第4話軽音部

 ふぅと一つため息をつく。

今は軽音楽部真っ最中。

いつもの五人で練習をする。

最近はやっているNと言う人の「アイデンティティなリリック」という曲をバンドの発表でやるということで今猛特訓中。

だが、私は練習する必要はない。

だって、私がNだから。

ちなみに私と里美ちゃんがギター、翼がベースで、大河がドラムで、紅葉がキーボードだ。

それにNというのは去年から人気のyabtubeで人気の作曲者である。

まだ女の子ということもばれてない。

そして、今はリズム隊は猛特訓中。

この曲をやろうと言い出したのは私ではなく、里美だ。

里美はマイナーな曲が大好きで、そんな曲を演奏しようと言い出したから。

ちなみに練習し始めたと同時にyabtubeで人気になった曲だ。

 今私は思いつきでみんなにスポーツ飲料水を自販機で人数分買って教室に向かっている。

そこからも微かに音が聞こえた。

猛特訓中のベースとドラムの音。

聞いていると、すごく努力が伝わってくる。

すごいなぁ、みんな。

私が四日もかかって作った曲を一日半で通しで演奏できるようになって。

やっぱりなんだかんだでみんなのこと尊敬しちゃうな。

そんなことを思いながら、教室に戻る。

「みんな、お待たせ。スポドリ持ってきたよ」

そう言って、みんなに配る。

7月上旬で少しばかりではないが、暑くなってきている。

「ありがとう、さすが音子だわ」

「本当にありがとな。黒田、サンキューな」

そうやって、みんなはスポドリを開ける。

そうすると、里美ちゃんが私の横に立ってスポドリを飲み始める。

「あれ?音子ちゃんの分は」

「ううん、私は大丈夫。みんなさっき飲んでたとき無くなってたって言ってたから。私はまだ残っているし」

「そう?でも、なんかあったら私の遠慮無く飲んでもいいからね」

「うん、ありがと」

そうやって、言いながら私はジャッとギターを軽く鳴らす。

「一回通して見るか」と翼が言い出した。

「リズム隊はさっきの練習で二人では納得するのはできた。でも、全体で通すと完璧じゃないかもしれない。それを確認するためにやらせてくれ」

それはそうかもしれない。

このまま分かれて練習するよりも、一回全員で合わせるのが賢明だと思う。

「じゃあ、やろっか」

そうやって、一回曲を通した。

うーん、今はキーボードはちょっと紅葉に任せてるけど少し音が浮いちゃっている。

しかも、ラストのサビで重要なところ。

動画では裏で重ねて音を鳴らしているので浮いては聞こえない。

生演奏だからできることが私はしたい。

「あのさ、紅葉。ちょっとサビの相談したいんだけどいいかな」

私はそう言う。

「うん、いいけど」

そう言って、少し気になることだと思うから二人で場所を変えて話しをする。

「あのラストのサビの音が浮いちゃっててどうしようかなっておもうんだけど」

それを話すと紅葉が暗い顔になるどころかぱぁっと明るくなった。

「私も今そこ相談したいと思ってたんだよね」

「えっ!そうだったんだ」

やっぱり、考えていること一緒だったんだ。

そう思うとなんかバンドの一員として誇らしい気持ちになる。

「じゃあ、ここの音をこうやって……」

そうやって、話して二人でラストのサビの練習をすることにした。

そのまま、今日は時間が早く過ぎていった。


 家に帰ると、知乃がだっと玄関に走ってきて私に飛びついた。

「おかえり、お姉ちゃん」

なんか知乃にお姉ちゃんっていわれるのがどこか心地いい感じがする。

そのまま「ただいま」と返し、私は自分の部屋に着替えに行った。

そして、シャツだけ洗濯機に入れてその流れで洗濯した。

私はそれから冷蔵庫に冷えてある天然水を取り出し、そのまま飲む。

そうしていると、家のチャイムが鳴った。

「あっ、莉子さん」

この人は斑目莉子。

母のお姉ちゃん。

今はここは本当は私たち姉妹と莉子さんで住んでいる。

「久しぶりだね」

でも、莉子さんは仕事とかで中々帰ってくることはない。

「今日は帰ってこれたから」

そう言って莉子さんは冷蔵庫を漁り始める。

「おっ、あった。あった」

そう言って酎ハイを手に取り飲み始める。

ほんとにこの人は。

莉子さんはこの家に帰ってきたらすぐお酒を飲む。

「やっぱ酒だわ。仕事がある週は飲めないからな」

それを聞くに、最近は仕事が多く飲めなかったらしい。

「今日は私が料理するよ」

そう言って、私は台所に立つ。

そこから私は軽く丼ものと野菜和えみたいなものを作り机に並べる。

「おぉ、さすがお姉ちゃん。おいしそー」

そう言って私はみんなのお箸も並べる。

そう言って、みんなで食卓を囲む。

『いただきまーす』

そんな元気な声がこの空間にこだまする。

「さすが音子だな。本当にいい彼氏できると思うけどな」

そんなことを言って、莉子さんは茶化してくる。

でも、この茶化し方もいつもと同じだ。

「何回目ですか。それ言うの」

「あれそうだっけ」

本当に莉子先輩はお酒弱いくせに飲むのは人一倍好きだからな。

そのまま飲む。

でも、この生活が人間としての営みなのか。

楽しいな。

そして、ご飯を食べ終わってからは私は自分の部屋に戻って作曲をする。

このことは家族にもまだ言ってない。

まだ話すのは先でも良さそう。

ちなみに私は学校で予習や復習を終わらせるタイプだから別に家でやることはない。

部屋の扉をこんこんとたたく音が聞こえてくる。

「お姉ちゃん。今いいかな」

そう知乃の声が聞こえてくるから保存をかけて、パソコンを閉じてからいいよと声をかけた。

「いいよ、入ってきて」

そう言ってから知乃が入ってくる。

「この土日ってお姉ちゃん練習ない?」

「うん、ないけど。部活のメンバーで水族館行く予定かな。そうだ、私チケット買うから一緒に行く?」

そう言うと、知乃が元気にうんと頷く。

まぁ、みんないい人だから別にいいでしょう。

今まで見たことのないような笑顔で持っている知乃のスマートフォンには「西川水族館」のホームページが開いてあった。

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