第21話⁂〈バイオレット王国〉⁂




〈ジャイアント プラント王国〉の家臣たちは静蘭の行方を探し出そうと血眼になって居る。

一方の静蘭は〈ジャイアント プラント王国〉に居てはすぐに捕まり、同じことの繰り返し。そこで…打開策を思案中。


(興奮すると元の姿、頭が二つの本来の醜い姿に逆戻りしてしまう。それでも…ベニー王の事は心から愛している。何とか元に戻らない永遠の美を手に入れたい)


 そう思い暫く異国の地に潜り込もうと思い立った静蘭だった。


 こうして全く別の姿に変わって「ギャング王国」に潜り込んでリンゴ婆さんに変身した。


 そして静蘭はこの「ギャング王国」で、本来の目的である、永遠の美を手に入れる事が出来た。それなのにである。何故「リンゴ婆さん」の姿で、こんなガラの悪い

「ギャング王国」ジノ王の拠点ラバー城のお手伝いとして、留まっているのだろうか?


 永遠の美を手に入れたのだから〈ジャイアント プラント王国〉に戻り、愛するベニ-王の妃になれば良い事なのだが?何故か?このギャング王国に留まっている。 


 実は…静蘭「リンゴ婆さん」には、恐ろしい秘密が有る。

 

 それは一体何なのか?


 そこには、幻想世界の三つ目の扉〈バイオレット王国〉の恐ろしい生物が関わっている。 



 ◆▽◆

 ああ……そう言えば、まだ〈バイオレット王国〉の事を詳しく説明していなかったので、辺り一面見事に紫世界のバイオレット王国の事を詳しく説明して行こう。

 

 幻想世界の三つ目の扉

 

 ⁑薄っすら明るいのだが、太陽の光が弱い紫世界。


 槍の様な歪なビル群が建ち並び、星だけが無数に瞬いている幻想世界だが、時々雲がまるで化け物の様に醜く表れ出して、そして……その無数の紫の雲が慌ただしく流れ出している。果たして生物は存在するのか?


 そもそもムラサキは、古代中国、律令時代の日本などでは、高位を表す色とされ、気品の高い神秘的な色とされていた。


「神々が護る紫世界」といわれるこの〈バイオレット王国〉は空を湖面に映し出す「天空の鏡」と呼ばれる神秘的な絶景が現れている。


 紫世界が広がる天空に目を向けると、無数の薄紫色のひこうき雲が矢の如く飛び交っている。

 そんな幻想的な紫の空に、星屑が金色の雨のように無数に降り注ぎ、煌びやかな演出をしてくれる。薄紫色のひこうき雲も負けじと、モクモク迫力満点の美しさを爆発させている

 

 そして…今度は、右側に目を向けると、なんとパープルブルーの入道雲がもくもくと暴れ出して来た。

 

 誠に雅で美しい景観ではある一方で、何とも美しい幻想世界に、突如として現れた紫の雲が不気味に暴れ出した時には……何かしらそこはかとなく恐ろしい……静と動、美しさと狂気の両面が混在しているような……一気にこの世界の裏側に見え隠れする狂気が、ひょっこり頭をもたげ出したように思えた。


 更にはこのバイオレット王国の美しさの由縁は、「天空の鏡」といわれ、美しい紫の空が海に映し出されて空と一体化しているのだが、その境界線には、あの美しい淡い紫色のふじの花と寸分変わらぬ花が、見事に垂れ下がり咲き誇り、空と海の境界線に咲き誇る事によって、「天空の鏡」を一層華やかに異質な美しさに塗り替えている。

 そして…空と海の境界線にゆらゆら揺れているふじの花が、芸術的な曲線を描いた枝に見事に美しい花を咲かせ、華やかに浮かび上がり、そこだけ和空間の世界が広がっている。


 ◆▽◆

〈ジャイアント プラント王国〉の家臣たちは静蘭の行方を探し出そうと血眼になって居る。


 一方の静蘭は〈ジャイアント プラント王国〉に居てはすぐに捕まり、同じことの繰り返し。そう思い、この「ギャング王国」にやって来た最初の内は只々〈ジャイアント プラント王国〉の追手の者達の言動が治まりさえすれば、すぐにでも帰還するつもりで居た。


(何でこんなガラの悪い闇夜の極夜に、好き好んで居なくてはならないの?一分一秒たりとも居たくない。治まりさえすれば「ギャング王国」とはおさらばよ!)そう強く思っていた。


 そんなある日強盗団の一味が、怪しい煙がもくもく出て来る怪しい花瓶のような、アラブの魔法の瓶のような入れ物を、身体に降り掛けていた。するとその男達は一瞬で姿を消してしまった。


 一体どういう事?

 そこで不思議に思った静蘭は、話し掛けて見た。


「どうしたのよ?みんなどこに消えたの?」


「ワッハッハーワッハッハー違うんだよ。これは煙を被ると自分が願う姿に変身できるんだヨ!おいら達は泥棒の一味だから…姿を隠して忍び込むのが一番良いだろう?だから透明人間に変身したって訳。それでも……一日経てば元の姿に戻るんだ」


「な~んだ~?永遠に変身出来ないの?」


「ああ……永遠に変身出来る手はあるよ。それはね?〈バイオレット王国〉の海底深く潜り込んで、アクアの世界の魔女に会う必要が有るらしいんだよな?だけどね。そこに辿り着くのは至難の業じゃないんだよな~?だから…止めた方が良いと思うけど?」


 実は…〈バイオレット王国〉は、あれだけの美しさと謎をはらんだ、怪しげな世界だが、実は…その美しい海の底には、恐ろしい生物が存在していた。


 嗚呼アア……嗚呼アア……ひょっとして…神様銀次が言っていた『隠されている秘密』は、〈ジャイアント プラント王国〉の動植物の巨大化に有るらしいが、ひょっとして〈バイオレット王国〉の海底深くに住む、アクアの世界の魔女に魔法を掛けられ永遠に巨大化する蛇に変えられたって事かも知れない?



 だって……あの〈ジャイアント プラント王国〉の生き物達は最初は、普通の動物や植物だったのだが、ある日、巨大化させなくてはならない理由が出来て、巨大化させられてしまったという事は十分に考えられる。

 

 その生物とはひょっとしたらその魔女だったのかも知れない?


 それから『隠されている秘密』とは、どういう事なのか?

 

 ◆▽◆

 静蘭「リンゴ婆さん」は、〈バイオレット王国〉海底の生物によって永遠の美を手に入れたかに思われたが、とんだ落とし穴が待っていた。


 という事は……静蘭はあのアクアの世界の魔女に会いに行ったのだろうか……?

 そして…「永遠の美を手にした」のではなく、「永遠の美を手にするする方法を教わった」だけだったのかも知れない。

 

 そして…とんでもない事に、自分の意に反して「リンゴ婆さん」の姿から元に戻れなくなってしまった。


 あのアクアの世界の魔女によって、永遠にリンゴ婆さんの姿にされてしまったのかも知れない。

 だから…小手先の魔法の杖で変身を遂げているが、直ぐにリンゴ婆さんに逆戻りしてしまう。


 そして…あの最も大切な魔法の扇子が見当たらないのだが、一体どこに消えたのか……?


〈バイオレット王国〉の海底深くに住むアクアの世界の魔女には、どんなたくらみが有るのだろうか……?

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