第5話⁂どうしてこうなっちゃうの?⁂


 碧は、莉子を助けようとして、一瞬何が起こったか分からないが、とんでもない所に異世界転生してしまった。

 そう思い……思案に暮れたが、幸運な事に憧れの太閤秀吉と言う今尚、燦然と光り輝く安土桃山時代の、ときの「関白」秀吉公の下で働ける事になり、今尚夢ではないかと感激しきり。

 

 それも……何とも幸運な事に……自分の夢でもあった以前から興味のある、医学や科学に直結した仕事でクロ―ン作りと言う、最も興味深い仕事を秀吉から仰せつかって、この上ない幸せを満喫している。


 それなので、寝る間を惜しんでクロ―ン作りに着手している。すると…苦労の甲斐ありやっとの事クロ―ン作りに成功した。


 ◆▽◆

 やがて…三年が過ぎ四年が経った。

(文禄の役)の残党松谷という武将が連れて来た碧によって、クロ―ン作りが秘密裏に行われていた。

 だが……風の便りに、あまり芳しくない噂を耳にしていた秀吉は、病床の身でありながら、こっそり様子を見に行った。


 あれは確か、〈信長🅰、秀吉🅰、家康🅰〉クロ―ン達が、もう直ぐ五歳の誕生日を迎える頃、陰に隠れて物陰からこっそり見ることにした秀吉だった。


 まず最初は信長を観察した。

 偉人見分録にも多く伝えられているように、信長は多動性障害が有ったらしいのだが、一分一秒たりともじっとして居られない。そして…野山を駆けずり回っている相当な大うつけだった。


 だがそれより何より、もう、この頃から偉人伝に記されている大うつけを遥かにしのぐ、負の部分である計り知れない野蛮な言動が、見え隠れしていた。


 それでは……その負の部分とは、一体どのようなものだったのか?


 ◆▽◆

 碧は、仕事の疲れを癒すため唯一の趣味であるペットを飼い大層可愛がっていた。


 寂しがり屋の碧は、こんな山奥なので何の楽しみも無いので、ペットとして犬一匹と猫二匹を飼う事にした。そして…雄の子犬太郎と雌の子猫の花子に桜を飼って大層可愛がっていた。


 そんな…ある日の事、柴犬の太郎が居なくなったので懸命に捜していると、何とも残酷な事に、裏山で首をちょん切られて血まみれになり無残な姿で発見された。更にはその一週間後にも同様の手口で、花子と桜も裏山で首をちょん切られて殺害されてしまった。


 碧はショックの余り仕事が、手に付かなくなってしまい寝込んでしまった。


 そこで犯人探しが始まった。数人の研究員補助と爺やが犯人探しに乗り出した。

 すると…不穏な行動を取る信長🅰を発見。もう直ぐ五歳なのでそろそろ書き取りや算術を、勉強させようと必死になって居るが、裏山に上ってカブトムシやカマキリを捕まえては、足や羽根をむしっては殺している。


 更には蛇の首や胴体をちょん切っては、ビュンビュン飛ばしているではないか?

 それも異様な目付き、まるで生き物を殺すのを楽しんでいる様な、狂った不気味な笑みを浮かべて動物を次から次へと殺していた。


 クロ―ンを生み出した研究長の碧が、どんなおとがめを受けるか分かった上で、こんな事は放って置けないと思った爺やが秀吉に書状を送った。



 ◆▽◆

 伏見城で病に伏せっていた秀吉では有ったが、(こんな書状を貰っては黙ってはおれぬ!)そう思いやって来た。


 早速、信長🅰が出没しそうな裏山の大木の陰に隠れて、物陰からこっそり見ていると信長🅰が現れた。美形だが、あのシュッとした顔立ちに特徴的なワシ鼻でご存じの方も多いのでは?


 秀吉は尊敬する信長公の生まれ変わりに、歓喜の声を上げた。

「オオオ!信長公に生き写しじゃ。あの鼻!」

 

 そして…様子を伺ていると、早速…何かしら……怪しい行動を取っている。


 しばらく裏山を這いずり回っているかと思いきや、多動と言われている信長だが、興味のある事には集中力が半端ない。何やら生き物を見付けたらしいが、よく見ていると地面を這いずり回る蛇だった。


 まだ四歳だと言うのに、その素早さは目を見張るものが有る。一瞬でヘビを捕まえそして…一瞬で首根っこをギュっと捕まえて、更に胴体部分を足で挟んで、何とも残酷な…小型の刃物で首をちょん切っているではないか?


 それでも…毒ヘビもいるのに怖くないのか?それが、どうも…こんな山奥なのでヘビはよく出るので碧や爺やが厳しく教えている。


 青緑色のアオダイショウは毒が無いと言う事を熟知している。そして…首を切っても一時間ぐらいは生きていて、にょろにょろ動くのだ。


 更には、首を刃物でブツンと切ってブルンブルン振り回している。


 そして…ビュ~ンと飛ばして、にょろにょろ動くアオダイショウに興味を示して、不気味な顔でにやりと含み笑いをしている。


 どうも…首を切られ胴体部分だけがにょろにょろ動くのが、面白いらしく見入っている。

 また、今日はどういう訳か、アオダイショウが多くいたらしく、何匹も同様の手口でちょん切って飛ばしてにょろにょろ動く胴体を眺めては、不気味に笑っている。


 するとその時、「関白」秀吉の所に拍子悪く飛んで来て顔に当たった。


 秀吉は大のヘビ嫌い。

「ギャギャ——————ッ!」大ご立腹の秀吉。



 こうして…次の日には、秀吉🅰と家康🅰を観察しようと思った秀吉は、自分の幼少期と瓜二つの秀吉🅰を、まず観察した。

すると…早速、秀吉🅰のゴマすり姿のえげつなさに、何か自分の一番嫌いな部分を見ているようでゾ~ッとした。


「まぁ~?こんな事言っちゃなんだが?ワシも歯の浮いたようなゴマすりを散々やって来たが?しっかりとした目的に裏打ちされたゴマすりだった。だが……秀吉🅰は、自分の私利私欲(ぼた餅やお菓子を貰う)の為だけのゴマすりではないか?あああ……おぞましい!更には寺子屋での成績は目を覆うものが有る。いくら四~五歳と言ってもワシは小さい頃から神童と言われ、例え四歳でも月灯りでボロボロの書物を読んだものだ。何と言う醜態!0点ばかりではないか。こんな子ワシじゃない!こんな子いらな~い!」


 そして…更には、家康🅰を観察した。

「家康🅰は腹黒の肥満児ってだけで、本物の徳川家康のような努力に努力を重ねる努力家とはまるで違う。腹黒の悪い部分だけが似ているだけで、只々食っちゃ寝、食っちゃ寝のおつむ空っぽの肥満児なんか、この戦国の世には要らぬわ————ッ!こんなんじゃ成長した時に即戦力として使えない!」


 こうして…碧は折角……自分の夢でもあった以前から興味のある、医学や科学に直結した仕事でクロ―ン作りと言う、最も興味深い仕事を秀吉から仰せつかって喜んでいたが?


 想像以上の不出来なクロ―ンにブチ切れされて、碧と信長🅰、秀吉🅰、家康🅰は、敢え無く打ち首となってしまった。


 ”バサッ” ⚔”バサッ”⚔ ”バサッ”⚔ ”バサッ”


「アレ~?どして……こんな酷い目に?」アーメン👼


 折角、異世界転生出来たのだったが、堪忍袋の緒が切れた秀吉からブチギレされ、打ち首を言い渡され……とんでもない場所に転生してしまった。


 エエエエエエ————————————ッ!今度はどこに転生しちゃったの?


 秀吉から打ち首を言い渡された碧たちだったが……それから…幾ばくも経たずに豊臣秀吉は胃がんのため、六一歳の生涯を閉じた。

 1598年9月18日, 京都府 京都市 伏見城で死去



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