★★★ Excellent!!!
『願い』の代償は以下に? カキロゼ
まずこの作品で目に付くのは、圧倒的なまでに緻密な戦闘描写です。ビルが壊れ、宙を化け物と少年少女が駆けていき、銃弾や異能が飛び交う戦場を目の前に再現してくれるかのような描写の数々はなかなか見れるものじゃありません。
その戦闘描写で魅せてくれるのが、識域と呼ばれる空間での異能バトル。主人公の直衛佑は突如として識域に巻き込まれ、覚醒し、自身の『願い』を元に識域で力を発揮するようになる。
この作品の面白いところは、『願い』に対して非常にシビアなところだ。
愛する人は願っても振り向かないし、大切な人は生き返らない。後悔した過去には巻き戻れないし、失ったものは取り戻せない。その上で大願を望むのであれば、己の人間性から何まで全てを捧げろ、といわんばかりの世界。
現実でもそうではあるだろうが、だとしてもシビアだ。チートを使ったならチートを使ったなりの罰は当然、と作品全体をもって主張してくる。
──じゃあ、身の丈を超えた願いを持つのはダメなのか? 人の人生に干渉しちゃいけないし、自分の叶えられることだけを行っていればいいのか?
そうではない、とこの作品は訴えているように感じた。そしてその答え自体は、最後まで読んだあなたが感じたままを、答えにしてほしい。
ここまで読んでくれたのなら、貴方には少なからずこの作品に対して『アンテナ』があってると思う。
識域のホロウライト、お試しあれ。