが、それでも「こういうことは書かないでおこう」みたいな制限は設けています。
何かを非難したり、センシティブな話題は当然避けるとして、ガチな哲学思想なども普段は避けるようにしています。
でも今日は解禁です。
いてまえ。
▽
あ、先に断っておきますと、カイエはいま浮き足立っています。
そのため超長文を書いていますが、本来はもっとシンプルに書かれていいとおもいます。
一人目であるぼくがバカみたいな長文を書いてしまったら、次の方がやりにくくなるんじゃないかと心配です……。
だからちゃんと宣言しておきます。
カイエは伊草さんのファンなのでこうなだけです。
ぼくをテンプレにするのはやめておいたほうがいいよ!
じゃあ、長文行くぞッ!
▽
まずは伊草いずくさんについて語らねばなりますまい。
# 文学を科学する男、その名も「伊草いずく」さま!(ジャジャーン
https://kakuyomu.jp/users/nunu
代表作「識域のホロウライト」のプロローグを読ませていただき、その情景描写の爽やかさとルビのセンスの秀逸さにぶっ飛び、まぁまぁ多い文章量を一晩で一気読みし、語彙が「やべぇ」しかなくなったカイエがコメント爆撃したのがお付き合いのきっかけです。
## 識域のホロウライト
https://kakuyomu.jp/works/16817330650219542266
つまりなんだ。
ぼくは伊草さんのいちファンである、ってことです。
で、作風からどんなクールな方なのかと思っていたら、奇しくもこの「ちよろず」とほぼ同時に連載がスタートしたエッセイ「無菌室四畳半、日当たり良好。」では、穏やかかつ賑やかで、一つの物事をとことん考え尽くす思慮深い人でした。
ぶっちゃけた話、ちょっと意外でした。
## 無菌室四畳半、日当たり良好。
https://kakuyomu.jp/works/16817330652957001952
このエッセイ、読者を巻き込んでいく力強さを存分に味わえます。
物書きも、そうでない方も、小説が好きな方は絶対読んだほうがいいよ!
つまりなんだ。
ぼくは伊草さんのいちファンである、ってことです。
質問企画の第一弾として選んでいただけて、恐悦至極というものですよ!
▽
ことの経緯は、カクヨムコンを機に仲良くさせていただいている伊草さまにより「質問を投げ合おうぜ!」という企画が持ち上がったのが始まりです。
「だれか一緒にやるやついる?」という問いに「はいはいはいはい」と手を挙げてアピールしまくり、そして第一弾としてカイエへの質問をゲットしたというわけですね。
本話はそのアンサーということになります。
質問企画のアンサーなので、ここはちゃんとフォーマットにしたがっておきましょう。
▽
# A. 質問 “過酷な世界と、そこで魅力的に生きる人たち”を、どうして書きたいと思ったのか?
-----以下引用-----
カイエさんの作品は、少なくとも一つ「世界の過酷さと、その中で輝く人」の中に特色がある。
文字数あたりの展開がゆっくりとしていてもまったく長さや冗長さを感じないのは、キャラクターが直面している状況の過酷さや、それに対して表出する熾烈な(緊迫の)展開、または熾烈であるはずの状況で平然としている言動の異常さの故だと読んだ。
それらに対する“好き”とか“こだわり”、または“特に何とも思っていなかったけどキャラたちとその世界に長くいたから生まれた思うところ”などを知りたい。
元々“好き”や“こだわり”があったなら、「どうして書きたいと思ったのか」の答えは「元々こういう風に好き嫌いがあって……」という、ある好き嫌いやこだわりのエピソード語りとか。“書いてみて初めて思うようになったあれこれ”なら、執筆後記みたいになるかもしれない。そういうものが聞いてみたい。
-----以上引用-----
https://kakuyomu.jp/works/16817330652957001952/episodes/16817330655318890912
▽
# B. 答え : 無意識です
と言ってしまうと終わってしまうので、ここはシュルレアリストよろしく自身の無意識を分解して観察してみたいと思います。
まず、話を思いついた時点では、特に変わった話を書いてやろうとか、特に厳しい世界を書いてびっくりさせてやろうとか、そういう意図は全くありません。
書きたいシーンがある。
以上。
もう少し具体的に書くと、「こんな関係性の二人が、こんなシーンを演じてくれたらいいな」みたいなぼんやりしたイメージがあり、それを具体化していくという感じです。
「魔物の森のハイジ」を例にしてみますと「新説」#7-19 のシーンだけが先にありました。
この時点で「何もかもが寒くて冷たい中、愛情だけがポツンと暖かい」「誰にも理解されない愛情」というテーマはすでに出来上がっていて、あとはそのテーマから外れないようにする、というのが鉄則になります。 [^1]
では、こういう厳しい世界を選んだのはなぜか? を掘り下げてみると、多分ぼくは「都合のいい世界」よりも「都合が悪い世界」のほうが、人間の純粋な姿が見えると考えているのだと思います。
目的を純化させたいと言い換えてもいいです。
この「純化」というのが、一番しっくりくるキーワードです。
[^1]: 諸事情によりそのテーマを曲げた瞬間、キャラクターが暴走してどうにもならなくなったのが「IFルート」です。テーマを曲げずにもう一度書こう、と「新説」を書き始めたところ、最後までキャラクターたちが演じきってくれました。
▽
「こういう厳しい世界を選んだのはなぜか?」について、もう少しだけ掘り下げてみます。
ぼくの人生哲学には、中心に「幸福に条件をつけるべきではない」というものがあります。
これこれこうだったら幸せ、あれが手に入ったら幸せ、誰がいてくれたら幸せ、といった形で条件をつけると、幸せを他者(環境も含む)に依存する形になるからです。
と言っても、実際のところぼくにも「最低限これがないと幸せを維持できない」みたいなもの(たとえば家族とか)はありますが、あくまで基本的な考えとしてはそうだということです。
人間、一人ぼっちでも、何も財産を持っていなくても、過去にどんな不幸があったとしても、だからと言って幸せになっちゃいけないということはないと思います。
だから、なんだか知らないけど都合のいいチートをもらって、都合のいい世界で、魔法で便利で清潔な環境を作って、みんなに「規格外だ」とチヤホヤされ、可愛い女の子が群がってくる、みたいな話はちょっと自分では書きたくない。
そういうのは読むだけにとどめています(実はそういうのも大好物です)。
▽
あともう一つ、多くを求めたくないというのもあります。
生きていれば、そりゃ欲しいものとか食べたいものとかやりたいこととかたくさんある訳ですが、それを満たすことを目的としたくはないです。
ぼくは無欲な人間ではなく、また修行僧みたいに「欲望は捨て去るべき」みたいな考えもなく、つまり欲しいものは欲しいし、したいことはしたい。
普通に欲深い人間です。
ただ「欲しい」という感情に振り回されるのはごめんです。
つまり「手に入れば嬉しいけれど、手に入らなくてもストレスにならない」というスタンスの人間だということです。
その分、本当にたいせつなものには妥協したくないわけです。
むしろ満たされれば満たされるほど、妥協したくない大切なものへのフォーカスが甘くなっていく気がします。
一番たいせつな何かのために、全身全霊を傾けていきたい。
それ以外を求めると、純粋さが失われる。
――といった性質がキャラや世界観に反映されているのだと思います。
▽
そもそもなんですが、ぼくの書くプロットは、多分みなさまが考えるよりも解像度が荒いと思います。
たとえば「ハイジ」なら、最初は「リンがハイジと出会う、怖がる。街に逃げる」「ハイジはリンを迷惑に思っている。街に追い出す」「街に行くまで名前を知らない」くらいしか決まってません。
どういう経緯でそうなるのかまでは決まっていないわけです。
リンがハイジと出会ってからどうするかは、リンの自由意志に任せてます。
つまり、勝手に走り出したり凍えたりしたわけです。
「へぇキミ、そんなふうに行動するんだ」と思いながら書いているわけです。
それでもあえて自分で計画したことといえば、最初は「逃げる」ための陸上は、あとで「追いかける」ためのものに反転させる、というあたりでしょうか。
全力で「追いかける」話なのだから、ならリンは元陸上選手のほうがしっくりくる、程度の軽い設定です。
もちろんハイジ側にも好きにしてもらいました。
これでもしリンを助けてくれなかったりしたら「ねぇ、ちょっと行ってあげてよ」とお願いしなくてはならないところでしたが、別段どうということもなく普通に助けに行ってくれました。
まさか無視し始めるとは思っていませんでしたが、リンもそれをうまく受け止めてくれたので、「人付き合いが極端に下手な男」と「無視する人間は信用できない少女」という関係性が生まれました。
ここらでようやく「あ、コイツらほっといてもちゃんと物語に沿って生きてくれるんだな」と安心しました。
▽
「深層」のほうはもっとワンイシューです。
リファレンスとして夢枕獏先生の「神々の山稜」がありましたので、
また、ブロマンスものにしようという前提がありましたので、バディを決める必要がありました。
歳の近い冒険者がいいかと思い、初めはオットーがその役割だったのですが、全くしっくり来ず、そのタイミングで知人のイラストレーターさんから聞いた「身体中火傷の痕だらけの砲兵のキャラクター」から着想を得、元のキャラクターが筋骨隆々のガチムチ軍人だったので、じゃあいっそ子供にしてやろう、ショタかわいいし、ならば「10歳の誕生日」という節目で物語を動かそうということで、9歳の少年ハジが生まれました。
そうなると、高山をモチーフとした迷宮は厳しければ厳しいほどいい。[^2]
ポーターレッジやハーケンなどを使わせたかったので、初めは垂直に潜っていく話でしたが、つくしあきひと先生の「メイドインアビス」とかぶるため、地面に降りたら死ぬ、という設定を考えました。
ファンタジー要素はもはやこの
と、芋づる式に話が設定が出来上がっていきます。
脳をほとんど使っておらず、脊髄反射です。
ほぼ無意識にこうなっていったので、あまり計画性はなく、あとで結構なところで破綻がありましたが、そこはゴリ押しでどうにかした感じです。
大筋だけは最初にかっちり決めたものの、細部はほとんど意図的なものではありませんでした。[^3]
[^2]: この場合の厳しさは「難易度」ともいうべきもので、あまり人生哲学とは関係がありません。でも挑戦すればするほど孤独な世界に入っていく……というのは、無意識下で「目的以外は全て捨て去る」「純化させる」という意図が入っている気がします。
[^3]: 破綻しまくったので、慌てて階層やラストアタックの時系列を表計算で管理しました。
▽
連載中の「物理法則のアップデートに失敗しました」では、それを全部意図的にやってやろうという意欲作(注 : ぼく的に)です。
いうまでもなく、伊草さまとのやりとりの中で「いっちょぼくも計画的に話を書いてみよう」と思ったのがきっかけです。
ならば、思いつく限りの色々を詰め込んで、ちゃんとコントロールしてみよう。
違う書き方をしてみよう。
というわけで、じわじわとゆっくり更新している次第です。
▽
というわけで「“過酷な世界と、そこで魅力的に生きる人たち”を、どうして書きたいと思ったのか?」という質問の答えは、ざっくり言えば「無意識」で、丁寧に説明するならば「純化を狙って余計なものを取っ払っていくとどうしてもそうなってしまう」あるいは「物語の都合上」というのが答えになるかと思います。
そして、そういう場所でこそ、ぼくの中にいるキャラクターたちは自由に動いてくれるのだと思います。
何もかもが満たされた世界に放り込んで、勝手に動いてくれるキャラクター……今のところ、ちょっと想像がつきません。
というわけで「無意識ですが、純化させるため」というのが最終的な答えとなります。
▽
では、最後に伊草さまへの質問返しで終わろうと思います。
# C. 現実に存在するものをテーマにするのは怖くないのか?
伊草さんの代表作「識域のホロウライト」では、パルクールが一つの舞台装置として効果的に描かれています。
ですが、パルクールは現実に存在するわけで、そのディティールやら何やらはかなり書くのが難しいのではないかと想像します。
伊草さんご自身がパルクールをされるのでもない限り、テーマにするのにはそうとう勇気が要ったのではないか? と想像しています。
同時に、Ex. 付録 においてさらにパルクールを中心に据えて物語が進行していきます。
スピード感とかかっこよさは余すところなく表現され、それどころか逆にパルクールのイメージそのものを変質させるような読了感に舌を巻きました。
ぼくなら、怖くて絶対に書けません。
すげー……。
パルクールを使おうと思ったきっかけ、そのための準備(調べ物など)、執筆の際に気をつけたこと、怖くなかったかどうかなど、「識域のホロウライト」の魅力をかたちづくる重要な一辺であるパルクールについて、伊草さんなりの思いを聞かせてください!
▽
はー、書ききった。
「ちよろず」はじめての5000文字オーバーです。
楽しかった!
何かあったらまた誘ってください!!
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