第10話⁂銀次神様⁂
それでは先ず、碧と莉子が永遠世界の神様銀次と、どのようにして巡り合ったのか?
莉子が不慮の事故に見舞われたあの日。
青信号に変わったので莉子が信号を渡っていると、車が勢いよく右折して来た。
「あっ!アブナイ!」
碧は、咄嗟に目の前の莉子を助けようと駆け込んだ。
キキキ————————ッ❕ボッカン///〷グッシャン//〷バリバリバリ〷∥ド—————ン
もわん もわん もわん もわん もわん もわん
「コッここは一体どこ?」
碧は、永遠世界の雲の上で不思議な体験をした。
白い長い髭の白髪頭を肩まで垂らした、格好は白い衣に、はかま姿の、杖をついた「銀次」という名のおじいさんで、日本の神様のような格好の老人が現れた。
【名前の由来:何にでも銀を使うので「銀次」】
「アア……よう来たのう。ワシはこの永遠世界の神様で「銀次」だ。おぬしは運悪く交通事故で死んでしまった。前世では実に高慢チキで、いけ好かない男の子だったが、まぁそれでも…?死の間際に唯一自分の死も恐れず、女の子の命を救おうと車に飛び込んだ。だからお前に一つだけ徳を与えよう。お前は学校の帰りに死んでしまったのだが、今…持っている物で一番大切なものは何じゃ?」
「エエエエエエ————ッ!僕死んじゃったんですか?全然痛くもかゆくも無かったんですが?」
「ああ……そういう事か?それは即死だったからじゃ!おう…おう…気の毒にのう。学生服姿じゃが、それでも何か一番大切なものがその中に無いか~?」
「まぁ?強いて言うなら、この胸のポケットに入っている手帳が大切かな?何でもメモっている大切な手帳だから……」
「分かった!今一番大切なもの、その手帳を銀色に変えてやる。その銀色の手帳がピカピカ点滅したら手帳に手を触れて『 アブラ オーム シャンティ アブラシャンティ アブラシャンティ』と三回唱えると、どんな願いも叶う。アア……嗚呼アア……ああ……でものう?最近足腰も弱ってのう……動くのがやっとじゃ……だから…スッカリ物臭が板についてしまって……だから…案外効能が薄れるかも知れん……その時はこの真言を唱えると良い『おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まにはんどま じんばら はらばりたや うん』最低3回唱えるといい。口に出して唱えても心で唱えても、それどころか聞くだけでも御利益がある真言。じゃ~分かったな?ほ~れ碧、おぬしの行先はここダ—————ッ!」
グル グル グル グル グル グル グル グル グル グル
「アレ————————————————ッ?」
こうして…安土桃山時代に転生してしまった碧だった。
※【『アブラシャンティ』と言う呪文、その語源は不明らしいが、「アブラカタブラ」は魔よけの呪文。アラム語やヘブライ語が語源らしい。一方のマントラはインド密教教伝とやららしいのだが、『要は病気や災いを払う。呪文すべての願いを叶える』などの御利益が有るらしい。
高齢の神様銀次は最近めっきり、ものぐさが板についているらしい。まぁ難しい事を言っても始まら~ない。手っ取り早く「ご利益さえあればなんでも良い。くっつけちゃえ~!」という事になっちゃったらしい?許してね————————ッ!】
※〈願いを叶える日本最強の真言『おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まにはんどま じんばら はらばりたや うん』【光明真言】は全ての困難、災難を取り除き、除霊や運気上昇など万能の霊験あらたかな真言〉
一方の莉子の方はどの様に異世界転生したのか?
辺り一面ふわふわした雲に覆われた世界で途方に暮れていると、杖をついた白髪頭の老人が、雲に乗りヒューっと現れた。
莉子も碧と同じ神様で、白い長い髭の白髪頭を肩まで垂らした、格好は白い衣に、はかま姿の、杖をついた「銀次」という名のおじいさんだった。
莉子もやはり永遠世界の雲の上で不思議な体験をした。
それでもやはり老人だ。杖をついて居るにも拘らず、よろよろとよろけて倒れた銀次神様。
「アア……大丈夫ですか?」
咄嗟に老人を救い上げた莉子。
「どうも…年で足腰が弱~なってしもうてのう」
その時莉子の顔を見た神様銀次は、一瞬心臓が止まるかと思うほど驚いた。
それは…莉子の左目が一瞬銀色の光を放ったからだ。
(わしが、延々と探し求めていた銀色の瞳を持つ少年か少女どちらでも良いが、五つの扉の守り神に相応しい少女とやっと遭遇できた。どれだけこの日を待った事か)
「おぬしは前世では福祉活動を積極的に行う少女だったらしいな~?」
「ハイ!両親が老人ホームを経営していますので、おのずとお年寄りが好きになりました」
「ああああ……道理で人の心や行動を瞬時に読み取る、特殊能力が備わったのじゃなあ?」
「エエエエエエ————ッ!どうして私の事が分かるのですか?」
「わしは神じゃ!なんでも御見通しじゃ」
こうして…小鳥ハッピーを授けて、扉の世界の番人、守り人、守り神として五つの扉の幻想世界を守って欲しいと頼んだ。そして…五個の鍵を渡した。
それから…神様銀次が渡してくれたこの小鳥ハッピーは、普段は真っ白い小鳥なのだが、何か異変を察知すると良い事も悪い事も銀色に点滅して知らせてくれる。
更には…小鳥ハッピーを手の平に乗せてハッピーの頭を撫でて、銀次神様が言っていた呪文「 アブラ オーム シャンティ アブラシャンティ アブラシャンティ」三回唱えると、どんな願いも叶う。
「ほ~れ莉子おぬしの行先は、『ファイブドアーズ星』だ—————ッ!」
グル グル グル グル グル グル グル グル グル グル
「アレ————————————————ッ!」
莉子は五つの扉が有る「ファイブドアーズ星」に異世界転生した。
その深い森の中は、何とも美しい世界だった。
淡いピンクや金色の羽根を付けた美しい妖精たち、赤や青、緑に黄色の色鮮やかな美しい羽根を広げて飛び回る鳥たち、更にはカラフルで色鮮やかな美しい蝶々が、ゆらゆら舞いながら花々に止まっている、それはそれは美しい幻想世界が広がっていた。
緑の森に赤や黄色にピンクの花々がところ狭しと咲き誇り、木々は青々と生い茂り色とりどりの果実を実らせ、木漏れ日がダイヤモンド💎の光りを放ち、辺りは妖精たちが金色の粉をまき散らして、キラキラ✨金色の雨が降り注いでいる煌びやかな世界だった。
こうして…五つの扉「ファイブドアーズ星」の守り神になったのだが……
◆▽◆
だが……莉子は「ギャング王国」の王様ジノに会ってしまってからというもの、すっかりホームシックにかかってしまった。それは…前世の日本の家族で父親に瓜二つだったからだ。
そんな何とも懐かしい香りのするジノ王に会いに来る時は、どういう訳か、完全に自分の任務を忘れたかのような、無防備極まりない状態になってしまうのだった。
異世界転生する時に過去の記憶が全部抹消されたとはいえ、どこか細胞の片隅に残っていたのかも知れない。
細胞の欠片が呼び起こしたのか?遠い故郷に思いを馳せ……感情をコントロ-ル出来なくなってしまい、莉子は無防備極まりない恰好で来てしまっていた。
そこに突け入ったのが誰有ろうジノ王だった。
莉子の紅茶に睡眠薬を入れて眠らせ、カギを複製してスペアキーを作ってしまった。
更にはラバー城の老婆、リンゴ婆さんは何と恐ろしい事に魔法使いだった。
こうして…莉子は恐ろしい魔法を掛けられてしまった。
それでは、何故ルフィ姫になったのか?
それは…昨今テレビを賑わせている強盗団ルフィをパクったものだった。
この王様そういうカネにまつわる、特に強盗団ネタのスキャンダルには目がない。
そう言う安っぽい人間の薄っぺらな記事が、だ~い好き。
常日頃から、窃盗、強盗の話は、絶対見逃さない。
ギラギラ美味しい話が転がっていないか、目を光らせているので……😜
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