第16話⁂世にも美しい蛇⁂


 ルフィ姫は、記憶の片隅に遠い記憶日本の父をジノ王に投影していた。

 ジノ王は父より一〇歳ほど年上なのだが瓜二つなのだ。


 だから…このギャング王国に閉じ込められた時にも(神様銀次から仰せつかった重要任務をこなさなくてはいけないのに、こんな場所に閉じ込めて!)そう思い本当は恨むべき存在のジノ王だったのだが、暫くはこのジノ王の事を悪者とは思えなくて、思いたくなくて、神様銀次の言葉に背き、ジノ王に甘え切っていた。


 それは…こんな見知らぬ世界に転生させられて何の幸せが有ろうか、只々不安ばかりだ。たとえそれが悪人だったとしても、今のルフィ姫はジノ王に甘えるのが何よりもの安らぎであったし、自分の遠い記憶を呼び起こさせる、唯一の方法だったのかも知れない。


 まさか、五〇歳近くも年の離れた孫のような存在のルフィ姫に、恋心を募らせるなどあり得ない事だと信じ切っていた。


 だから…ジノ王に抱きしめられるのはルフィ姫にとっては何物にも代えがたい幸せだった。

 それが・・・・ある夜とんでもない事に……牙を剝き出し⁈


 

 それは……ルフィ姫が、ベッドで眠っていると何やら胸の辺りが締め付けられるような?イヤイヤ何か異物が忍び込んできたような……?


 眠りこけていたルフィ姫では有ったが、余りの感触の凄さに目を覚ましてしまった。


 すると……いやらしいジノ王が身体をルフィ姫に密着させて、華奢な体型に似合わない巨乳のおっぱいに手を忍ばせていた。


「キャ————————————ッ!ナナ ナッナ 何をするのですか?」


「良いではないか?姫をこのギャング王国の妃に迎えようと思う。さすればわしが死ねば莫大な遺産が転がり込むではないか?それから…ルフィ姫は、ワシの事が好きなのであろう?いつも甘えて抱き付いていたではないか?」


「それは…それは…異性としてでは無くて……どこか……懐かしい……到底他人とは思えない……父の様に思ったからです。まさか、こんな行為をする薄汚いお爺ちゃんだとは思わなかったので……」


「何を言う?ワシはまだ六十三歳だ。まだ気持ちは青年のつもりで居るのにお爺ちゃんだとは酷すぎる!😡」


 ルフィ姫は、こんないやらしいスケベオヤジに怒り心頭で、あっさり縁を切って五つの扉が有る「ファイブドアーズ星」の任務に取り掛かろうと思っては見たが、余りにも酷いこのギャング王国の有り様に、絶対に見過ごす事は出来ない。


(神様銀次が言っていた言葉「ファイブドアーズ星」の守り人となって隠されている秘密を解き明かしてくれ。例えそれがどんな恐ろしい結果であっても……その後には静寂が訪れるであろう。『その秘密って何?』そしてその時には……その「ファイブドアーズ星」の永遠の守り神となってくれ!そう神様銀次から仰せつかったが、その言葉を解き明かさなくては……その為にも暫くこのギャング王国に留まり、これだけ悪事の限りを尽くすジノ王の裏の顔を暴いてやろう?)


 こうして…ルフィ姫はこの極夜のギャング王国に留まっている。

(第一あの魔女リンゴ婆さんが怪しい。あの婆さんにはどんな秘密が隠されているのか?それも探る必要がある)


 

 ◆▽◆


 実は…このリンゴ婆さん巨大植物都市〈ジャイアント プラント王国〉からやって来たらしい。

 

 それではその巨大植物都市〈ジャイアント プラント王国〉とはどのようなものなのか?


 深い森には花と緑あふれるジャングルがどこまでも広がっていた。

 それはまるで、熱帯のジャングルに飛び込んだかのように、カラフルで珍しい植物の宝庫、約40,000株の四季折々の花や緑に癒される植物の数々。


 

 そして…今度は北西に目を向けると、まるで世界が一変する。

 ナイアガラの滝を彷彿とさせるその滝は、リラン湖の水がオタリオン湖に降り注ぎ、その途中のラレンアガ-川に勢いよく流れ込み出来た巨大な滝である。

そのラレンアガ-の滝は壮大かつ迫力満点の鬼気迫る自然の芸術。


 圧巻の迫力に見入っていると丁度その時、今度は勢いよく流れるラレンアガ-の滝に、何とも美しい七色の虹が架かった。それはそれは圧巻の迫力と美しさである。



 南方に目を向けるとフランス式庭園で、ベルサイユ宮殿をモチーフにした「愛の泉」がある。そして…ラベンダーでいっぱいのプロバンス式庭園や、地中海のザクロの木が植えられているスペイン式庭園もある。庭園には、ギリシア神話の神々らしき像が建っている。「ペガサスの噴水」のまわりには深紅の薔薇や、ピンクに青の薔薇の花が所狭しと咲き誇っている


 シンメトリーな景観、青い色の水底の数多くの通路と水路があり、たくさんの噴水が並んでいる。それでも…庭園が有るという事は人間が住んでいるのか?


 イエイエいえ……これは自然が生み出した芸術?

 それでも……ギリシア神話の神々らしき像や「ペガサスの噴水」は一体どういう事?これはこの〈ジャイアント プラント王国〉が出来る以前から建造されていた。

ひょっとしたら未知の人間以上の知能の宇宙人が住み着いて建造したのかも知れない。

   


 そして…今度は少し紅葉を楽しみながらキノコ探しでもしてみよう。

 森の奥深く進むと、豊かな自然を歩くので、時には山ブドウやアケビといった山の幸や多彩な植物や動物と出会うことができる。それでもどれもこれも巨大だ。


 キノコはかれ木やたおれた木、切りかぶなどの上によく見つける事が出来るが、異様に巨大化している森の木も巨大で種類がちがうと、生えているキノコも違う。また、森の中の地面や草地から出ている巨大キノコもある。


 かれ木や切りかぶにはシイタケ、ナメコ、タモギタケによく似た多くの巨大キノコが生えている。また、深い森の中や山々には、色とりどりの高山植物や花々が咲き乱れて、赤や黄色や緑に青の花吹雪が舞ったかのような、イヤイヤ……もっとカラフルな絵の具を傍若無人に塗りたくったような、何とも美しい森と山々を堪能することが出来る。

 その美しさはそれは舞台役者の千秋楽の花吹雪の比ではない、圧巻の迫力と美しさが広がっていた。



 そして…リンゴは一体何者なのか?

 実は…リンゴ婆さん、この巨大植物都市〈ジャイアント プラント王国〉の森の中に住む世にも美しい蛇だった。


 蛇は古来より信仰の対象、古代の多くの文明圏において生と死の象徴とされた。そして…日本民族の中でも徐々に「生」と「死」の象徴として神格化され、信仰の対象となっていったとも言われている。


 キリスト教では蛇は人間に原罪をもたらした邪悪の権化。また 脱皮を繰り返す蛇は死と再生の象徴とも言われている。


 まあ、諸説あるが、ヘビは崇高かつ「生」と「死」の象徴として神格化された生き物であることは間違いない。



 そして…この〈ジャイアント プラント王国〉の森の中には、世にも美しい蛇〈ニジボア〉と〈サンフランシスコ・ガータースネーク〉に瓜二つの巨大な蛇が住んでいた。

この巨大な世にも美しい蛇たちに起こってしまった不幸な出来事を解き明かす前に

、世にも美しい蛇〈ニジボア〉と〈サンフランシスコ・ガータースネーク〉がどれほど美しい蛇なのか説明しなくてはならない。


 〈ニジボア〉

 一部では世界一美しいヘビとも言われ、独特な模様が印象的であるが、なんといっても光の当たり方次第で虹色に輝く蛇で、色鮮やかなオレンジ色の体色を持っている全長は2mほどのヘビ、また胴体には黒い輪っか状の模様が入っている。煌びやか且つ美しい宝石の輝きを持つ蛇だ


〈サンフランシスコ・ガータースネーク〉

 このヘビこそ、まさに世界一美しい蛇と言えるだろう。まさに宝石箱から飛び出して来たような色鮮やかな蛇だ。トルコ石色の横縞と深いサンゴ色と黒色の縦縞が並んでおり、光り輝く警戒色のような鮮やかさがある。どちらのヘビも温暖を好む


 この美しい蛇達の住む森で悲劇は起こった。


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