第17話⁂リンゴ婆さんの過去⁂


 実は…その昔、巨大植物都市〈ジャイアント プラント王国〉は大蛇の楽園だった。


 巨大な、それこそ世界一美しいヘビとも言われる蛇も多く存在していたが、オオアナコンダやアミメニシキヘビの様な巨大な蛇も無数存在していた。


 ヘビは一般的に夜行性と思われがちだが、そんな事はない。当然昼行性のヘビも多く存在する。


 人間が生み出した建造物と微塵も変わらない美しい庭園の数々。

 蛇は今も昔も化身の対象。

 それは、一昔前〈ジャイアント プラント王国〉の蛇たちは姿を変えて、化けて建設に関わっていた。


 例えばコウモリの様な巨大な羽根を蓄え空を自由自在に飛び、更には手を使う時は羽が身体に収まる龍の姿に化けたり、知性みなぎる人間そのものに化けたり、巨大な怪獣ゴジラのような風貌、それは体が「丸ビルくらいの大きさ」「象ぐらいの大きな耳」「全身に鋼鉄のようなウロコ」「体をくねくねうねらせ素早くどこでも上る」「全身から光を放って周囲を木端微塵に燃やし尽くす」というもので、イグアノドン、ティラノサウルス、ステゴサウルスなどの恐竜のような「魚のうろこ状」「いぼのような半球状の突起物」ワニをモチーフにしたウロコにも岩にも見える皮膚の怪獣に化けたりしていた。


 そして…美しい巨大植物都市〈ジャイアント プラント王国〉が出来上がり巨大蛇達は幸せに暮らしていた。


 だがある日、この美しい〈ジャイアント プラント王国〉に隕石が降り注ぎ瞬く間に、この美しい〈ジャイアント プラント王国〉は、粉々に打ち砕かれ燃え尽きた。


 それ程巨大な隕石では無かったため被害は最小限に抑えられて、他の王国には人的被害は出なかった。

 だが、矢の如く降り注いだ隕石の影響で、この〈ジャイアント プラント王国〉の最重要建造物、生活の拠点、更には荘厳な教会のステンドグラスやヨーロピアン風建造物は、爆破の威力で粉々に打ち砕れた。


 いくら大蛇の楽園と言いえども湿った湿地帯。

 川が幾重にも流れている為、ワニも居れば魚も泳いでいる

 他には小動物も住んでいる。ネズミやカブトムシやバッタに、それこそ数えればきりがない。

 ただ、どういう訳か肉食獣ライオンや虎、ヒョウのような動物は生息していない。

 きっと大蛇の威力に自然淘汰が進んだのかも知れない。


 だが、残念な事に、そんな生き物たちも、この事件で一斉に居なくなってしまった。


 ◆▽◆


 こうして逃げ延びたリンゴ婆さん実は…その時に、とんでもない事を仕出かしていた。このヘビの楽園の女王様の扇子を盗んでいたばかりか、更にとんでもない酷い事を⁈


 

 

 この大蛇の楽園には得も言われぬ美しい蛇たちが存在していた。


 女王様は、世界一美しいと称される〈サンフランシスコ・ガータースネーク〉に瓜二つのそれはそれは美しい大蛇だった。


 そして…この王国の蛇の王様であるオオアナコンダ「ベニー王」の妃でヘレン女王には、世継ぎのヘンリー王子が居るのだが、「文武両道」で全てに、秀でた完璧な青年なのだが、それだけあって非常に理想が高い。それなので、ちょっとやそっとの女性じゃ相手にならない。


 持ってくる縁談持ってくる縁談どれもこれも難癖付けて門前払い。

 これに異を唱えたのは誰有ろうヘレン妃。


 この女王様魔法の扇子をお持ちで、縁談話をことごとく蹴る息子に困り果てて、この扇子で、ヘンリー王子好みの女性を編み出そうとお考えになった。


 その方法は、良家の子女大蛇に「えい!」と、この扇子を広げて一振りすると言うもの。


 あらまあ!するとどうでしょう。それはそれは世にも美しい〈ニジボア〉の大蛇に様変わり。その美しさときたら虹色に輝く蛇で、一見色鮮やかなオレンジ色の蛇だが、動き出すと一気に様変わり、光沢のある蛇で動く度に、光の加減で虹色のレインボ-カラーに変貌する様は、魔法に掛けられた、おとぎの国の幻の神々しい生き物にしか見えない。


 こうしてやっとの事、理想の半端ない高いヘンリー王子の縁談は成立した。

 

 そして…この〈ジャイアント プラント王国〉巨大蛇が支配す王国は、資源も豊富で豊かな自然と恵溢れる夢の楽園だったのだが、運の悪い事にあの日、隕石が降り注ぎ瞬く間に、この美しい〈ジャイアント プラント王国〉は、粉々に打ち砕かれ燃え尽きた。


 こうして…多く蛇たちは息絶え絶滅したかに思われたが、リンゴ婆さんのように他の王国に逃げ延びた大蛇達も多くいた。


 


 実は…リンゴ婆さんは〈ジャイアント プラント王国〉の中でも下層階級の醜い頭が二つ胴体から出た醜い大蛇であった。リンゴ婆さんは、一つの心臓と一つの肺を持つが、脳・気管・食道は、それぞれの頭部に一つずつの、計二つ存在する奇形だった。


 だから…いつも土の下に潜ったり、自分の柄に似通った木に擬態したり、川の浅瀬に隠れ、他の蛇から隠れて世捨て蛇のように、自分を産んだ親を呪い、自分自身を卑下して生きていた。


 だが、こんな醜いリンゴ婆さんだったが、ある日幸運が迷い込んだ。


 それは、この〈ジャイアント プラント王国〉にとっては最悪の出来事では有ったが、リンゴ婆さんにとっては「災い転じて福となす」と言う言葉通り、とんでもない幸運が迷い込んだ。


 それは、あの隕石が傍若無人に降り注いだ日、動物たちは皆、右往左往チリジリバラバラに逃げ惑っていた。それはリンゴ婆さんとて同じだ。


 リンゴ婆さんは、二つの頭部があるので脳みそや目や耳、鼻も常人の二倍あるので蛇の二倍の視覚、聴覚、嗅覚が備わっている。危険を察知する能力も二倍だ。


 こうして一番安全な場所、蛇のお城に忍び込んだ。

 だが、この一番安心な城でさえ危険にさらされて、あの絶世の美女ヘレン妃に遭遇した。

 全国民の羨望と憧れの対象である美しいヘレン妃だったが、隕石の影響で、世界一美しい、まさに宝石箱から飛び出して来たような色鮮やかな蛇の女王様だったのだが、とんでもない事になって居た。


 その美しさたるや 、一目見たら余りの美しさに夢に出て来て、感激の余りうなされるくらいの絶世の美女だった。

 ブルーグリーンの奥深さと鮮やかなターコイズブルーの色を併せ持つ、光輝くトルコ石色の横縞と、深いサンゴ色、赤い珊瑚が砕けてオレンジ、ピンク、明るい赤色が混合した実に色鮮やかな色なのだが、『コーラルピンク』を、より鮮烈にした色 と黒色の縦縞が並んでおり、それはそれは美しい蛇である。


 ヘレン妃は〈サンフランシスコ・ガータースネーク〉に瓜二つの大蛇だったのだが、隕石の影響で目は繰りぬけ、色鮮やかな表皮は無残に焼けただれてしまっていた。


 だが、その時ヘレン妃は、扇子を広げて「えい!」と一振りした。

 すると…醜くただれた表皮や目が一瞬にして元の美しい女王様に戻った。


 その時…リンゴ婆さんは、(千載一遇のチャンス!)そう思った。


 どういう事かと言うと妃は確かに元の美しい妃に戻ったが、身体事態はボロボロに弱っていた。幾ら外見は美しくても身体は衰弱して、やっとの事うごめいている。


 そこでリンゴは考えた。

 今は皆自分の事で精一杯で、例え女王様と言えども、助ける暇などない。

 誰もかれも、そんな悠長な事は言っていられない。


(そうだ!今女王様が弱っている所を一気に殺して、この変身出来る魔法の扇子を奪えば、今まで皆から醜いと馬鹿にされ虐げられてきた、あの辛かった過去を消すことが出来る。そして絶世の美女に変身して、今まで散々バカにした皆の鼻を明かしてやりたい!)


 こうして…一国一城の、それも女王様の顔を傍に落ちていた岩の破片で、粉々に顔が分からない様に、クシャンクシャンに潰してしまった


 何とも恐ろしい女!


【オオアナコンダは 全長10mを越えるとも言われるが、現在確認されている中ではアミメニシキヘビの9.9mに次いで世界第2位。しかしアミメニシキヘビと同じ長さでも体重はずっと大きい。だから…オオアナコンダは、最も重いヘビの一種であることは事実であり、体重250kg、胴回りは直径30cm以上になりメスはオスより大きい。南アメリカ北部に分布する。水を好むアナコンダは。浅瀬で待ち伏せによる狩りを行い、獲物を長い体で絞め殺して飲み込む】

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